「ツワモノ達が夢の中」
夢環境管理課
「ツワモノ達が夢の中」
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さて。
その後、日出ずる国の民と面狩が率いた百鬼夜行舞台が演じた死闘はどうなったのでしょうか。
私達、夢環境管理課では只今、現世の動向とともに詳細な聞き取りを行いながら、現場検証を進めております。
現世で危ぶまれた悪夢のパンデミックは、各地で出没した光によって阻止され、何ごともないまま収束。
悪対悪夢ワクチンだけの力とは言いがたい結果です。
関ヶ原の戦いと関連づけて様々な事象を考えたいところではございますが...調査は難航を極めることが予想されており、現在他の部署への応援要請を予後なくされている状態です。
荒れ果て、立ち入り禁止措置を取るほかない状態だった死地が、綺麗サッパリ豊かな自然に囲まれて、物証はゼロ。
物の怪だったと思われる精霊や霊魂の類が、記憶を失い、転生してここに留まっている事が確認されております。
彼ら日出ずる国の民の活躍、そして戦神の真の力については、我々が目に焼き付けた情報のみが頼り...
この戦は、後世に残すべき重要な危機回避ケースを多々含んでいる。また、今回の件を通して関ヶ原には、我々の想定している数を上回る住人が存在している事が判明しております。
つきましては、私共技術第1課、2課の共著で、一連の騒動に関する業務報告書、および実績報告書を作成したく存じます。
いまいちど、関ヶ原の閉鎖は白紙に戻し、精密調査を行った上で措置を考えるべきかと。
ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
技術第2課、係長(新任) おむぎ
技術第1課、技師 米太郎
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私達は、これからこの書面を持って課長との面談に臨む。
課題はたくさんある。
戦神は確かに真の力さえ発揮できれば強大...でも、現状。今の彼らだけでこの関ヶ原を守りぬく事は不可能だろう。百鬼夜行を退けたはいいが、結局面狩を捕まえる事はできなかった。住人たちの事だって、まだまだ把握できちゃいない。
...だけど、ここにはあえて、不利になるような事は書かなかった。
様々な危機を乗り越えて、この乱世を勝ち抜いた君達へのささやかな贈り物のつもり。
君達が望んだ関ヶ原の存続に向けて、私達はこれから手を尽くしていく。
だからもう一度、手を貸して欲しい。
私達が記していく、新たな関ヶ原の歴史。
そう、終わる歴史があれば始まる歴史もある。
そこに刻まれるべき、新たな戦神と、その守護者の名を...
もう一度聞かせて?
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ツワモノ達が夢の中 (完)
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