§幻想舞踏会§ 【IF・Sacrifice】~カリソメの平和~
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§幻想舞踏会§ 【IF・Sacrifice】~カリソメの平和~
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§幻想舞踏会§
【IF・Sacrifice】
(※このストーリーは別分岐のIFストーリー(Normal)です。
第三十八話の最終分岐選択にて
【七色ノ宝石を破壊する】
を選択した場合のストーリーとなります。
制限条件として、
①大陸の侵食は進行中・隊士達は島に閉じ込められている。
②光姫の呪いはかなり進行している。
~カリソメの平和~
広場に全ての国の隊士が集まっていた。
全員が空に鎮座する七色ノ宝石を見据えている。
「全員、構えろ。」
ていなんの低く響く声で全員が魔法を展開、攻撃態勢に入った。
まりーも光の剣を構える。
ちらりと後方を向くと、回復魔法を展開しているみーに支えられながら真っ青な顔でぐったりとしている光姫が目に入る。
(姫様のお身体はもうもたない…。)
「これが正しい選択かは解らないけど…
全員で決めた行動、全力を出すしかない。」
まりーは胸元の抑圧珠を片手で握りしめた。
ていなんの声がこだまする。
「…七色ノ宝石を破壊する!」
五色の魔法が空に放たれた。
~~~
隊士達の魔法が七色ノ宝石へと直撃し、煙が立ち込める。
「やったか…!?」
煙で七色ノ宝石の状態は確認出来ないが、間もなく激しい揺れを広場が襲う。
浮遊維持が不安定になったのか広場が、拠点島が、荒波の上に浮く流木の様に激しく揺れた。
「全員気を付けてください!!!」
ジェイドの叫び声で各々が魔法で地面にしがみつく。
みーは光姫を離すまいと抱き締めていたが、そのせいでバランスを保てない。
「姫様!みーちゃん!!」
まりーが駆け寄りみーと光姫を抱き寄せる。
「まりーちゃん…ありがとう」
「ううん、みーちゃんはこのまま姫様に魔法を展開してて。」
「うん…」
全員が揺れ動く広場にしがみつきながら、空を見上げる。
「…!!…見て…!宝石が…」
レイカの声が漏れ出る。
煙の中から現れた宝石は、全体に亀裂が入り、上部は欠損。
中の鏡が一部剥き出しになっていた。
< 緊急事態 緊 事態
本シスtムに 重dな
欠損 発s
g状では …働不可能
修復nたm
無sノ間へ 次元移dする >
歪んだ文字が空に映し出されたと思うと、
七色ノ宝石は次元転送を開始した。
「みんな!!!」
夜蝶が叫び声を上げる。
「広場が…!足場が消えていく!!」
その声に周囲を見渡すと、島端から中心に向けて広場が徐々に小さくなっていた。
木も、道も空間を切り取られるように無くなって行く。
「不味い…!全員私の周りに来てちょうだい!!」
レイカが隊士達を呼び集める。
そして、ありったけの声量で歌を奏でた。
影が魔法陣となり、ゲートが開かれる。
「次元の狭間に落ちないよう、皆固まってなさいね。」
隊士達はゲートの中に渦巻く『黒』に、飲み込まれていった。
~~~
七色ノ宝石は六つの島を無色ノ間へと異動させると、
誰もいない広場へと、文字を映し出していく。
< 修h 修復
重大な欠s有
加護への魔r供給
中断 t断
自己修h …行 >
しかし、七色ノ宝石の亀裂や欠損は一向に直らない。
< 残存魔r 間もnく消s
シスtm 継続不k能
稼dを 停止sる >
七色ノ宝石が灰色へと変わって行く。
美しく煌めく色が消え失せると、宝石は広場へと落下した。
六つの島と宝石はその後、世に現れる事は二度となかった。
~~~
地面の感覚を感じてボブはゆっくりと目を開く。
辺りを見渡すと、木々が生い茂り地面に生える草達が人の手が加えられていない事を示していた。
そのまま後ろも確かめると、大きな巨山が全ての大陸を見下ろすようにそびえ立っている。
周囲では他の隊士が次々と起き上がっていた。
「…大陸に戻って来たのか…?」
「…そうよ。」
レイカの声が弱弱しく届く。
「流石に位置指定までは魔力が回せなかったから、あの距離から一番近い場所…
直下へ転送させてもらったけど…
…ここはどうやら巨山の立ち入り禁止区域の中のようね…」
黒蝶やkaNkanに支えられながらレイカも立ち上がる。
空を見上げるが、先ほどまで自分達がいた筈の島々が跡形もなく消えていた。
「…姫様…!」
みーの声が耳に入りボブが振り向くと、光姫が身体を必死に起こそうとしていた。
まりーが駆け寄り制止させようとする。
「姫様、御無理はいけません!」
「…まりーさん、邪魔しないで…私は行かなければいけないの…」
「そんな状態で一体どこへ…!」
ボブと光姫の目が合う。
躊躇いがちに光姫は目を一度は伏せるが、小さく微笑むと再びボブを見つめた。
「ボブさん…私の記憶を読んだ貴方なら…
…あの場所の位置、解りますよね?」
「………はい。」
「…連れてってください。」
「し…しかし…!」
光姫は乱れる息を整えながら、悪戯な笑顔を作る。
「貴方…私に貸しがひとつありますよね?
なんでも言う事聞くって。」
「………!」
「さあ…連れてってちょうだい。」
ボブは下唇を強く噛み締めると、黙って歩み寄り自重すら支えられないほど衰弱した光姫を優しく横抱きにした。
「姫様…」
まりーが震える声で問いかける。
「まりーさん…手を。」
「…?」
光姫から抑圧珠と青い薔薇のコサージュが渡される。
「…よく聞きなさい。
私からの最後の命令です。」
「…さい…ご……?」
「お父様の側室に娘が1人います。
まだ5歳に満たない幼い子です。
彼女が成長したら、光姫を継承させなさい。
その子へ、その抑圧珠と薔薇を渡せば私の記憶が必要な部分のみ共有されます…。
いいですね…
必ず後世に光姫を…いえ、隷属魔法を受け継がせて…。」
「それって…待って…姫様は…?」
「………まりーさん、
その子の事を守ってあげてね。」
ボブが光姫を抱いたまま歩き出す。
「嫌!待って!!」
「まりーちゃん!!!」
追いすがろうとするまりーを、ていなんが背後から羽交い絞めにする。
「てぃー様!離して!姫様!!」
「…!!ごめん、ごめんまりーちゃん…!!
ごめん光姫…!!!」
そう、誰も光姫を引き留める事など出来なかった。
『それ』以外にもう選択肢は無い。
全員が、悲痛な面持ちでボブと光姫を見送った。
~~~
巨山の中腹へ続く小道を進むと、白樺の木材で造られた美しい祭壇が姿を現した。
それはボブが光姫の記憶で見た祭壇と全く同じ物である。
「…姫様、着きましたよ。」
「中に…入ってください。」
祭壇の中は、不思議な魔力に包まれおり、肌で特別な空間だと感じる事が出来る。
白ノ国の装飾が施されたその空間の中央に光姫を抱きながら座る。
「最後に…嫌な役をさせてしまいましたね…。」
「………いいえ、貸しですから。」
「ふふっ、そうでした。」
「………。」
光姫の身体が淡く光り出す。
「ボブさん…。」
「…はい。」
「立派な…王に、なるんですよ。」
「…俺には無理です…。」
「もう…安心して眠れないじゃないですか。」
困ったように微笑む光姫の顔が、ボブの心に重く刺さる。
「大丈夫…きっと…なれる。」
光姫の身体を包む光が一層強くなる。
――絶対隷属魔法 発動――
(代償は…初代と同じ、この身体と命全てで…
私が…大陸の平和を繋ぐ…)
ゆっくりと目を閉じると、ボブの胸元へ顔をうずめる。
心臓の鼓動が、心地よく聞こえてきた。
「ねえ…?」
「…はい。」
「私、もし生まれ変われるのなら…
青ノ国で、普通の子に生まれたいです。
普通に勉強して…
普通に遊んで…
…そうね、
貴方が先輩だったら…面白いかも。」
「…姫様みたいな後輩を持ったら、毎日が大変です…」
「でも…きっと楽しい毎日だわ…」
「…俺もそう思います。」
「ボブさん…。」
「はい。」
「………
さようなら 」
「…!?」
光姫の身体が無数の光の球となり弾ける。
祭壇を飛び回りやがて一つの群れとなると、巨山の中へと溶けて行った。
ボブの手に残る温もりもすぐに冷めてしまう。
静まり返った祭壇でボブは静かに涙を流した。
~~~
大陸に突如現れた天空の島々は一時の幻想だったかのように、五つの国では夢物語のように語り継がれた。
五つの国は、その後もそれぞれが国として、互いに手を取り合い栄えて行ったが、国が統一されることは無かった。
白ノ国では光姫の名はその後も受け継がれ続けた。
また遠い未来で封印が綻ぶ時が来ればその身を花嫁として捧げるだろう。
しかしそれを他の国は知らない。
秘匿された光姫の真名は、呪いと共に未来へと受け継がれてゆく。
― NORMAL END ―
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