§幻想舞踏会§ 第三十一話~命令と侵食・後編~
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§幻想舞踏会§ 第三十一話~命令と侵食・後編~
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第三十一話~命令と浸食・後編~
…どの位そうしていたであろうか、顔を赤らめながらジェイドが咳払いをひとつする。
「ちょっとボブ君。今は大陸の状況の解決が先なんだから愛の告白はそれくらいにしてくれる?」
「ん?ああそうだな。
…って愛の告白?なんのことだ?」
ボブは訝しげに首を傾げる。
「は?いや君、さっき姫様に告白してたじゃん。」
「お前は何を言ってるんだ。姫様を人として敬愛し、皆からも愛される方だと言っただけじゃないか。」
「「「「………はぁ?」」」」
ジェイドだけでなく周囲から声が上がる。
(……この天然無自覚馬鹿野郎…!)
光姫は拳を振り上げた。
躊躇いなく放たれたそれはボブの顎へと見事に入る。
「グハッ!!何をするんですか!というか今は安静にしててください!?」
「先輩が悪いと思います。」
「おいハンペン。いきなり眠井の真似するなお前。」
レイカはやれやれと言わんばかりに溜息をつき、状況を整理する。
(呪いの進行は未知数だけど、万が一戦闘となった時に姫様の力は必要不可欠。
もう一度抑圧珠を解放させるのはリスクが高すぎる…。
そもそもどうしてこのタイミングで大陸の浸食が始まったのかしら。
私もそこそこ力はあるはずなのだけど…私の魔法も歯がたたない…。
せめて新月の夜だったら…)
レイカは夜空に浮かぶ満月を恨めしそうに見つめた。
「…満月?」
レイカは光姫との会話を思い出す。
―…【悪ノ王】の眠りを妨げぬよう、
私達[光の力]を有する民が
夜に最も力を発揮できると言われている
満月の日に
かの山へ秘密裏に建てられている祭壇にて
安らかに眠って頂けるよう、
【悪ノ王】へと子守唄を捧げる。
それが私…いえ、私達
【満月姫(ミツヒメ)】の宿命です。…―
「…姫様!今夜は満月よ!」
レイカが声を上げる。
「そうか…光姫。子守唄は?歌いに行けば…!
…でもどうやって大陸に行けば…!」
レイカの声にていなんも食いつくが、下へと行く方法が無い。
光姫もこの日が満月なのは知っていた。
皆が寝静まった後に、1人静かに大陸へと降り、祭壇へ行こうとしていたのである。
「…こうなった以上仕方ありません。
ここから子守唄を歌ってみる他ないでしょう。」
「姫様、今魔力を使われるのは…!」
ボブが制止しようとするが、光姫はボブの口を静かにふさぐ。
「過剰な解放ではないので問題ありません。まりーさん達に余計な心配をかけたくありません。黙りなさい。」
光姫は静かに歌を奏でだした。
―…さあ届きたまえ
闇夜を照らす月の光よ
眠りを包め
歌の揺り籠よ
響き渡れ音色という封印
すべての起源の王へ
届けこの時代(とき)を生きる
花嫁の手向け
< …ミツケタ… >
七色ノ宝石が突然激しく光り出した。
空へと映し出されていた文字が書き換えられていく。
< 警告 警告
島内に魔石反応有り
島内に魔石反応有り >
映し出されるや否や、七色ノ宝石の真下で空間が歪む。
そしていつか見た禍々しい気配のソレは、再び広場へと現れた。
以前よりも小さい魔石は、既に粒子化しており歪に形成を保っている。
そして触手の様に様々な面から突起が現れ、まるで何かを求めるようにうごめく手の形へと先端が変形した。
不気味に蠢くそれらは、ピタリと止まったかと思った次の瞬間、
一斉に光姫に向かって襲い掛かってきた。
「姫様!!危ない!!!」
ボブはそのまま抱き上げ後ろに跳びのく。
何本かは地面へと突き刺さり、後から来た手はボブの退いた方へと進行方向を変えてさらに追いかけてくる。
(姫様だけを狙ってる!?)
光姫は七色ノ宝石を驚いたように見つめ続けていた。
ボブはそのまま走り続けるが無数の手はなおも追尾し続ける。
するとボブが走り去った後の地面が突如隆起し、巨大なゴーレムが現れた。
魔石の手は突如現れた障害物にそのまま衝突し砕けるが、ゴーレム自体には傷一つない。
「今のうちに詠唱でもなんでもやっちゃってください!」
ハンペンの声が広場に響く。
「ハンペン珍しくナイスだ!」
「先輩は一言余計っす!!」
ボブが走りながら声を張る。
「皆さん!俺が姫様を守りますので迎撃はお願いします!」
ゴーレムの脇からすり抜けてきた手が、ボブの背後に迫る。
しかし、ボブを捕えることなく手は細切れになった。
「ボブ君。勘違いしないでしょ。
キミじゃなくて姫様を守るんだからね。
こんな手、どれだけ出てこようが、僕が刻んであげる。」
ジェイドが両手剣を目にも止まらぬスピードで躍らせていた。
進行の邪魔を排除しようとジェイドの背後からも手は襲い掛かる。
「させないよっと!」
暁月が片手剣でテニスボールを打ち返すかのように弾き飛ばした。
殴られた手は燃え上がり黒くなる。
「レインちゃんとジェイドさんの背中は僕が守るんだ☆」
「これも訓練だよ。気は抜かないでね。」
その横を黄色い閃光のように駆け抜ける夜蝶は不思議な顔をしていた。
「何この手。姫様やボブの攻撃より遅いぞ??」
そのまま顔色ひとつ変えずに、ボブを追尾する手へと追いつくと手を鷲掴みにして地面へと叩きつけた。
雷の感電により痙攣する手をさらに踏みつぶす。
地面にめり込んだ足跡のみが残った。
「くっ…なんなのよ、こんな満月のの調子が出ない日に限って…!
今日はあまり大きな子の力は借りれなさそうね…
…闇を統べるその眷属、小さき僕たち…。
光の姫に害なすものを、退けてちょうだい。」
レイカが歌を奏でると、小さな魔方陣が二つ影より現れる。
ピエロの様ない出立ちの影人形が2体現れた。
2体は1本の糸の端を互いに持ち、そのまま広場を飛び回る。
すると、みるみる魔石の大元たる塊が黒い糸によって縛り上げられていった。
手を新たに生み出そうにも糸がそれを妨害し、文字通り手数が激減した。
ボブが広場の端へと駆ける。
すると回り込んできた手に挟み撃ちされようとしていた。
とっさに歌を奏でる。
木の盾が現れ、手を正面から受け流す。
しかし勢いまでは相殺できない。
背後からせまる手が速度の落ちたボブへと襲い掛かった。
「姫様!ボブ!!」
まりーが無数のクナイを投げ、手はそばに生える木に打ち付けられる。
未だ襲い掛かろうともがく手たちに、冷たい空気が流れた。
「光姫様をお守りするうために!!
―氷結魔法― ざらめゆきー!!!」
夢羽の歌声と共に、手が次々と氷ついていく。
凍りついた手をまりーは次々と砕いて行った。
「ていなん様!!」
ジェイドが大声をあげる。
ていなんは両手に魔力を集中させていた。
「ジェイド大丈夫、時間稼いでくれてありがと。」
双剣を握りしめ、ていなんは駆けだす。
そのまま跳躍し、魔石の中心に向かって刃を喰い込ませた。
「業火爆炎刃!!!」
魔石はレイカの糸毎大きく燃え上がり、黒い炭となると真下に位置する噴水へと大きな音を立てて落ちて行った。
「…終わった…?」
全員がボブの方を見る。
ボブはしっかりと光姫を守り切っていた。
しかし光姫の様子がおかしい。
じっと七色ノ宝石を見つめ続けていた。
「…どうして…」
「?…姫様いかがなさいました?」
「…今、魔石が…。魔石の気配が、宝石の中から出てきた…。」
「…え?」
全員が耳を疑う。
七色ノ宝石は静かに光を揺らすと文字を映し出した。
< 魔石反応消失
ただし
国への帰還は
変わらず禁止である
繰り返す
これは命令である
各部隊
試合に備えよ
各部隊
試合に備えよ >
文字を全員が悔しそうに睨み付ける。
光姫は何かに気が付くと声を荒げた。
「ボブさん!もう降ろさなくていいから!
私を島の端へ連れて行って!」
「…かしこまりました。」
島の端へと行くと、やはり見えない壁によって島は包まれていた。
光姫はそんな壁に手を当てて下へと必死に意識を集中させる。
「…やっぱり……。
侵食が…止まった……?」
「な!下界の侵食が止まったんですか!?」
「…間違いない。止まってる…。
今なら…今なら!
私が全員を助けられるのに…!
…もしあの鏡が本当に… …ならば…
宝石は知っているはずなのに…!
どうして今私を国へ帰さないの…!?」
握りしめる拳が白くにじむ。
ボブは光姫の言葉に疑問を持ちつつも、その悲痛な言葉と悔しそうな表情に、ただ黙っていることしかできなかった。
…つづく。
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コメント
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- そうま🍭悩むけど、僕は4でお願いしますm(_ _)m
- 🌹ボブ③でお願いします┏○ペコ
- 夜蝶3でお願いしますm(*_ _)m
- ʚふあのんɞ3でお願いします!
- Syaは3歳児(熊)のツンデレハンター4でお願いします!もうすぐ生き返る(予定)です!
- ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ3でお願いします(*´-`)
- おみぃ🦄思想犯3でお願いします(((:з)⌒(ε:))) コロコロ
- 🌹紅茶ミルク番長③でお願いします( *・ω・)ノ 死にたくないです!(真顔)
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- Reika3でお願いします。
- 🐯🐅れいん☔️🍀/多忙/体調不良3でお願いします
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- まりー🐬🌸3で。 あぁ、一番のり目指してたのに!←