【声劇台本】傘の花を
めくる
【声劇台本】傘の花を
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雨のお話。
春は別れの季節。そのわりに出会いは少ないような気がします。
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今日は雨が降るらしい。
僕は二人分の傘を持ち、君の後を追う。
君は、見知らぬ花を見つけて笑っている。
傘を指そう、夕立が降る前に。
全て濡れきってしまうから。
君は足元に咲いた赤い花を手折る。
手元に置いて愛でる為だと言って。
僕はその無邪気な残酷さが、愛しくて仕方がない。
僕らの別れはもう少し。
君はそんなこと知らずに囀ずる。
傘を指そう。快晴はまた今度。
雨が僕らを映してくれるから。
僕は青い花を見る。
いつかの救済を夢見て。
こんな不甲斐なく罪深い僕たちを、
助けて、許して。
虹もかからぬこの未来に、どうか七色の花束を。
桜が雨に落ちる。
風が水面を揺らす。
あぁ、春だ。
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