空の友情 オリジナル音楽短編小説
文章 音楽 Guardian&N Japan
空の友情 オリジナル音楽短編小説
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空の友情
イギリス空軍 スピットファイヤー。俺たちが乗っていた戦闘機。
大戦中、地中海沖での凄まじいドックファイトの最中、子供の頃から、ライバルでもあり親友だったマークは、敵機に囲まれた俺をかばって、ドイツ軍のメッサーシュミットに撃墜された。
俺は、何とか前線を離脱して無事基地にたどり着いた。
墜落する様子を空戦では、何度も遭遇する。
マークの機が墜落する光景だけは、忘れられなかった。
終戦後、数年ぶりに、マークが墜落した小さな島を訪れた。格納庫にあった、最後のスピットファイヤーに乗って。
なんとか島に着陸出来そうな場所を見つけた。
きっとこの場所だ。
辺りを見回すと、飛行機の破片が落ちていた。
たぶん、尾翼の一部だろう。マークが描いた幸運の猫が半分だけ消えずに残っていた。
マークの姿はなかった。
「いつものウイスキー、ここに置いておく。俺のおごりだ、遠慮なく飲んでくれ…。
なぁ、マーク…、俺をかばうなって言っただろ。
お前はな、人が良すぎるんだよ。馬鹿やろう…」
ボトルを破片と共に捧げた。
「街は静かなもんさ。あの大戦が嘘みたいだ。
お前がいないとケンカ相手がいなくてつまんねぇ。じゃ、またな」
「バカは、お前だ。もう来るな。俺は、燃料タンクをやられてた。お前をかばうわけないだろ。
気にするなよ、トム」
ふと、マークの声が聞こえた。
「おい!マーク!生きてたのか!マーク!どこだ!」
林の奥に人影が見える。
「マーク!お前…、そんな…」
こちらに近づいて来る。マークだった。
だが、光と共に消えかかっていた。
「来ると思ってたぜ、バカヤロウ。お人好しは俺じゃない。お前の方だ、トム。また会えて嬉しいよ。ケイトによろしくな。お前が幸せにしてあげてくれ。お前なら、安心できる。来てくれてありがとう」
二人で奪い合った女、ケイト。馴染みの店のウェイトレス。ケイトは、マークに惚れていた。でも、俺たちに気を使って、何も言わなかった。
「2人共生きて帰ったら、その時決めるわ。必ず生きて帰るって約束よ」
そう言って見送ってくれた。
「久しぶりだな、マーク。ケイトは、お前に惚れていたんだ。責任とれよ。俺は…マーク、おい!消えるな!礼を言うのは、俺の方なんだ。あの時、助けてくれてありがとう。お前のおかげで、今、幸せだ。来月、ケイトと結婚する。お前に、知らせたかった。ずっと罪悪感があった。許してくれて、ありがとう…マーク…、消えないでくれ、頼む…」
涙で滲む、マークの姿が、光と共に消えていった。
次の瞬間、スピットファイヤーの音が空から聞こえた。
あいつの飛び方だ。宙返りをして雲の中に消えた。
「またいつか、一緒に飛ぼうな」
幼き日の光景が目に浮かんだ。
文章 音楽 Guardian
この物語はフィクションです。イギリスのスピットファイヤー、ドイツのメッサーシュミットは、実在した戦闘機です。
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空の友情 オリジナル音楽短編小説
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