暮れし日と伏せるモノ

小娘｢コラボ者様｣ 伏目『コラボ者様｣ 』BGM【四ノ宮りゐ様】

幼い頃、私には見えてはいけないものが見えた それらは部屋の隅や影の中 決まって光から逃れるように蠢いていた 周りには見えないそれ 受け入れられず気味悪がられた私はいつも1人だった ​───────​───────​───────​── 四ノ宮りゐ様の素敵な曲をお借り致しました ​───────​───────​───────​── モノローグ、｢｣：小娘 『』：伏目 夕暮れ刻 影が背を伸ばし、陽陰（ひかげ）の境が崩れていく 人の消えた公園でただぼんやりと日が溶け墜ちるのを眺めるのが好きだった 『なんじゃあ、一人か小娘』 甘い香りがした 嗅ぐだけで脳を蕩かすような甘い香り ｢だれ…？｣ 木立の影に、いつの間にか煙管を咥えた男が立っていた 『しがない薬師じゃ それよりも小娘、友達はどうしたんかいの まさか1人ではあるまいて』 彼の足元は泡立つように蠢いていた ｢あなた話せるの？ 初めて見たそんな“モノ”｣ 男はカラカラと笑った 『なんじゃ夕闇ん仔かい 久しぶりにおうたわ』 ｢夕闇の仔？｣ 『人よりもこちらに近しいもの バケモンに好かれた目ざとい子じゃ 人の世に受け入れられぬ哀れな仔』 吐き出した煙で顔は見えなかったが男の声は温かかった 『どうせ暇じゃろう 暮れきるまで付きおうちょくれ』 これが薬師を自称する“モノ” 伏目との出会いだった ​───────​───────​───────​── あとがき 夕暮れ時、昼と夜が交わって曖昧で不安定な時間 黄昏時とも言うそれは誰彼刻と書くこともあるそうです 誰そ、彼の刻…一瞥しただけではそれが人かどうかは分かりません 【漢字】 蕩（とろ）かす 木立（こだち） 煙管（きせる） 薬師（くすし） 蠢（うごめ）く 仔（こ） 伏目（ふしめ） #四ノ宮りゐオリジナル #二人声劇 #声劇 #台本 #モノローグ声劇 #掛け合い