冬の夜空が綺麗だった。
オヤスミセカイ
冬の夜空が綺麗だった。
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#オヤスミセカイの物語
「…大佐?」
「お前はまだ若い。いつかこの戦いも終わりが来る時がくる。その頃にはお前も誰かを想い、誰かを愛したり、何かを大切に思ったり、そんな生活ができるようになるんだ。いや、そうする義務がお前にはある、オリオン。俺はお前が好きだ、お前が大切だ。お前は綺麗だ。」
「…?」
オリオンは彼に抱きしめられた時、冬の寒空の下、暖かさを感じた。彼の声が暖かく、優しいものだと感じた。彼の瞳が赤く輝いているのに気が付いた。ぎゅぅっと胸が痛くなるのを感じた。
ベテルギウスは彼女を抱きしめた時、彼女があまりにも細く華奢なことに驚いた。少し触れた頬が冷たいのを感じた。口に出した言葉を思い返して、やってしまったと後悔をした。あくまで自分の部下である彼女に対して、こんな気持ちを抱くなんて思ってもいなかった。だがこの気持ちに嘘はないのだと、この気持ちがいつか、何も知らない彼女に伝わることを願って、ただただ抱きしめたのだ。
それから彼女も夜空を見上げるようになった。
何度も何度も戦いを繰り返し、何度も何度も夜空を見上げた。冬が激しさをましたある日の戦いで、軍隊は滅亡寸前まで陥ってしまっていた。この戦いが最後であって欲しい。春になればもう戦いのない世界が待っている。そう願い戦っていたのだ。降り積もった雪に、多くの赤い模様が描かれていく。それはあまりにも儚く、また美しくもあった。どこかの芸術家の作品を見ているかのように、真っ白いキャンパスがただ、ただ真っ赤に染まって行くのだ。
「…った、たい、さ…?」
オリオンはそんな雪の絨毯を彷徨っていた。左腕から大量の血を流し、足を引きずりながら。視界は悪く戦いの炎や煙のせいで声も出ない。彼女は仲間を探した。誰でもいい、生きていないか、探したのだ。噴水のある広場に出た。降っていた雪が止んだ。広場の真ん中に見覚えのある姿が倒れていた。ベテルギウスだ。彼女は彼の名前を呼びながら重たい体を意地でも動かし近付く。
「ベテル…ス、ベテ…ル、ギ…っ、ベ、ベテルギウスっ大佐!」
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