【小説】ChronuKrisークロノクリスー 後日談第7話 縁(えにし)の種を
T-M.ホマレ
【小説】ChronuKrisークロノクリスー 後日談第7話 縁(えにし)の種を
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第1話→https://nana-music.com/sounds/0211faa7/
後日談第6話→https://nana-music.com/sounds/02974915/
ChronuKrisークロノクリスー
後日談第7話 縁(えにし)の種を
敵に囲まれ、味方の援護はなし。その状態で、金髪の少女は微笑みながら呟いた。
「告げる」
宙にある舞台の端、追い詰められたクリスティアから、青白い光が弱々しくも発せられる。
「悪あがきをするおつもりですか。魔力も尽きかけた貴女(あなた)お一人で、ここまで追い詰められていながら」
「シーデロか。その隠匿(いんとく)の反射壁、本当のそなたは何処にいるのか分からぬが」
「いや、あそこまで派手な魔力行使をすれば流石に秘匿性(ひとくせい)は消し飛びますよ。ーーーですが、今の貴女に出来ることは既にもうありません。例の"加護"も、今の貴女では使った途端に消える程度のものでしょう。……お覚悟を」
剣を抜き、カストロはコノーニの横に並んでクリスティアを追い詰める。クロノスはアウレリアに縛られ、イーはアグニとヴェロスの二人を相手取っている。ヴェロスの方は大技を使ったあとでガス欠とはいえ、援護の余力はないだろう。
「そうだな。確かに余はここで終わりなのだろう。だがーーー"放出"の魔石よ! 余に力を!!」
クリスティアが残りわずかな魔力を魔石に込めると、彼女の身体に残った"聖域"の力が膨れ上がり、弱々しかった青白い光が少し、ハッキリとしたものになる。
「な、まだ余力がーーー! ……コノーニ!!」
「よしキタ。カンネンして落ちろ。元ヘイカー!!」
杖にしていた大剣を担ぎなおし、クリスティアに飛びかかるコノーニ。その、間に。
「ーーー告げる! 主(あるじ)なき神の聖域よ! その力、我が最愛の勇士に与えたまえ! 万事不侵たる聖域の加護(セイキ・プロスタシア・サンクトム)!!」
青白い光が空へと登っていく。次の瞬間、コノーニの斬撃がクリスティアを襲う。
「クリスちゃん……!!」
ヴェロスとアグニの攻撃をかわしながら、イーがなけなしの防御魔法をクリスティアにかける。
「ムム、ナント!?」
「フ、ガス欠なのはそなたも同じだな、コノーニよ。余とて、ただで敗れたりなどはせん……!」
その一瞬の攻防の間、空へと放たれていた青白い光は、クロノスへと届き、その全身を覆っていた。
「この光は……! クリス……!!」
「ーーー無駄なことを。この鎖の戒(いまし)めは魔力を断つもの。この"加護"の光とて、もって数瞬」
「ならーーー」
「! 剣を……!?」
アウレリアの前に、クロノスの剣が投擲(とうてき)される。アウレリアは一瞬怯(ひる)むも、冷静にそれを槍で打ち払い、クロノスの急所を目掛けて必殺の刺突を繰り出す。
その、槍に貫かれながら。
「ーーーその数瞬、無駄にする訳にはいかねぇだろうがよ!!」
クリスティアの"加護"を受け、全開の魔力を込めた拳を、クロノスはアウレリアの腹へと叩き込んでいた。
「か、はっーーー」
アウレリアの黒い鎧(よろい)が軋(きし)み、アウレリアはその衝撃に身体を折り、膝をつく。その隙を突いて、クロノスは"加護"の魔力が残った己の剣を拾い上げた。
「クリスーーーーーー!!!」
その勢いのまま、クロノスはその瞬間に込められる最大出力の魔力を剣に込め、振り抜くとともに放出する。"技装(かみのちから)"もかくや、という威力の、暴力的な魔力の塊が、コノーニの方へと向かっていく。
「ああ、ですが。その力(さけび)は届かない」
"写鏡鉄城(カスレフティス・フロウリオ)"を展開しているカストロが、クロノスの魔力放出への対処に動く。"写鏡鉄城(カスレフティス・フロウリオ)"は反射の防壁、いかに"加護"の力が乗った魔力といえど、相殺する位ならわけはない。
「はぁぁぁあ!!」
イーが魔弾を乱れ撃つ。しかしそのことごとくはカストロに反射され、ヴェロスに貫かれ、アグニに撃ち落とされる。
「イーちゃん。いえ、イー・スィクリターリ元司令。残念ですが、あなたもここまでです。主従仲良く、落ちてください」
アグニの前に、大きな魔法陣が展開され、その中央に赤黒く燃え盛る炎が顕現(けんげん)する。
「炎陣・破燃弾(フォティア・エンデマ)!!」
炎弾が放たれ、イーのもとへ着弾すると、炎弾は大きく爆発した。イーは魔力障壁を張って何とか耐えるが、爆炎はその壁をも燃やし始める。
「魔力をも、魔法をも"燃やし尽くす"炎の魔法。相変わらず恐ろしいですね。……ですが」
イーの手元に、小さな魔力が渦を巻く。イーの腕では、ブレスレット型の青い魔石が、強い光を放っている。
「私はそれを、待っていました」
言葉とともに、青い魔弾が放たれる。先のアグニの炎弾と比べてあまりにも小さなそれは、カストロの"写鏡鉄城(カスレフティス・フロウリオ)"とぶつかり、
「な、にーーー?」
その壁を貫き、燃やし、崩壊させた。
ーーー反射の魔石。本来は敵の攻撃を魔力壁で受けた際、その攻撃の一部をそのまま跳ね返すものだが。
「クリスちゃんと2人で受けた"貫通"の魔力、そして先ほどの魔力を燃やす炎弾の魔力……壁を壊すことに長けた2つの魔力を合わせれば、流石に十分だったようですね」
イーはその2種類の魔法を受けた時に発生した"反射"の魔力を、解放せずに魔石内にとどめることで、切り札となる攻撃を用意していたのである。
障害がなくなり、クロノスの魔力が直接コノーニへ向かう。
「2回目になるが、ナントーーー!?」
「言ってる場合ですか、いいからそのまま押し切ってください、第二副団長!」
叫ぶコノーニの後ろに、矢を乱射しながらヴェロスが割って入る。ヴェロスの放つ"貫通"の矢は、クロノスの魔力の塊を多少削り取るが、その勢いを殺すには至らない。
「ヴェロスーーーよしキタ! そして貰ったのだナ!!」
ヴェロスの意思を汲(く)み取ったコノーニは、目の前のクリスティアに向き直る。すでに数合の斬撃を受けて、疲弊(ひへい)しきったクリスティアへ向けて、コノーニは今度こそトドメと大剣を振りかぶる。
「はは、万事休す、というやつか。この盤面、思ったよりは粘ったものだと思うが、あと一手、足りなかったようだ」
笑いながら、クリスティアはそれでも迎撃のために尽きかけた魔力を練り、剣を構える。イーから貰った防御魔法の効力も、コノーニの攻撃を受けるうちにほとんど切れてしまっていた。
「ウハハハ、貰っタァーーー!!」
「はぁぁぁあ!!」
「クリスちゃんーーー!」
「クリスーーー!!」
「うおおおお!!!」
コノーニの大剣が、クリスティアの剣が、クロノスの魔力が、そして"貫通"の矢の弾幕を展開するヴェロスが交錯(こうさ)する。
「くぅっ」
「がはっ……!」
ーーー結果。
最終的にクロノスの魔力を自身の身体で受け止める形となったヴェロスと、コノーニの一撃を遂に受け切れなかったクリスティアの2名が、舞台から弾き出された。
ヴェロスとクリスティアは、ほぼ同時に舞台から落下する。イーが、対峙していたアグニに背を向け落ち行くクリスティアに防御膜を張る魔法の魔力を送る。
「クロノスーーー!」
落ちながら、クリスティアが叫んだ。
「わたしが言うことはひとつだ! そなたは勝てる! 何も気にせず、存分に暴れるが良い!!」
そこに、イーからの防御膜が届いた。そのままクリスティアは落ちていく。その表情に悔いはない。今の自分はクロノスに寄り添う者、クロノスの戦果があればそれで良い。最後まで共に戦えないのは残念だが、戦場で足を引っ張るくらいならば、この辺りで退場しておくのも悪くはなかった。
ーーーやがてクリスティアの身体は地面に衝突する。防御膜のお陰で負傷は最低限に、しかしその衝撃は殺しきれずに意識を手放すのであった。
『ここに来て混戦となっていたグループからクリスティア選手とヴェロス選手が脱落! その間際、ほんの数秒ですが凄まじい攻防が見られました! さて、これで残すところ11名、あと3名の脱落で決着ですがーーー』
アナンシアの実況が入る中、落下するクリスティアを見送ったイーは、アグニに背を向けたままゆっくりと立ち上がり、問いを投げる。
「……アグニ。今の私の隙なら容易く撃ち落とせたはずですが、なぜ見逃したのです」
「イー元司令。確かにあなたの守りは邪魔でしたが、我々にとってこの場での本丸はあくまでクリスティア元陛下です。残り人数も減ってきました。可能ならばクロノス殿も落としたい我々にとって、ガス欠のあなたを落とす価値は薄い」
「ーーーーーー」
黙り込むイーに、アグニは表情を緩め、少し砕けた、しかし真剣さのある声で話を続ける。
「……なんてね。建前上はそうですけど、私には私の理由があります。イーちゃん。幼少より、私はあなたの背中を見て、常に追いかけて生きてました。そんなあなたが帝国から居なくなり、私が上に立つ身になり……。今だからこそ、私はあなたの背中を超えたい。後ろから狙い撃つのではなく、正々堂々、戦って! ……だからそれは、今じゃないんです。今では、意味がないんです」
本当の、答えを聴いた。その言葉を噛み締めたイーは、やはりゆっくりとアグニに向き合い直し、その視線を正面から受け止めた。
「アグニ。あなたの想いは分かりました。ならば私は、それがあなたの信念と重んじ、全霊で生き残りを誓いましょう」
残る魔力はほとんどない。"反射の魔石"は、先ほどの無理な魔力行使で砕けていた。攻撃を受け続け、体力も正直辛くなってきている。それでもイーは、強い表情で、力のある声で、その約束を口にした。
一方、鎖で繋がれたクロノスとアウレリア。
アウレリアは鎖槍の槍を杖に立ち上がり、クロノスがクリスティアへの援護攻撃を放っている間に黒の長槍"魔槍・ヒューエトス"を回収していた。
「クリス……」
「守れなかったことを後悔している。そんなところですか」
アウレリアの問いに、クロノスはいや、と首を振る。
「あいつはオレに勝てと言った。"何も気にせずに、ただ全力で戦え"と、そう言ったんだ。だったら後悔してるヒマはねぇさ」
「そうですか。では改めて」
サッ、と切り替えて2本の槍を構えるアウレリアに、クロノスは剣を構えつつ呆れ顔になる。
「急ごしらえの奇襲とはいえ仮にも全力の一撃を喰らってそれかよ。相変わらずタフなヤツだな」
「それを言うなら、アナタこそ。先の一刺しは確実にアナタの急所を貫いたはずだ。だと言うのに、なぜアナタは無傷で、ピンピンしているのです」
「あ〜……、それな」
指摘されて、クロノスは少しバツが悪くなる。先ほどはクリスティアを助けようと必死で、つい使ってしまっていた。すでに砕けたそれを、クロノスは懐から出してアウレリアに見せる。
「"結界の魔石"。一度だけならどんな致命傷も肩代わりしてくれる代物だ。……こいつはちょっとフェアじゃなかったかも知れねぇが、まぁ、1回きりだから勘弁してくれ」
「別に責めるつもりなどありません。戦場にルールなど無用です。……ですが、少しスッキリはしました。返答に感謝します」
では今度こそ競いましょう。とアウレリアが槍を持ち直した所に、今度は2人の騎士が現れた。
「お疲れ様です、カニス殿。これより先は、我々も参戦させて貰います。貴女が純粋な勝負を楽しみたいというのは承知していますが、これも任務。ーーーいいですね?」
カストロの言葉に、アウレリアはやれやれ、とため息をつく。やはり自分にはこういう所での運が無いのだ、と運命を呪いながら、応諾(おうだく)の返答をする。
「承知しました。敵は強敵。全力をもって、我が槍の力をお貸ししましょう」
「ええ。期待していますとも」
カストロと言葉を交わし、視線を交わしたアウレリアは、一時的に味方となった2人ーーーカストロとアグニを確認すると、クロノスに視線を戻した。
「"軍神"アーレス。見ての通りの状況です。私も手加減は出来ませんから、全力で生き残るように」
「無茶なオーダーだなオイ! ……それにしても、カストロ。オレを潰しに来るならてっきり全員で来ると思ったんだが、コノーニはどうした。ガス欠か?」
「ええ、確かに貴方を仕留めるのに彼女の攻撃力は有効です。が、貴方にはまだ、お仲間が残っている。あちらもガス欠のようですが、想定外の横槍を入れられても困りますので、張り付かせています」
ガス欠はガス欠同士、戦力の配分としては妥当な所でしょう。そう語ったカストロは右手を掲(かか)げると、魔力を展開し、再び壁を展開した。ーーー"写鏡鉄城(カスレフティス・フロウリオ)"。外部からの攻撃反射と内部状況の隠匿の効果を持つ、カストロ得意の護(まも)りである。
「さぁーーー行きますよ」
その発動が合図となり、カストロが、アグニが、アウレリアが攻撃態勢に入る。鎖の戒めは続いており全力での迎撃ができない中、クロノスへの包囲網が完成した。
ここから先、クロノスは厳しい防衛戦を強いられることになる。
その頃、カロラとクルラーナ。
クリスティアとヴェロスが脱落しようとしている間、カロラはクルラーナの"転移"からの冷気をまとった蹴りの連撃を、全力でかわし、また炎拳でなんとか捌(さば)いていた。
『均衡が崩れた』とのアナウンスのあと、クリスティア達の方も気にしていたが、
「身の程を弁(わきま)えろ。今の貴様に出来ることは、目の前の敵(おれ)と戦うだけだ。余所見をしてると、怪我では済まんぞ」
その一言と共に痛撃を喰らい、以後、全力でクルラーナ戦に集中している。
そして今、アナンシアの実況により、クリスティア脱落の報を知った。
「クリスーーー!?」
思わず手足が止まったカロラに、クルラーナは今度は追撃をしなかった。それどころか、カロラに背を向け、3人の少女の方へと歩いていく。
「ーーーフン。趨勢(すうせい)は決したか。ならばこれ以上、長引かせることもあるまい」
「待て! テメェ、どういうつもりだ」
「第二回戦はここで終わりということだ。喜べよ、貴様は見事に勝ち残った」
淡々と語るクルラーナに、カロラは地面に拳を置き、クルラーナの背を睨(にら)みつけながら言葉に噛み付く。
「わけわかんねぇこと言ってんじゃねぇよ。まだ! 決着は付いてねぇだろうが!!」
「だから、それを今付かせようとしているのだが」
「そういうことじゃねぇ。アタシと! お前の! 決着だァ!! ーーー爆打積燭(デッドレッド)!!」
大地の力を吸収した、爆熱の拳がクルラーナの背を捉(とら)える。捉えたかのように見えた。
しかし。
「か……はっ……ぅ」
「ーーーフン」
転移によって割って入った少女が、腹を抉(えぐ)られ吐血する。そしてその直後に、再び転移によって元の位置へと戻っていく。それを直感的に目で追った時、カロラはもう1人、転移していない少女も同様の傷を負い、そして急速に回復していくのを見た。
「アレって……」
「流石に気付いたか? この舞台が、俺たちの決着を付けるのに相応しくないそのワケに」
立ち止まり、煽るように背中越しに笑みを見せるクルラーナに、カロラは気に食わねぇ、と呟いた。
「"転移"、"共鳴"……そして、"分配"。お前への攻撃はいつでもあいつらが"転移"で割って入って身代わりになる。そのダメージをあいつらで"分配"してマシにしといて、もう1人の回復魔法を2人で"共鳴"させて一気に回復する。ーーーそういうことかよ」
「ほぼ正解だ。もっとも、"分配"の対象になるのは魔力による現象、魔力によるダメージのみだがな。ともあれ、致命傷以下のレベルにまで軽減できれば、あとは物理ダメージも含めて回復の"共鳴"で全快できる」
「あいつらの扱いは、使い回しの盾じゃねぇか」
「その通りだ。彼女らに攻撃に関する能力はない。だが、彼女らが機能している限りは俺は負けない。ーーーそもそも、俺たちは俺が勝ち残ることだけに特化して編成されたチームだからな」
説明を聞き、カロラはクソ、と吐き捨てながら拳を握りしめ、クルラーナを睨みつける。握った拳からは、炎熱のエネルギーは消えていた。
「理解したか? この戦いは、そもそもからしてフェアじゃない。俺と決着を付けたいならば、黙って次へ進めば良い」
クルラーナはカロラから視線を外し、再び少女達の元へと歩いて行く。程なくして、3人の少女が、舞台上から搔き消えた。
『おおーっと、ここで突如、3人の選手が舞台上から脱落ー! これで残る人数は8名となりました! 第二回戦決着! 決着です!! 戦闘中の皆さんはただちに戦闘行為を中止してください!』
アナンシアが第二回戦の終了を告げる。剣一本で魔弾と炎弾の掃射をかわし、槍の刺突を防いでいたクロノスが、少し飛び下がって息をつく。
「終わりか……! 正直助かったぜ」
「チィ、仕留め切れませんでしたか。仕方ありませんね」
爪を噛むカストロを尻目に、槍を下ろしたアウレリアがクロノスへと近づき、鎖槍の戒めを解いていく。
「よくぞ凌ぎきりました。次の戦い、楽しみにしています」
それだけを呟くように言うと、アウレリアは鎖槍を回収して離れて行った。
『それでは改めまして、第二回戦を突破し、決勝トーナメントへと進む8名の選手の皆さんをご紹介致しましょう!』
観衆の歓声が上がる中、第二回戦を生き残った8人の名前がアナンシアによって読み上げられる。
アウレリア・カニス。
アグニ・エピティ。
イー・スィクリターリ。
カストロ・シーデロ。
カロラ・ドルチェ。
クルラーナ・カルチャーレ。
クロノス・アーレス。
コノーニ・カタストロフ。
以上の8名が、次の戦いーーー決勝トーナメントに駒を進めることになった。
『選手の皆さんの回復も考慮して、これより2日間、休息期間を設けます。この闘技場には、宿泊用の設備も整えてありますので安心して体を休めてくださいね〜』
アナンシアの説明が続く。決勝トーナメントは1対1の個人戦。敗者復活はなし。こことは違う、もう少し狭い武闘室で戦闘を行い、気絶等の戦闘不能状態になる、降参する、あるいは武闘室の壁に当たることで敗退となる。ただし、相手の殺害は禁止。その場合は、殺害した側も即時敗退となる。
ーーーというのが、決勝トーナメントのルールの概要だった。
『それでは! これより決勝トーナメントの対戦組み合わせの抽選を行います! え〜、抽選方法はですね。至ってシンプル! 私がこれから選手の名前が書かれたカードをシャッフルしてめくっていき、右から順にトーナメント表に記入します! それでは! 早速抽選を始めましょう〜』
アナンシアがカードをめくった順に、再び選手の名前が読み上げられていく。その結果、決勝トーナメント一回戦の対戦カードは次のようになった。
第一試合
コノーニvs カストロ
「ホンジツ3度目だがナントー!?」
「えぇ、今回ばかりは貴女に同意です。まさか初戦から我々で潰し合うことになるとは……」
第二試合
イーvs アグニ
「……!!」
「これはーーー」
第三試合
クルラーナvs カロラ
「ほぅ」
「おお、早速ーーー」
第四試合
クロノス・vs アウレリア
「へぇ」
「ーーー早速、チャンスが回ってくるとは。例にない僥倖(ぎょうこう)です」
奇しくも最初から、お互い因縁を持つもの同士の戦いが多い組み合わせに、おのおの気合が入る。
最後に決勝当日の段取りと、観客向けの案内がアナウンスされ、解散となった。
「クロノスさん!」
「師匠!!」
クロノスのもとに、イーとカロラが駆け寄ってくる。
「おう。とりあえずは無事、残ったな」
「あの。すみません、私、守り切れなくてーーー」
うつむきながら溢(こぼ)れるイーの言葉を、クロノスは手で制する。
「……ま。色々と思うところはあるだろうが」
何はともあれーーー。
「とりあえず、クリスに会いに行こうぜ」
一人脱落した、少女のもとへ、3人で顔を出すことにした。
後日談第8話→https://nana-music.com/sounds/02a6a316/
あとがきっぽい何か
どうも、T-M改めT-M.ホマレです。
プチ改名後、初の小説投稿になりますね。
第1話から読んで下さっている方は21度(正月特別編も入れると22度)もお付き合いいただきましてありがとうございます。
今回初めましての方は、ぜひ本編第1話から読んで頂けると幸いでございます。
というわけでChronuKrisークロノクリスー 後日談、第7話です。
魔戦杯第2回戦、3話目にして決着編。
生き残りの8名が決まり、決勝トーナメントのメンバー、および対戦カードが決まりました。
クリスとイーがかなり頑張りましたが、残念ながらクリスはここで脱落となります。
サポート型なのでゴリゴリのアタッカー相手は分が悪いのです。是非もなし。
というわけで、今週のチラ裏設定大公開のコーナーでございます。今週はアグニの技と"分配"の魔術について。
炎陣・破燃弾(フォティア・エンデマ)
火力A++ 防衛力C 射程B 範囲B 応用E 燃費B 命中B
魔法陣から赤黒く燃え盛る大粒の炎弾を放つ。着弾点で爆発し、範囲内のものを"燃やし尽くす"という特質を持っている。それは魔力や魔法が相手であっても例外ではなく、例えば魔力障壁に包まれた相手であればその魔力壁を燃やし尽くす。ただし、対象の魔力の量や質が段違いに上の場合は、燃やしきれずに消滅することもある。
アグニが使う、魔力量に応じて対象を"燃やし尽くす"技。魔法にも有効な性質上、ヴェロスとはまた違った『防壁キラー』になり得る技です。
続いて、"分配"の魔術について。
分配
火力? 防衛力? 射程? 範囲S 応用S 燃費S 命中?
予め魔術的契約によってリンクしたもの同士が、その身に発生した魔力による変化を、任意の割合で分け与えることができる魔術。この魔術の対象は『魔力による変化』に限定されるが、"共鳴"使いと組み合わせることで以下のような戦術がとれる。
1.Aが魔法によるダメージを受ける
2.分配の魔術により、共鳴使い2人に魔力ダメージを分け与える
3.同時にヒーラーが共鳴使い2人に回復を施す
4.共鳴の効果で増幅した分の回復の効果を、分配の魔術によりAに分け与える
これによりAが前線、残りが後方にいるままで、魔力ダメージの無効化と物理ダメージの回復ができる。
魔力によるもの限定で、影響を分配できる能力です。事前の契約は必要ですが、魔法によるメリットにもデメリット(ダメージ)にも対応できるのがミソですね。
また、作中でクルラーナが使っていた"転移"による身代わり戦法も、これらと組み合わせることで『何度でも復活する盾』になります。
ただし、所詮は人間の盾なので、盾役が回復する前に即死したり、"共鳴"、"分配"使い全員を一度に攻撃されたりすると機能しなくなるので、万能ではありません。
とはいえ、団体戦のルールがある今回の戦いでは、ジョーカーともいうべき強力な戦法です。
……因みに、クルラーナに従っていた少女3人は、最初からこの運用のために訓練された存在で、盾がわりにされる事に何の感情や疑問も抱いていなかったりします。
ーーー以上、チラ裏自己満設定公開のコーナーでした。2つしかないのに長えよ。
長くなってきた魔戦杯編もようやく決勝トーナメント、個人戦に入ります。
因縁の対決や、やってみたかった組み合わせなどのバトルを展開していくので、楽しんでいただけると幸いです。
それではまた次回、無事にお目にかけることが出来るよう願いつつ。
今回もお付き合い下さった皆様、本当にありがとうございました。
2017/05/26 23:30 written by T-M
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