Just Be Friends
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Just Be Friends
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#恋してマーメイド #声劇 #お魚さん
🐟スペシャルアフターライブソロ曲編⑤🐟
【Just Be Friends】byカクレ・クマ・ノミ⛵️
⛵️「司会の次は歌えとな…全く魚使いが荒い…」
素敵なご本家様
『Just Be Friends』
https://youtu.be/li1WjKl2boY?si=op4GuJVPoqOsRgcm
お借りした伴奏
https://nana-music.com/sounds/05deac84
【キャスト】
(敬称略)
⛵️ カクレ・クマ・ノミcv.ヒイロライカ
〔 https://nana-music.com/users/9203821 〕
『ただの友達の先』
あの子に出会ったのは小学生の頃、学校同士の交流会でのことだった。
小学生の頃、僕はキッズモデルをしていた。
その日も、仕事が入り遅れて交流会に向かっていた。
…正直、子ども同士の馴れ合いなんてめんどくさいし行きたくなかった。
僕は『お魚さん(マーメイド)』の血を4分の1ほど継いだクォーターだ。しかも父は外国人。ハーフでクォーターってなんだよどっちだよ。
自分でもそう言いたくはなるならば周りもそれは思うだろう。
珍しい容姿、モデル活動をしているということに対する好奇の目ややっかみもあり学校生活が正直めんどくさかった。
だけど、子どものうちは子どもにしかできないことも体験しないといけないとかいう両親の方針により学校にはできるだけ行かされていた。
「はー…めんどくさ…」
そう言いながら会場に向かう近道を歩いていたところだった。
「うう…わかんないよお…ここどこお…」
あの子を見つけたのは。
僕がいたのは体育館裏手の誰も使わない倉庫がある場所。この細い道を抜けていくと教室まで近道なんだけど…この子多分別の学校の子だよな?
なんでこんなわけわからない場所にいるんだ?
ちょっとめんどくさそうなので見つからないように陰から見守ってみる。
その子は泣きそうになりながらうろうろと彷徨っていた。あー…ほら、そんなよそ見しながら歩いてると。
「うぎょっ!?」
ほら、ころん…は?魚?頭魚!?は?は?
目の前の女の子が転んだ瞬間、頭が魚になった。
だけど、頭が魚に変わる、という特徴に僕は覚えがあった。
(あ、もしかしてこの子…)
この子、僕と同じ『お魚さん(マーメイド)』だ。初めて他の仲間に会えたことに胸が高鳴る。
この子なら、僕の気持ち、わかってくれるのかな…?
そんなことを思い、失礼ながら彼女をまじまじと見つめる。
艶やかで新鮮そうな鱗、黒真珠のように澄んだ瞳。なんておいし…しんせ…綺麗なんだろう。
普通の人から見たらおかしな光景なのかもしれないけど同族、ということもあってか僕は知らぬ間に彼女に惹かれていた。
「ねえ、君」
「ぎょ!?」
頭が人型に戻った彼女に声をかけた。人見知りなのかすごく怯えられているような…
「交流先の学校の子だよね、迷っちゃった?僕も行くから一緒に行こうよ」
「…!う、うん!ありがとう…!」
今度はパァッと花が咲いたような笑顔。
…ギャップがすごいなこの子…。
世間話をしながら彼女を教室まで送り、自分もさっさと自分の教室に向かおうとしたら…
「あの、わたし、淡水魚子っていいます!またいつかお礼させてね!」
笑顔で手を振りながら見送ってくれる彼女。
「さかなこ、ね。ま、覚えといてあげるよ。」
そんな彼女と青春ランデブー遊泳を高校で繰り広げるとはこの時の僕はまだしるよしもなかった。
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緩やかに朽ちてゆくこの世界で
足掻く僕の唯一の活路
色褪せた君の 微笑み刻んで 栓を抜いた
声を枯らして叫んだ 反響 残響 空しく響く
外された鎖の その先は
なにひとつ残ってやしないけど
ふたりを重ねてた偶然
暗転 断線 儚く千々ちぢに
所詮こんなものさ 呟いた
枯れた頬に伝う誰かの涙
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「臭み消しは生姜♪」
「湯通し忘れず♡」
「鯖味噌は鯖味屋!」
「はーいカット!」
「ルカルカさん、ノミさん、クランクアップです!お疲れ様でした!」
「「「お疲れ様でしたー」」」
「ふう…」
衣装を脱いで腰を下ろす。やっと一息つける。
高校3年生の時に僕はスカウトされモデルとして再デビューしたのだ。
そして今日は、あのルカルカとCM撮影。
どこの会社かって?そりゃ鯖味噌といえば…
「失礼します。あら、ノミお疲れ様ですわ。」
「…やあ噌良、まさか君のとこのCMをやることになるとは思わなかったよ…」
まさかまさかの噌良の会社。しかも噌良が監修した新商品という記念すべきCM。
噌良は新社長として研修を兼ねて働きながら大学に通う多忙な日々をおくっている。
「わたくしの鯖味噌愛がようやく商品になりましたわ…!このまま、軌道にのせるために頑張っていかないと…!」
夢が叶いつつあるんだ、噌良も今が踏ん張りどきなのだろう。
…だけど、少し顔に疲れが見える。化粧で隠しているとはいえうっすらクマも見えるし。
「噌良、無理しすぎて倒れたら元も子もないからね?」
「あら、ご心配ありがとうございますわ。この後大事な他社との会議があるからそれが終わればひと段落ですわ…ただ…」
顔を曇らせる噌良。ふむ、めんどくさそうな予感。
「…どうやら、わたくしに政略結婚の話がきたそうですの。」
「はっ!?結婚!?」
まじかよ、この時代にまだ政略結婚なんてあるんだな!?
しかし、この顔をするってことはひっかかることがありそうだな?
「…我が社の技術が目的らしく、わたくし自身や商品に関して興味があるわけではなさそうなの。だから…いやなのだけど…」
会社の看板のためにも断れない、といったところか。社長令嬢ってやつは大変だな…
「ねえ、ノミ…お願いがありますの。わたくしを…」
珍しく真剣な声色の噌良。だけど、その先の言葉は紡がれることはなかった。
「…やっぱりなんでもないですわ!ミーソッソ!じゃあ、いってまいりますわー!」
しばしの沈黙の後、いつものように高笑いをしながらこちらが何かを言う前に慌ただしく出て行ってしまった。
「…強い女に王子様はいらない、ってか。自分はお姫様じゃないってことか?強がらなくてもいいと思うけどね?」
強くあろうとして無理をする癖は高校時代から変わらない。それが彼女の良いとこであり難点でもあるが…
「失礼しまーす!あっ、いたいたノミくんおつかれー!」
「ノミくんお疲れ様です。お取り込み中でしたか?」
そんなことを考えていたら楽屋にルカルカのお二人が。時間を見たら…あっ、やべ、次の撮影の時間だ。
「フィンさん、ベルさん、お待たせしてすみません!すぐ準備します!」
「あはは〜大丈夫大丈夫。慌てないでいいよー。」
先輩方を待たせるなんてなんたる失態。ぼーっとしすぎた、仕事中だぞ集中しろよ僕。
「…ノミくん。さっきの女の子、あのCMの会社の担当さんだよね?入れ替わりで楽屋から出てきたんだけど…なんだかすごく思い詰めた顔をしてたの。…何かあった?」
「…やっぱベルさんの目は誤魔化せないっすね?…実は…」
そうして僕は高校時代からの友人噌良のこと、彼女を取り巻く問題のこと、そして強がっている彼女が気になっていることを話した。
「なるほどなるほど…ちなみになんだけどさ、ノミくんはその子好きなの?」
「ふぁっ!?」「ちょ、フィン…急すぎ…」
「…好きとかはもうしばらくはいいかなあ、なんて。まああの子は大事な友人ですけどね。」
高校時代の失恋は甘くて苦くて、幸せな思い出。だから今は急いで恋愛はしなくていいかなあなんて思ってる。
…ま、まさか噌良を…?いや彼女は友人だよな…
「ふむ、詳細は突っ込まないでおくね…だけど、なるほどなるほど。ここはお姉さん達に任せな!」
「…なるほどそういうことね。わかったわ。よし、ノミ君、とにかくまずは撮影を終わらせてしまいましょ。その後は…」
ルカルカのお二人がニコリと悪い笑みを浮かべる。何やらかすんだこの人達こういう時いきぴったりなのはさすがコンビ…
「そ、その後は?」
「「君を王子様に変身させる。」」
…王子様?は?僕が?
…あ、そういうことか、次の撮影のことか。
確か僕が王子様の役でルカルカのお二人がお姫様役だったはず。
なるほど、撮影に集中しろということかさすがは大先輩。
そんなこんなで撮影はサクサク進み無事クランクアップ。
「ベルさん、フィンさん、お疲れ様でした。お先に失礼します。」
さて、撮影も終わったことだし帰るか…
「ちょーっと待ったー!王子様はまだ行くとこがあるでしょー?」
「ノミくん、一緒に来て。Pさん、お願いします。」
ルカルカのお二人に引きずられて衣装のままPさんが運転する車に乗せられる。
「ちょ、これどこに向かってるんですか?衣装のまんまだし…」
「君の大事なお姫様のところ。」
…お姫様?ま、まさか噌良のことか?
「ノミくん、Pさんが全部調べてくれてある。今あの子達はレストランでお見合い中みたい。私達と一緒に会場に潜入して助け出してあげて。」
「は、はあ!?なんで、僕が!?っていうかお二人がなんでそんなこと。」
意味がわからない。僕はあの子の友人で、一緒に失恋を乗り越えて恋敵の背を押した戦友で、大事な…
…大事、な…
「…少しでも心配ならさ、攫ってしまいな??あたし達は頑張るお魚の味方だからさ。」
…ああ、やっぱりこの二人には勝てないなあ…
「…ありがとう、ございます。先輩方。」
今回のお礼は後日お魚食べ放題レストランを奢ることでチャラになった。…食べ放題、と聞いて何故かPさんが震えていたが…
しばらくして、車はレストランについた。
超高級な場所だと聞いたことがあるが…こんなとこ入れるのか…?
「…vipのお客様ですね、お待ちしておりました。」
「ありがとうございます。例の件、よろしくお願いします。」
まさかのすんなり入れた上にvip認定。さすがは超人気アイドルルカルカ、半端ねえ…
店内に潜入はできた。噌良は…どこだ!?
「わたくしは、あなたには屈しない!!!」
探すまでもなかった。店内の奥にある隠れたスペースから響いた声。
そちらに急ぐと、噌良が向かい側に座る男性のことを睨みつけていた。
「愛も、プライドも何もない。そんな人にわたくしはわたくし自身を捧げたくなんてない!わたくしは、自分自身の足で歩いていきますわ!!!」
…強いな、あの子は。自分より遥かに歳上の相手に、僕達が考えられないくらい重いものを背負いながら、大切なもののために彼女は一人で立っていた。
窓から差し込む月明かりが彼女を照らし、その姿は気高い戦乙女のようだった。
「…ガキが、調子に乗りすぎるなよ!?」
向かい側に座っていた男が噌良に手をあげる。
さすがに見ていられなくなって僕は噌良を庇うように飛び出した。
「触るな」
「いでっ!?」
噌良をこちらに抱き寄せるとやつの腕がからぶる。そのまま少し腕を下に叩き落とすとバランスを崩した奴はテーブルに突っ込んだ。
「ノミ…!?なぜ…?その格好は…?」
「何だね君は!おいウエイター!どうなっている!?」
その場は混乱に陥る。まあそりゃそうだろう。だけどこちらとしては、ありがたい。
「噌良、迎えに来た。一緒に逃げよう。」
「え…」
そのまま噌良を抱き上げその場から走り去る。
入り口付近ではルカルカのお二人が待っていてくれる。
「ノミくん、早く行きな!」
「後は任せてください、お幸せに。」
「ありがとう、ございます!!」
店のバタバタはお二人が沈めてくれるそうだ。vipパワー恐ろしい…
そのまま僕らはPさんと約束している場所まで逃げた。
「ふう…これで大丈夫だろ。」
「なんで…ですの…?なんで来たんですの…?」
ずっと黙っていた噌良が口を開く。声が震えている。…顔を見るのはやめておこう。
「助けて、って言おうとしてたじゃん。」
「え…?」
…素直じゃないなあ…いやもはや無意識で強くあろうとしてるのか…?
「僕さ、いいこと思いついたんだよね。君のこと助けられてみんな幸せになれる方法。」
「な、なんですの?そんなもの、あるわけ…ミソっ!?」
ひざまづき、彼女の手に口付けをする。
…噌良固まってるな…やりすぎた?
「僕が君と付き合ってるから、助けに来たってことにすればいいんだよ。僕ならあいつらよりよっぽど影響力あるしね?」
「なっ、えっ、ノミ、と付き合って…!?」
「…フリ、ってことだよ?」
「…なっ…なんなんですのお…!」
涙目で赤面するなんて、こんな噌良見たことがない。ただ…弱さも見せてくれて少し嬉しいなんて思ったんだ。
「ま、大丈夫だよ。ちゃんと守ってあげるから安心してよ、『お姫様』?」
「なっ、生意気言わないでくださいまし!わ、わたくしは、一人で立てます!『王子様』になんて頼らなくても…まあ、うん、たまには頼らせてもらう…かも?」
「何だそれ。」
…恋って感情ではまだないのかもしれない。
まだ友達。だけど、友達以上。その先に進むなんてまだ僕は想像できない。だけど、放っておけない、気になってしまう。
フリ、とはいえその先に本当の『王子様』の物語があるのかな。
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