FALLING DOWN
セブンスシスターズ
〖AF✟ERGLOW-L☾FE〗 Event8〚僕たちに真紅が流れていた頃〛 🍸FALLING DOWN ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 正午を越えたあたりで降り出した雨は、十分と経たぬうちに乾いた土をぬかるみに変えた。前を歩く一人が、そっとこちらに手を伸ばしてくれる。 「大丈夫ですか、上官」 「ありがとう。僕は平気だよ。君も気をつけて」 重たい鎧ごと腕を上げて、ルトナは青年の手を取った。開拓地までは、まだ道半ば。 女人でありながら、男ばかりの軍隊の列に混じる彼女の名は、ルトナ・ルンルアン。れっきとした兵士だ。身体的なハンデをものともせず、剣術の才は同期の男たちをも凌駕する。軍きっての期待の星である。 ルトナは元々、平凡な家に生まれた大人しい少女だった。十代のうちに人並みの学問を学び、年頃になれば適当な男に嫁がされるだけの人生を送る予定でいた。そんな人生の在り方について、疑問を覚えたことは無かったし、周りがそうなのだからそれで良いのだと思っていた。他に幸せの形があることすら知らなかった。 けれど、ルトナが二十歳を迎える頃、その常識は突如として音を立て崩れ去った。内戦が起こったのだ。 男たちはたちまち兵として駆り出され、ルトナと婚約を交わしたばかりの青年も、例外ではなかった。 「年が明けるまでには、きっと戻るよ」 家同士が決めた婚約。ルトナは、青年を愛しているとは言い切れなかったが、家族になる者として十分な尊敬の念を持っていた。彼と作りあげる未来を、年頃の娘らしく一途に夢見ていた。だから、彼の言葉を信じて待ち続けた。 けれど、年が明けても彼が戻ってくることはなかった。ルトナが彼と再会したのは、夏も近づいた頃だった。朝からやけに汗ばむ日だった。いつもよりも、玄関先から聞こえてくる虫の羽音が騒がしい。腐った果物でも落ちているのだろうか。そう思いながら戸を開けたルトナの前に、『彼』は転がっていた。 最初、ルトナはそれが彼だと気がつかなかった。いや、人の一部だと言うことすらも、分からなかった。蠢く羽虫で埋め尽くされた、バスケットボールほどの塊。腐った人の頭部だった。眼球があったはずの場所には、ぽっかりと黒い穴が覗き、そこに小さな白い旗が突き刺さっていた。旗の中央には、醜い歪んだ字で『負け犬』と綴られている。 キィンと耳鳴りがして、ルトナの世界から音が消えた。数刻の凪の後、音はすぐに戻ってきたが、それは以前のように穏やかなものでは無くなっていた。 見れば、周りの家々の玄関口にも、似たような黒い塊がぽつぽつと置かれている。敵勢力の仕業だということは目に見えていた。 ルトナは、無表情のまま、目だけを大きく見開いて固く拳を握りしめた。伸びた爪が皮膚にくい込み、血が滲んでいく。 汚いやり方だ。敵は、脅威になり得ないルトナたち女衆を殺さなかった。それはけっして温情ではない。彼らは代わりに、人の尊厳の踏み躙る最低最悪の侮辱を残していった。 いっそのこと、村ごと焼き払ってくれたらどんなに良かったか。この苦しみごと燃え尽きてしまえたら、ルトナも彼と共に逝けたのに……。 けれどルトナは生かされた。憎しみだけを植え付けられ、未だ規則的に息をしている。この呼吸は、これから先一度たりとも、平穏に触れてはならないと思った。 気がつけば、ルトナは剣を握っていた。彼の面影を探すように、在りし日の鍛錬の様子をなぞった。 好みの男では無かったし、愛しているわけでもない。だけど敬愛を抱いていた。真っ直ぐに剣を振る彼を、家族の為に戦地へ向かった彼を、人として貴いと思っていた。だからこそ、ルトナは彼の遺志を継がなければならない。 幸か不幸か、ルトナには兵士としての才能があった。男にも負けぬ筋力と背丈、女ならではのしなやかな身のこなし。戦場において、彼女に適うものはいなかった。 剣を振るう度、人の命を刈取る度、彼女の中の柔らかな心は、少しずつすり減っていった。穏やかに笑う物静かな少女の面影は掻き消え、殺した人の人数を覚えていられなくなった。 「……もう、やめよう」 三十を越えたある日、ルトナは顔を覆ってひとり呟いた。この頃、肉体の衰えと精神の疲れをより色濃く感じるようになってきた。敵勢力への復讐も充分に果たしただろう。大丈夫、楽になろう。きっと許される。 だが、戦の女神は、ルトナがただの人に戻ることを許さなかった。ルトナが引退を覚悟した翌日、遠く離れた海の向こうで、ひとつの爆撃があった。資源の眠る諸島を標的にしたその攻撃は、世界を牛耳る大国が、数千年の歴史を持つ東洋の国へ仕掛けた宣戦布告だった。 つまりは、次なる世界大戦の合図。 今や国軍の要となったルトナが、易々と逃げられるはずがなかった。 一度背負った争いの業は、未来永劫消えることはない。兵士という名の殺戮犯には妥当な罰だった。 大戦開始の知らせを受けたルトナは、自ずと乾いた笑い声を漏らす。彼女の目の前で、修羅の国への片道切符が光っている。復路の道は、閉ざされた。 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 瞳 軽く閉じて 幾千の歌をpeeping 壊れたままの鍵じゃ 解けない空のpuzzle 止まらない この時代 ねぇひとり 朽ちてくのなら すべて賭けて 今日も歌うよ 届かない都市のshining 雨に濡れたbeat it 時を止めて 君だけが救い やがて意味は尽き ここが果てになる 夜は二人隠すmelody Falling down is "Glory" 君となら どんな罪も罰さえも 抱きしめて離さないよ Falling down EXXXO… 君だけを探して ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 🍸ルナ─ルトナ・ルンルアン (cv:なつ) https://nana-music.com/users/7248866 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── Thumbnail: はいねこ Event8 Playlist https://nana-music.com/playlists/4276369 #HEL_L_ETTER #ALL_HELL_IDOL #Tokyo7thシスターズ #ナナシス #セブンスシスターズ #ゆんコラ
