ドラマツルギー
Eve
🎡 その目に映るのは 🎠 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第25幕『ショートフィルム』 シェスタとイリスが先導した罪人たちのパーティーは、誰もが認めるほど功を奏した。AMへ訪れる客人の数は緩やかに右肩上がりに、キャスト達にも活気が見え始めるようになった。 豪奢なオペラグラスを使い賑わう地上を見下ろしていたカミリアは、視線はそのまま、向かいへ座るウォルターに声をかける。 「随分と上手くやりましたね。やはりAMの皆様の実力は素晴らしい。腐っているのはトップだけでしたか」 せせら笑うような含みを持つ言葉に、ウォルターは答えない。ただいつもの柔和な笑みのまま、カミリアを見据えて頷いただけだった。 「貴方の仰る通りですよ」 「……何です? その腹立たしいほどの余裕は」 パキリと乾いた音がした。カミリアがオペラグラスの柄を折ったのだ。彼女は仮面の下の唇を、心底厭わしげに曲げ、靴を鳴らしてウォルターの眼前に移動した。 「よろしいのですか? 幾らAMの業績が上がろうと、『最初の契約』は覆らない。貴方自身は、どう足掻こうが消滅以外の道は残されていないのですよ?」 「構いません。地獄で生きる意味を見い出せず、過去を思い出すこともできずに何百年と怠惰を貪った責任は取るつもりでしたから。ただ、貴方がたの提示したノルマを達成できた暁には、約束通り私の仲間に手を出さないで頂きたい」 穏やかに、けれど凛としたその声は、カミリアが口を噤むには充分すぎるほどの凄みを放っていた。オペラグラスを床に叩きつけ、カミリアは誰も聞いたことが無いような震えた声を絞り出す。 「お前は、お前は、本当に何も……」 「ええ、申し訳なく思います、カミリア。貴方と私の間には、生前深い因縁があったのですね。この数百年の間、私は何度も思い出そうとしましたよ」 けれど、と言ったきり、ウォルターはそこで言葉を紡ぐ手だてを失った。カミリアの手が彼の白い首に伸び、きつくきつく締めあげたからだ。 「もういい。それ以上何も言うな。AMの罪人など生き延びようが消えようがどうでもいい。私はただ、お前を即刻消し去りたいだけだ」 赤黒く塗られた爪が、作り物の皮膚にくい込んでいく。仮面の奥で憎悪の視線を向けた瞬間、傷口から血が吹き出すように突然に、ウォルターの身体が触れた場所からボロボロと崩れ落ちた。 「こんなになっても、思い出せないのか? どこまでも続く水平線、鯨雲、春になると咲く白い花、私は全部、全部覚えてるのに……!」 目の前にいるのは、恐れを知らぬ強かな女のはずだ。少なくともこの数百年間、ウォルターの知るカミリアはそんな人だった。今目の前に立っている彼女はというと、まるで知らない乙女のようだ。けれど、この感情の熱さは何処か懐かしくもあった。 「貴方は……カミリアは、」 身体を失っていくのに比例して、急速に意識が遠のく感覚を覚えた。そのさなか、脳裏に浮かんだのは目が覚めるような青空だった。地獄街では決して見ることの叶わない光景。ウォルターは瞬時に理解した。これは走馬灯なのだ。これから二度目の死を迎えようとしている自分が、最後の最期に見る景色。さしずめショートフィルムのように流れていく記憶。 青空の下には草原が広がっていて、その中央には豊かな黒髪の女がいた。カミリアだ。けれど走馬灯の中のウォルターは、彼女をその名では呼ばなかった。 『探しましたよ、クレオパトラ』 彼女が振り返る。形の良い眉と彫刻のような顔立ち。ともすればきつく見えてしまいそうな印象の顔が、淡い赤紫の瞳が、あどけない微笑みを作った。 『おや、見つかってしまったね』 思い出した。彼女の名前はクレオパトラ。ウォルターを愛し、そして、死に追いやった人間だ。 SEASON3【十六夜パーティー編】END ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 頭でわかっては嘆いた 転がってく様子を嗤った 寂しいとか愛とかわかんない 人間の形は投げだしたんだ 抱えきれない 言葉だらけの存在証明を この小さな劇場はこから出らんない 気づいたら最後逃げ出したい 僕ら全員演じていたんだ エンドロールに向かってゆくんだ さあ皆必死に役を演じて傍観者なんていないのさ "ワタシ"なんてないの どこにだって居ないよ ずっと僕は 何者にもなれないで 僕ら今 さあさあ 喰らいあって 延長戦 サレンダーして メーデー 淡い愛想 垂れ流し 言の愛憎 ドラマチックな展開をどっか期待してんだろう 君も YES YES 息を呑んで 采配は そこにあんだ ヘッドショット 騒ぐ想いも その心 撃ち抜いて さあ まだ見ぬ糸を引いて 黒幕のお出ましさ その目に映るのは ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 🎬ウォルター(cv:yuma*) https://nana-music.com/users/2381215 〖MOVIE〗 日向ひなの https://nana-music.com/users/2284271 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖BACK STAGE〗 ‣‣第24幕『愛して、寄り添って』 https://nana-music.com/sounds/06b9e2ef 〖NEXT STAGE〗 ‣‣第26幕『???』 #AMUSEMENT_AM #ドラマツルギー #Eve
