大きな夢の影の下
はなふさ菜希
#声劇 #一人声劇 #モノローグ声劇 #大塩台本 これはきっとありふれていて それでも私はここにいて ───────────────────── 「…ん……朝か」 (時計の音) 上京して三年が経ち 気づいたことはここは夢の街ではないという事。 地元でも東京でも変わらず朝が来て、必ず明日が来る。 抱えた期待は気がつくと三角コーナーにあって、燃えるゴミと一緒に出していた。 「いただきます」 (自動ドア) 上京すれば何かが変わると思っていた。 親の反対を押し切って家出同然に飛び出したその先は同じような人間であふれていた。 きっと自分は特別で、あの曲がり角には素敵な出会いがあるはずとそんな甘い希望は一年目までだった。 「……なんでこうなったんだろ」 実家には帰っていない。 ほら言った通りだっただろう、なんて言われるのが怖くて。 自分が生まれた場所で、自分を否定されることにきっと耐えられないだろうから。 だから 「………………」 三年間続くこの震えをどうしても止められずにいる。 ────────────────────── 彼/彼女 今年で25歳 大学卒業後、飛び出すように上京したが思うようにいかずそのまま東京で就職した。 どこか空虚な気持ちを感じながらも故郷に帰れず毎日を過ごす。 両親からの連絡は頻繁に来るが返事を出来ずにいる。 SE 【効果音ラボ】 https://soundeffect-lab.info/ 大都会の道路 卵をコンコン 卵を割る フローリングの上を歩く1 スズメの鳴き声 茶碗を置く 電子レンジでチンする 電子レンジを開ける 電子レンジを閉める 冷蔵庫を開ける 冷蔵庫を閉める 時計の針1 椅子に座る3 布団の中でもぞもぞ 目覚ましのアラーム アスファルトの上を歩く1 携帯電話のバイブ 自動ドアが開く