nana

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🃏 まだ心巣食ってる獣とは 引き続きやっていこう 🎯 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第3幕『欲望の果て』  ここは怪しげなネオンライトが光るVIP専用のカジノルーム。いつものように上級悪魔の相手をしてやりながら、パリカは彼らに尋ねてみた。 「なぁ、お前ら、天使って見たことある?」 『天使ぃ? アハハ、何言ってんだパリちゃん。ここは地獄だぜ?』 『パリカみたいなカワイイ子なら知ってるけどねぇ?』  女の姿を象った悪魔が、パリカの頬に長い指を這わせて抱き寄せる。今夜は彼女に買われるかな、と考えたところで、ゲームの相手をしていた悪魔が強引にパリカの腕を引いた。 『おいおい、待てよ。今日は俺との約束だろ、パリちゃん?』 『アラ、パリカは男の体より女体の方が好きよねぇ?』  悪魔たちに取り合われるのは存外気分が良いものだ。ぐらぐらと揺れながら、パリカはにやりと笑って交渉を持ちかける。 「じゃ、今からお前ら二人、天使についての情報を集めてこいよ。俺の知りたいことを多く持ち帰ってきたヤツと寝てやる。それでどうだ?」 『フフ、パリカは悪魔を使うのが上手いね』 『賛成だ! その勝負乗った!』  悪魔二体は、パリカに負けず劣らず不敵な笑みを作ると、もう片割れに負けじと高速で窓から飛び出していった。一人部屋に残されたパリカは、ビロード張りのソファに深く身体を沈めて、長いまつ毛を伏せ息を吐く。 「悪魔って怖ぇけど、やっぱ人間より単純で扱いやすいよな。遊びやすくて助かるぜ」  リラックスした姿勢のまま、天井のシャンデリアを見つめるパリカ。その瞳は何処か虚ろで、何かを思い返しているようだった。 「ほんっと、人間の女は大変だったもんなぁ。浮気遊びのひとつも許しちゃくれねぇ。おかげで俺ぁこのザマだぜ」  ソファの背もたれにしなだれかかるようにして、パリカはずるずると身体を崩していく。このザマだと言う割に、彼の表情は安堵の色で作られていた。パリカにとっては、綺麗な水の中で泳がされる人生よりも、死後の腐りきった泥沼の中で揺蕩う方が何倍も幸せだったのだ。 ───────────────  パトリック・ハリスは生まれながらにして宝石のような容姿を手にした勝ち組だった。幼少期から高校を出るまで、それはそれはモテにモテ、恋人を切らしたことなどただの一度もなかった。彼が気に入った顔は全て彼のものになったし、例えそれが他の男の家族であっても、彼が少しばかり色目を使えば欲しい女は簡単に彼の元へ誘われていった。パトリックにとって恋愛事情など叶って当然のもの。自分は選ばれた人間なのだと信じて疑わなかった。  そんな彼は、高校卒業と同時に都会のホストクラブに入ることになった。圧倒的に輝く顔面と、甘い言葉を巧みに操る話術のおかげで、一ヶ月も経つ頃には客の誰もがパトリックを求めて店に来るようになっていた。着飾った可愛い女の子と座って話しているだけで大金が舞い込んでくる。まさに天国のようだと思った。溢れるほどの富を手にしたパトリックは、その地位と金で幾人もの恋人を作った。『君が一番だ』というセリフを、一体何人に吐いただろうか。疑うことを知らない馬鹿な女たちは、パトリックの薄っぺらい言葉を鵜呑みにした。その度に心の中で嘲笑いながら、パトリックは蝶々のように幾つもの花を渡り歩いて暮らした。この先天罰が下るなどとは、微塵も考えなかった。だってパトリックは特別だから。生まれながらにして選ばれた存在だから。  ──だから、ナイフで手のひらを突かれるその瞬間まで、パトリックは自分が本気で殺意を向けられていることに気がつけなかった。  右手を押さえ、目を見開いて震えるパトリックの視線の先には、これまで気まぐれに止まってきた花たちが揃っていた。皆、見たこともないような形相でこちらを睨みつけている。 「は、話し合おうぜ、なぁっ……!」  口をついて漏れ出た言葉はあまりにもチープで、パトリックは自分がもう誰も魅了出来なくなってしまったことを悟った。馬鹿だと思っていた女たちは、パトリックに絆されるフリをして、裏で結託していたのだ。 「これは、私の分」  女の一人が縛られているパトリックの太腿にナイフを突き立てる。パトリックの長い悲鳴がこだまする。しかし、その悲鳴が止むのを待たずして、次の女が彼の耳にナイフを振り下ろす。びちゃ、と血の滴る音が、脳の中心まで轟いた。  女たちは、そう簡単にパトリックを楽にしてはくれなかった。激しい痛みを伴うが、それだけでは決して死ぬことの出来ない場所を、何度も何度も何度も刺した。血溜まりの中で不安定に息をしながら、パトリックは三日三晩生き長らえていた。そんな彼の耳に、女たちの凄惨な罵倒が響く。 「●●は口封じのためお前に殺された。▇▇はお前との子を産もうとして出血多量で死んだ。‪✕‬‪✕‬はお前に裏切られたと知って自殺した。他にもたくさん、たくさん、私たちは、傷つけられた。……お前が、お前さえいなければ!」  最後の女がナイフを手にし、深い憎しみの籠った手で、パトリックの頭上にナイフを振り下ろした。こうして、彼の華やかで悍ましい人生は幕を閉じたのだった。 ─────────────── 「でもよ、騙される方も悪いと思わねぇか? どんだけ盲目なんだよ。ったく、あん時すっげぇ痛かったなぁ」  喉元過ぎれば熱さを忘れるという。まさにその言葉通り、パリカは全く反省の素振りを見せぬまま、回想から現実へと舞い戻る。すると、タイミングよく窓が開き二人の悪魔がパリカの両隣にやってきた。 『集めてきたわよ、パリカ』 『世話の焼ける可愛い罪人ちゃんだぜ』  女体の悪魔に抱きつかれ、男体の悪魔には手を取られ、パリカは中央でにんまりと口角を上げた。 「意外と早かったな。そんじゃあ聞かせてもらおうじゃねえか。お前らとっておきのゴシップをよ」 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖LYRIC〗 踊りだそう話そうアナタこそ理想 そうなのでとどのつまり息が詰まりそう 正そうカマそう笑かしていこう        もっと揶揄われて不快さ増していこう    俺は暗い吐くくらい教育に悪い                        瑕疵と化した歌詞解かしちゃ右に出るのナシ 明るいがダルい内容が軽い 漢字卍多め共にゃ騙されない   嗚呼もう最高に嫌 ねぇお嬢ちゃん 裸になって大人になって 終いには飛び込む海の中 優しくなって慰め合って繋いだ手のひら 嗚呼もう独りじゃない 孤独じゃない孤独じゃないけどさ まだ心巣食ってる獣とは 引き続きやっていこう ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖CAST〗 🔷パリカ(cv:桐生りな) https://nana-music.com/users/6037062 〖ILLUSTRATOR〗 ゆん https://nana-music.com/users/7839481 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖BACK STAGE〗 ‣‣第2幕『パリカとロゼッタ』 https://nana-music.com/sounds/06bd7044 〖NEXT STAGE〗 ‣‣第4幕『???』 #GAMBLING_WITH #取扱注意 #syudou

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