nana

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🎡 一人は耐えうるものね 🎠 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第11幕『空白の一年』  ボクら双子はいつでも一緒。起きる時間に寝る時間、遊ぶ場所から食べるものまで。それから、暗殺の罪も半分こ。  けれども最後の一年間、君が生きた最後の一年。君の隣に、ボクは居なかったね。  ゾーイとネヴァ──ゾディアック・グランディアとネヴィル・グランディアは、雪の厳しい北部の山村にて生を受けた。両親はしがない果物農家で、村の中でも一際山奥にある小さな家で慎ましやかに暮らしていた。そんな家庭に生まれた双子は、二卵性であるにも関わらずそっくりで、おまけに中性的な顔立ちをしていたので、幼少期はよく間違えられたものである。両親が二人を見比べ悩む度、双子は大抵笑って答え合わせをしたが、時に態と互いのふりをすることもあった。少なくともこの時、彼らは何処にでもいる普通の、愛に溢れた家族だった。  しかし、ある時から両親はネヴィルを腫れ物扱いし、ゾディアックだけを可愛がるようになった。その奇妙な態度の変化は、二人が学校に通う年になった頃から現れたものだと、ネヴィルはそう記憶している。両親が彼を突き放した理由は至極簡単だ。学校という学びの場を与えられ、ネヴィルの頭脳が異常に発達していることが発覚したからである。学士号を得た者が読むような難解な本を僅か七つにして読破したり、一度聞いただけで他国の言語を暗記してしまうような子どもは、天才である以上に気味が悪い。学のある大人ならばひどく賞賛しただろうが、片田舎の農民である両親には、ネヴィルは理解の範疇を越える恐ろしい子どもにしか映らなかった。無邪気に庭を駆け回るゾディアックの方が、彼らにとって理想の『子ども』だった。ただそれだけのことだ。 「馬鹿な父さんたちには、ボクの才能は分からない」  親の愛情など所詮その程度のもの。十を数える頃には、ネヴィルは半ば諦めに似た思いを抱えながらも達観していた。学校では黙々と勉強に勤しみ、家では家族の視界に入らぬよう部屋の隅で本を読んでいた。最も、貧しい彼らの家には立派な革表紙の本は存在しない。ネヴィルが読んでいたのは、学校で聞きかじった物語や数式を木札に纏めた手製の本であった。それでも、両親と会話をするより何百倍もマシだった。木札の端がすり減るほど、何度も何度も繰り返し読んだ。家の中は、ネヴィルにとって窮屈な鳥籠のようなものだった。  けれど、そんな彼も妹のゾディアックにだけは家族の情を抱いていた。頭が足りないのか、彼女は両親とネヴィルの間に深い溝が出来ていることに気づきもしないようだった。両親に話しかけるあのはしゃいだ声で、彼女はネヴィルにも態度一つ変えずに接してくれた。 「ネヴァ〜! お外で鬼ごっこしようよ!」 「嫌だ。ボク走るの嫌いなんだ。一人で遊んできなよ」 「やだー! つまんない!」  ゾディアックは不満げに叫ぶと、強引にネヴィルの腕を引いて外に連れ出した。口では嫌だと言いつつも、ネヴィルにとってはこの時間が一番幸せだった。両親が果物畑に出かけている時、二人は日が暮れるまで走り回っていた。走っている間だけは、二人は何の違いもない、本当にそっくりな双子になれたのだ。 (ゾーイがいればそれでいいや。この子さえいれば、それで幸せだ)  北風で頬を赤く染めながら、ネヴィルは強く願う。どうかいつまでも、この子とずっと一緒に居られますようにと。  その願いは、残酷にも彼が望まぬ形で叶えられた。  ある冬の暮れ、両親は突然ゾディアックだけを連れて何処かへ行ってしまった。遂に捨てられたのか。冷静にそう考え、ネヴィルは身支度を整え両親を追うことにした。彼らのことはどうでも良いが、ゾディアックだけは何としてでも取り返さなければ。最低限の準備を終え、彼が玄関の戸に手をかけたその時だった。強い勢いで外側から扉が開き、次いで涙で顔をぐしゃぐしゃにしたゾディアックの姿が目に入った。 「え? ゾーイ、なんで……」 「どうしようおにいちゃん! お父さんとお母さんが、死んじゃった……!」  ボロボロと雫を零しながら、ゾディアックは嗚咽混じりにネヴィルに抱きついた。何が起こったのか分からないまま、ネヴィルはひたすらに冷たくなったゾディアックの背をさすり続けていた。  数時間後、落ち着きを取り戻したゾディアックは、今まで見た事も無いほど行儀よく椅子に腰掛けた。そして、向かいに座るネヴィルに縋るような視線を向ける。 「お父さんとお母さんね、お金が無くなっちゃったから、アタシと一緒に死ぬって言ったの。この先の森で、首を吊るんだって。首にロープをつけられて、皆で木から飛び降りたの。でも、アタシのロープはすぐに切れて助かった。お父さんとお母さんは、そのまま……」  その先の言葉は無かった。恐らく、両親の最期の姿を思い出したのだろう、ゾディアックは机に突っ伏して再び泣きじゃくった。ネヴィルはというと、ゾディアックの悲しみを想像し苦痛に顔を歪ませながらも、内心は複雑だった。両親が大好きだった妹の手前、死んでも口には出せないが、ネヴィルにとっては願ったり叶ったりだ。口元が緩んでいくのを必死に抑えながら、ネヴィルはもう一度ゾディアックの背に手を当てる。せめて彼女の前では、この歓びは隠し通さなければならない。そう心に決めたその時、不意に玄関の戸が叩かれた。 「……お母さん!? お父さん!?」  瞬間的にゾディアックが立ち上がり、玄関へと駆けていく。ネヴィルはその背を滲み出す絶望に染まりながら見つめていた。まさか、両親も死にきれていなかった? それならば、ここに戻ってきた彼らは、今度こそゾディアックを連れて行ってしまう。もう二度と会うことの出来ない、死者の世界へ。 「待って、ゾーイ……!」  ネヴィルが叫びながら手を伸ばした瞬間、ゾディアックは歓喜に満ちた笑顔で扉を開け、そして目を見開いたまま凍りついた。  彼女の目の前にいたのは、両親ではなかった。煙草の臭いがまとわりついたガタイの良い男が、双子を品定めするような目つきで見つめていた。ネヴィルは咄嗟に、固まって動けないでいるゾディアックの前に立ち、男から守るように腕を広げた。しばし睨み合いが続いた後、男は満足気に唇を引き上げ、趣味の悪い笑みを見せた。 「売るのは小僧一人だったはずだが、お嬢ちゃんも一緒か。まあ良いだろう。二人とも俺について来い。お前らのパパとママが冥土の土産から運び損ねた借金、ビタ一文逃さず返してもらうぞ」  ずっと一緒に居られますように。小さな少年の無垢な願いは、こうして鮮血に塗られた茨の道を切り開く道標となった。 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 🧵曖昧ディスコミュ まるで狂気の花 泣きそうに悲しそうに あなたに伝えたい 🪡愛のRE:ラビュー それは 魔法の言葉 消えそうに優しそうに あなたに伝えた 🧵幸せな蝶になったって 🪡瞬きで宙に頓挫して 🧵ならば願い託して 🪡🧵受けて止めて認めて 🪡🧵揺れるファイヤー 叫ぶフライハイ 🪡私染まれれば 🪡🧵二人の幸せとか積もる情熱をあげるわ 🪡🧵揺れるファイヤー 叫ぶフライハイ 🧵闇を照らすのだ 🪡🧵怒りと憎しみさえも届く衝撃をくれるから 🧵一人は耐えうるものね 🪡痛みは愛することね 🪡🧵二人は今を生きる 🪡どこまで? ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖CAST〗 🪡ゾーイ(cv:海咲) https://nana-music.com/users/579307 🧵ネヴァ(cv:ラムネ) https://nana-music.com/users/7020177 〖ILLUSTRATOR〗 秋ひつじ https://x.com/akhtj0801 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖BACK STAGE〗 ‣‣第10幕『救いはあるのかい?』 https://nana-music.com/sounds/06ade3dc 〖NEXT STAGE〗 ‣‣第12幕『永久に沈みゆく』 https://nana-music.com/sounds/06af3f88 #AMUSEMENT_AM #Kanaria #星街すいせい #レクイエム

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