nana

星屑の革紐
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最早どこまで上げるものか悩む。 サリュ アンシャンテ(「こんにちわ、はじめまして!」) 差し出した手を― 嗚呼…可愛い私のお姫様(エトワール) 小さな指で懸命に握り返してくる あなたの歩む道程(みちのり)が 輝くように『星』と(エトワール)…… 『ある雨の朝…いつものように少女が目を覚ますと… 寝具(ベッド)の横には優しい父親…そして大きな黒い犬が居た… 雨の匂い…くすぐったい頬…どこか懐かしい温もり… 小さな姉と大きな妹…二人と一匹…家族となった特別な朝……』 嗚呼…私は星を知らない 遠過ぎる光は届かないから… 嗚呼…僅かな視力でさえも 何(いず)れ失うと告げられている… エクスキュゼ モワ マ メール ス ノン(ごめんなさい…お母さん…この名前…) ジュ ネィム パ セット アブソリュマン デュー ム(どうしても好きになんてなれないよ…) エクスキュゼ モワ(嗚呼…ごめんなさい…) 勇気を出して― 嗚呼…Pleut(プルー)と屋外(そと)へ出たけど 歩く速度が抑(そもそも)違うから… 嗚呼…暗闇に沈む世界では ちょっとした段差でも転んでしまう… エクスキュゼ モワ モン ペール ス ウィユ(ごめんなさい…父さん…この両眼)… ジュ ネイム ッパ セット アブソリュマン デュ メーム(どうしても好きになんてなれないよ…) エクスキュゼ モワ(嗚呼…ごめんなさい…) 細い革紐(アーネ)じゃ― 心までは繋げないよ…愛犬(プルー)が傍にいたけど…私は孤独(ひとり)だった…… 『別々に育った者が…解り合うのは難しい… ましてや人と犬の間であれば…尚更の事である… これからの二人は…何をするにも何時も一緒だった… まるで…空白の時間(とき)を埋めようとするかのように…』 『姉は甲斐甲斐しく妹の世話を焼き…妹は姉を助けよく従った… 父の不自由な腕の代わりになろうと…何事も懸命に… 其れは…雨水が大地に染み込むようにしなやかに… 根雪の下で春を待つように…小さな花を咲かせるように…』 急に吹いた突風(ラファル)に手を取られ…革紐(アーネ)を離したけど… もう何も怖くなかった…『見えない絆』(星屑のアーネ)で繋がっていたから… 弱い姉だ― それでも嗚呼…ありがとうね…妹(プルー)が傍にいたから… 私は何処へだって往けた…… 大好きだよ…妹(プルー)が傍にいたから…私は強くなれた…… 星空に抱かれて夢を見た…あなたが産まれてきた朝の追憶(ゆめ)を… 銀色に輝く夢の中…零れた砂が巻き戻る幻想(ゆめ)を… 嗚呼…何の為に遣(や)って来たのか…最期に判って良かった― 忘れない[よ/で]…[君/母]と歩いた…[暗闇/苦しみ]に[煌めく/揺らめく]世界を… いつだって…嗚呼…[人生(せい)/愛]は星屑の…[輝き/瞬き]の中に在(あ)ることを…… 『祈りの星が降り注ぐ夜→黒犬(プルー)は静かに息を引き取った… 悼みの雨が降り注ぐ朝→冷たくなった彼女の腹から取り出されたのは 光を抱いた小さな温もり→黒銀の毛並みを持つ子犬だった』 『―そして《物語》(ロマン)の翼は地平線を軽々と飛び越えるだろう やがて懐かしくも 美しき あの《荒野》を駈け廻る為に……』 「其処にロマンは在るのかしら?」

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