_2.第一章(story01)_
【Corrupted hymn :Ⅱ -Recurrence-】
「みなさん!クリスマスではお疲れ様でした!」 ──合唱祭メンバーの控室。 メンバーたちが振り向くと、そこには 学園長が腕を広げながら覆面の下で笑みを湛えていた。 _________ ▶︎𝐒𝐓𝐎𝐑𝐘 2.第一章(story01) _________ クリスマスパーティーでの発表は大盛況に終わった。 特に合唱祭の存在をよく知らなかった一年生たちにとって、その話題は尽きることを知らず。 その影響は顕著に表れていたと、一年B組の3人は盛り上がっていた。 🎭「あの後さあ、クラスのみんなが話しかけてきてびっくりしちゃったよぉ。普段は俺が話しかけると逃げたりするのにさぁ〜」 🎨「いつ練習してたの?とか、質問攻めだったし。先輩たちのことも根掘り葉掘り聞かれたよね」 🏝「寮長たち、すごい人たちやから……みんなうらやましがってた……」 🕰「ふふふ。そうでしょうね。ですが、特に練習らしい練習…というものはありませんでしたから。あの舞台は、貴方たちに秘められていた力…その一旦が表現されたに過ぎないのですよ」 💊「そうだよ!入学して間もないというのに、君たち一年生は本当に素晴らしかったね!」 学園長に褒められて満更でもない様子のイルジー、アコロ、グラッドがお互いに顔を見合わせて盛り上がっていると、アルカが笑顔で割って入ってくる。その横にいたデアも、話に同意するように頷いた。 💊「あの日は本当に特別な日になったよね。合唱祭は例年すごかったけれど、今年はすごく興奮したなあ…。ああ、今でもみんなの素晴らしい歌声を思い出せるよ……暗がりから注がれる熱っぽい視線で、見ている生徒のみんなが同じくらい興奮しているのも伝わって、一体感にゾクゾクしてしまったよ」 🐯「はは…さすが。あの注目の中で、お前は周りがみれる程度には余裕だったんだな。アルカ」 💊「とんでもない。緊張したさ!」 🕰「いや〜〜〜。みなさんのありのままの歌声、本当に素晴らしいものでした!生徒のみなさんも、皆が歌声に聞き惚れていましたよ。私もつい舞台袖で聴き惚れてしまいました……さすがは選別メンバーと言ったところでしょう」 💊「去年までは聴く側だったけれど……あの舞台で自分達達が歌えるって、とっても素敵な気持ちになったね」 🐯「…ああ。」 アルカの言葉に、腕組みをしながら上機嫌にウンウンと頷く学園長を、デアが目をすがめて見つめる。 🐯「……だが、次からが本番なんだろ?学園長センセ」 🕰「そうです!さすがムファルメ君。よく覚えていましたね」 学園長は組んでいた腕をほどき大きく広げると、部屋に集まっていた合唱祭メンバーへと視線を順番に向けていきながら口を開いた。 🕰「説明会でお伝えした通り、今年は例年とは異なった合唱祭となります。ただでさえハイレベルな歌声を、さらに高みへと導くべく。そして最後には、過去最高のクオリティで、真のCorrupted hymnを完成させるのです!」 🚫「真のCorrupted hymn……か。俺たちは歌なんて素人だし、魔法についてだってこれから学んでいく身なのに、大丈夫かな……先輩たちについていけるか心配だ」 ☂️「そもそも、合唱祭の存在も入学するまで知らなかったよな。メンバーに選ばれた時もすごく驚いたけど……クリスマスの時と違って、先輩たちと歌うんだろ?緊張するよな」 🎨「過去の合唱祭の先輩たちよりもすごい歌……って、そんなの歌えるかなぁ……先輩たちのことは頼りにしてるけど、僕達一年生が足を引っ張っちゃいそうで不安かも」 🏝「ところで……コラプテットヒムって、なんやったっけ」 🎭「えーとぉ。あはは、忘れちゃったぁ。説明会の時に言ってたよねぇ?」 🚫「お前な……あのあともう一回ストラ先輩が教えてくれたろ……」 ☂️「グレートセブンに奉納する歌、でしたよね。学園長」 🕰「そうです。よく覚えていましたね、ケーラット君たち」 一年生たちがわいわいと盛り上がる傍ら、二年生たちは二年生たちで顔を見合わせていた。 🐕「ねえねえ。去年の合唱祭も凄かったよね。でもさ、なんだか今年はもっと凄かったような気がするんだけど!気のせいかな〜〜」 ビオナがうーんと大きな声で悩み出すと、横にいたラディアが真面目な顔で同意する。 🔍「いや。僕もそう感じた。一年生の頃も、初めての合唱祭を見て、先輩たちの歌声に圧倒されたけど……自画自賛になるだろうが、本当にいいものだった。異なる点といえば先輩方が素晴らしい方ばかりであるのもあるが、やはり、テーマが時期にあっていたのもあったのかな。それに毎年課題をこなしていかなかればいけないという責任感や決意というものが僕達の歌にも……」 🍽「ああ、またラディアが分析モードに…!……うーん。確かに、去年までもプログラムごとにテーマが選べてましたけど、季節に合った歌というのは初の試みだったんですよね。それも良かったし……それに、なんだか……今年は厳かさというか……会場の空気が、今までと違いましたよね。」 🍬「そうだね。去年まではもう少し、華やかな雰囲気だった気がする。お祭りという名を冠しているだけあって、生徒たちも聴き入るというより声援を送ったりもしていたし」 🐾「歌はそりゃ去年もガチめだったけど、お祭り感っていうの?個人的には去年の方が雰囲気はゆるくって好きだったけどにゃ〜。今年のは儀式ぶってるっていうかさぁ、課題もこれからどんどん難しくなっていくんでしょ〜?……めんどくさ」 そこに隣のクラスの3人が話に混じってきた。ストラはラディアの言葉に昨年の様子を思い出しては、隣のレイジに話しかけた。レイジも思い当たる節があるように続き、面倒臭げに肩を竦めるディンクに力強い視線と笑みを向けた。 🍬「現状で、僕達は既にこの学園から選び抜かれた、名誉あるメンバーなんだろう?なのにさらなる高みを目指せるなんて最高じゃないか」 🐾「向上心すっご……う“〜ん。ま、全校生徒に舐められるよりは、今年は今までと違うんだよねぇ〜って、自慢できていいかもだけどさ」 💭「本質的には今までより今年の方法が合っているんじゃないか。グレートセブンに捧げる歌なんだろ?なら今のままより、一層上手くなるに越したことはない」 🍽「そうですねぇ。まあ、合唱祭は長く続いている行事らしいですから、ここら辺で新しい形に変わることもあるでしょう……良い方に向かうといいですね」 サディクがひょっこりと顔を出し、その場にいた二年生全員が会話に混ざり始めたところでビオナがあることに気づく。 🐕「ところでウィルバーは?」 💭「ああ。……あいつそういえば、今日見かけないな」 キョロキョロとあたりを見渡す二年生たちに、すぐそばにいたグラッドが声をかけた。 🏝「ノア先輩……今日は、お休み……です」 💭「モストロラウンジで働きすぎてぶっ倒れたのか?」 🕰「オッホン!! ウィルバー君はご家庭の事情で、今回の公演の練習にはあまり参加できないとのことで公演を欠席するとのことです。課題的に、1回休むと復帰するのは難しいですが……寮の方々や、同じ副寮長の方達にフォローを頑張ってもらうとしましょう。よろしくお願いしますね、貴方たち。 さて!それでは今回の課題の説明に戻りますよ!」 ────────── 🕰「今回の課題ですが……“歌に特定の魔力を宿らせる“というものです。貴方たちは普段、それぞれ火・水・風・無という属性の魔法を使い分けていますね。それを歌でも表現していただきます。 そして課題の達成基準は……学園長であるこの私を!納得させることですね」 黙って話を聞いていた三年生たちだったが、その言葉にエルスはキョトンと瞬き、エイダンは首を捻って顔を見合わせた。 🎐「納得かあ。割と曖昧だね」 🎓「うーん。不合格なんてあるのか?学園長、その場合はどうするんだ?」 🕰「ふむ……まあ。貴方たちが手抜きをしない限りは、そのようなことは無いでしょう。ただし!貴方たちは私が見込んだ合唱祭メンバーです。手を抜いたら即座にバレますからね!その場合は……“特例処置“となるでしょう」 “ 🎓「特例処置?」 🕰「はい。このような年間行事では、例年イレギュラーなことも起きるものです。その場合は…誉ある合唱には参加をせずに運営側を手伝っていただいたり、反省文を提出いただいたり、プログラムを1人でこなしていただいたりなど、様々ですね」 🎓「なるほど。要するに罰則ってことか……何はともあれ、課題も得意な魔法の系統に当てはまったらやりやすそうだな」 🎐「そうだね。そういえば、去年までは寮に分かれて歌っていたんだよね?僕、あんまり覚えてないんだけど……歌ってことは、寮によって得意不得意があるのかなあ」 🐯「ああ……そういうことならサバナクロー寮は火属性の歌が得意だろうな」 🐠「オクタヴィネル寮は、きっと水属性の歌をもっとも上手く表現できそうだよ」 👁🗨「……ほう。それならディアソムニア寮は、無属性が得意そうだな」 🎐「あ、じゃあうちは水とか、無属性かな。寮生たち的には、無属性が表現しやすそうだ」 🎓「なるほど。そういうことなら……うちはオールラウンダーって所だね」 🐯「お前んところもなかなか躾が行き届いてるからな。寮長の声に従ってなんでもやって退けるトランプ兵らしいぜ」 🎓「ふふ。うちの規律正しい寮生たちを褒めてくれてありがとう」 💭「いまいちピンとこない。うちは?」 👁🗨「スカラビアは、風や火属性の歌が得意そうだな」 💭「……ああ。なるほど、そういうことか」 🍬「うちも水属性かな」 💭「水もだが、ポムフィオーレは無属性も得意なんじゃないか?」 🍬「確かに。ものによるだろうけどね」 🕰「ほう!さすがは寮長たち!歌の持つ魔力の性質について、すっかり見抜いていますね。さて、一年生を含めた皆さんたちにも伝わるように説明していきますから、しっかりついてきてくださいよ!」 ────────── 合点のいった様子の寮長たちの様子に首をかしげる他のメンバーの前で、学園長は真面目なトーンで語り始めた。 🕰「本来、魔法というものは魔力を介して直接現象を発現させますが……それを『性質として歌にのせる』となるとまた話は違ってきます。この世に歌はたくさん存在しますが、それらは各々に持っている性質が異なります。 とある歌は、人の心を熱くさせる……火属性。 そしてとある歌は、人の心に静寂をもたらす……水属性。 ……といったふうにですね、その歌が持つ性質によって、載せやすい魔力の性質も変わっていくのですよ。どの歌にどんな性質が宿るのかを見抜くというのが、スタート地点ですね。 もちろん、歌唱力や表現力そのものの素晴らしさは、歌に乗る魔力量や質の良さに繋がります!しかし、載せようとする魔力の属性と、歌の持つ性質が同じほど、相乗効果で歌に載る魔力が高まるのです!」 学園長の説明を聞いてなんとなく理解した者、まだイメージを掴めない者と様々な様子のメンバーがいる中で、つまり、とアレータが口を開いた。 🐠「去年までは『歌』そのものの完成度……歌としての美しさを競っていたはずだけど。今年はそれだけではなく、どれだけ精密かつ強力な魔力がそこに乗せられるか……ということだね?」 🕰「ええ。その通りですアイクウォラ君。去年までの合唱祭では、歌としての統一感・世界観を素晴らしい歌唱力で表現することで、自ずと素晴らしい魔力が宿っていました。 しかし!ただ歌うことと、歌うことで発揮される属性を理解し意識した上で歌うことでは、全く異なります。歌への理解を深めることにつながり、より研ぎ澄まされた魔力が込められるのです。 グレートセブンに奉納する『Corrupted hymn』を素晴らしいものにするためには、歌、そして魔力…その力と繊細さどちらも兼ね備える必要があるのですよ」 👁🗨「なるほど。……ここに集った我々は、おそらく学園の中でも強い魔力を持つものたちだろう。その力を歌声にのせるとしたら、……一筋縄ではいかないな。しかし、全力の魔力を歌に乗せることが出来たら……それをこなすことができたグレートセブンに勝るとも劣らない、ということか」 🐠「君は特にそうだろうね、ヒイエ。その底知れない魔力が込められた歌を、僕はぜひ浴びてみたいよ」 🕰「こ、怖いもの知らずですねえ。 えーそれでは、各属性グループを発表します!呼ばれた方々は、早速作戦会議に移ってくださいね。」 ……つづく。 Next story... 『2.第一章(story02)』 ⏩ https://nana-music.com/sounds/064189c7 _____ 🔥💧🍃 𝙏𝙝𝙖𝙣𝙠 𝙮𝙤𝙪 !! 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