Twinkler+Twins

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"ミレイちゃんは天才だけど、あなたは全然そうじゃないよね。出来損ないの妹っていうカンジ？" ____お姉ちゃんより劣っていると言われる時、あたしは毎回、あなたはお姉ちゃんの妹にふさわしくないと言われるかもしれないと怯える。 お姉ちゃんは、努力をして天才と呼ばれるまでになった。 だからお姉ちゃんは"最初からなんでもできた"天才ではない。 敢えて天才という言葉を使うなら、"努力の天才"だ。 お姉ちゃんは天才っていう言葉が嫌いで、天才と言われると不服そうに少しだけ眉を顰める。 でもそれはメンバーも両親も周りの人も知らないし、お姉ちゃんのお友達も、お姉ちゃん自身も知らない。 あたしにだけわかる、"今の"お姉ちゃんの感情の機微。 昔はあたしよりわかりやすくて、すぐ泣いたり嫌な時はほんっとーに嫌そうな顔をしたりしていたから、こうやって感情をうまく隠せるようになったのもお姉ちゃんの努力の成果のひとつだ。 そうやってなんでも努力して天才と呼ばれるまでになったお姉ちゃんと比べて、あたしのほうが劣るのは当たり前だ。 だから…、大好きなお姉ちゃんの妹にふさわしくないって言われないように、今までできることはしてきた。 比べられて劣っていると言われるのは慣れているけれど…あなたが妹だなんてふさわしくないと言われるのだけは嫌だったし、何より怖かった。 だけど…、この世界に来る1ヶ月くらい前から、なんだか毎日がつまらなくなっていた。 大好きだったはずのおしゃれも、お姉ちゃんの妹としてふさわしいものを、と考えるようになって、いつしか自分が好きでよく通っていたブランドのお店に行かなくなった。 そして、その後に入った「あたし自身をもっと深掘りしたい」というインタビューの仕事に向けて、こういうことを答えよう、と予め考えていた時。 「………あれ…？あたしって、何が好きだったっけ…？お姉ちゃんとの違いって…なんだったっけ…？」 あたしは"自分"より"お姉ちゃんにふさわしい妹"であることを優先していたことで、"自分"がわからなくなってしまっていたことに気がついた。 途端にぞわりと寒気がして、震える手を我慢しつつなんとかマネージャーさんに連絡をしてインタビューの仕事を断った。 その翌日、あたしはこの世界に来ることになった。 自分がわからなくなっていたとしても、あたしがお姉ちゃんにふさわしい妹でいなければふさわしくないと言われてしまうし、自分を見失っていることがわかってしまうような生半可なパフォーマンスはできない。 あたしは知らずのうちに無理をしていたらしく、ソロライブを前に少し体調を崩しがちになっていた。 ___コンコン。 控えめにノック音がして、ベッドに横になっていた身体を起こす。 「レイナ、起きてる？入っても平気かしら」 お姉ちゃんの声がした。 「うん、大丈夫だよ」 お姉ちゃんはゆっくりとあたしのベッドまで来て、あたしの手を握った。 「…お姉ちゃん？」 「ねぇ、レイナ。最近どうしたの？無理をしているように見えるのだけど」 「えっ」 「…あなた最近思い詰めたような表情をしていたから…。それに、インタビューを断ったのも少し気になっていて。…私に話せることなら、話してみてくれないかしら？いつもあなたに助けられているから、私もあなたに恩返しがしたくて…だめかしら…？」 あたしは溢れてくる涙を抑え切れず、すべてをお姉ちゃんに打ち明けた。 お姉ちゃんはとても真剣に聞いてくれて、にこりと笑って一番欲しかった言葉をくれた。 「レイナはレイナでいいのよ。ふさわしいも何も、あなたは私の唯一無二の大切な妹なの。他人がどう思おうどう言おうと関係ないわ。レイナらしくしていていいのよ」 お姉ちゃんはあたしが落ち着いた後、あたしがよく通っていたブランドに近い服が売っているお店に連れてきてくれた。 「前に歩いていた時に見つけてね？レイナを連れてきたいなと思っていたの」 お姉ちゃんは、あたしの好みだった服を選んで見せてくれて、あたしはだんだんどんな服が好きだったかを思い出し始めた。 「お姉ちゃん、今日は本当にありがとう。少しずつ自分を取り戻しながら、新しい自分も探してみようと思う。…あたしも自立しないといけないからね」 「ええ、頑張ってね。…でも、自立はちょっと…寂しいわね…」 「へっあっ自立って言っても、お姉ちゃんからじゃないよ？お姉ちゃんにふさわしくなろうとするあたしからってこと！」 あたしはお姉ちゃんの手を取って笑った。 「あたしはこれからも、お姉ちゃんと一緒にいろんな景色を見たいからね！」 ____その日、輝きを失くしていたあたしの日常が、また少しずつ、輝きだした。 ソロライブ当日。 あたしは衣装の最終確認を終えてぐっと体を伸ばした。 「…よしっ」 ここからお姉ちゃんにふさわしいレイナではない、あたしらしいアイドル・レイナが始まる！ Next→レイナソロサウンド