nana

分かってよ、分かってよ
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何処だって連れていく…メアリの胸は張り裂けそうだ。コハクが今日は仕事に取られることも無く、ずっと横にいてくれる。目の前で尾の長い小鳥が2羽、仲睦まじく飛んでいる。たったこれだけでナイーブになってしまう。哎ー!今のメアリもあの小鳥のようにカップルっぽく見えル?ハズカシ!でも、ただの友達に見えたら悲しいよな気ガ…って哎ー!頭グルグルネ! 「お、おい…メアリ??顔赤いぞ?熱中症…か?」 陽射しを遮るように手をかざし、メアリのおでこを触ろうとするコハク。はっと我に返ると、そんな彼の顔が近づいていた。 「わわわわ!無問題!!大丈夫ヨー!」 アワアワと暴れるメアリ。ヤシの木の下の2人を見つけて、島民らしき人が2人に声をかけた。 「ハーウェ!デートかい?お似合いだね!」 友好的なバドン島民の何気ない挨拶…しかし、今それを最も気にしている彼女には十分過ぎる言葉だった。お似合いのお二人さん!デート!?どんな緊張する舞台でも、どんな失敗したショーでもここまで頭が真っ白になった事はない。 「メアリ!?なんかダメそうだなぁ…あ、あっちに店がある!歩けそうか?少し日陰で休もう」 歩ける…歩ける…と答えたような気がする。…やっと一息ついて頭が働く様になった時には既にスイーツショップの椅子に座らされていた。隣には心配そうに顔色を伺うコハクが座っている。 「食べれそうか?冷たい物を頼んでみたんだ…もし無理なら俺食べるし、直ぐに宿に帰ろうな」 頭を優しく撫でる。ドキドキのシチュエーションだが、帰るという言葉が妙に刺さった。 「帰らないよ!大丈夫、メアリは元気だから!」 一瞬メアリの言葉に目を丸くしたが、とりあえず返答出来たのでコハクは胸をなで下ろした。そこへフルーツがどっさりと飾られた白濁色のゼリーのようなものが運ばれてきた。 「うぉ!…こんなにでかいなんて…豪華だけど…一つだけしか頼まなくてよかった!」 金髪と黒髪のメッシュにひょっこりはえる虎の耳が興奮でピンとする。愛しく見つめるメアリ。 「一緒に食べようぜ!…あ、無理しなくていいからな!俺こう見えて甘いの好きなんだ!」 ニッと嬉しそうに笑う。そしてメアリの器に少しだけ盛って手渡した。 「ありがとう」 おう!と笑うと、待ちきれずに自分の分をパクリ!とするコハク。おお?ゼリーじゃない…!?不思議な噛みごたえ!フルーツうま!!嬉しそうにはしゃぐ。メアリもつられて一口食べるが、緊張のせいか味がよく分からない。コハクと不意に目が合った。メアリは微笑んで答えた。 「お、美味しい!不思議な食感だね」 メアリの言葉にまた目を丸くする。今度は一瞬ではない…ハッキリとメアリを見据えるコハク。いけない!意識しすぎて、彼と居たくていっぱいいっぱいになってる自分が見透かされてる…!メアリはもっと浮ついた笑顔を貼り付けた。すると、コハクもつられて笑いだした。ほっとするメアリ。コハクは微笑みながら口を開いた。 「メアリ、元々はキリエに居たんだもんな…児童院に居た時そんな沢山喋ってないけどさ…その時みたいな喋り方だ!…あ、あの時から気になってたからさ…へへ。その時のメアリに会えたようで嬉しい」 顔を真っ赤にして俯いて笑いながら、恥ずかしそうに頭を搔くコハク。はは…と笑い終わると長く息をついてまっすぐにメアリを見据えた。 「俺は…メアリの生き方も、考えも、その変化だって…好きなんだ。初めて見た時、すっかり異国の人みたいだった。話し方も変わってた。でも、メアリだけの『大好き』を見つけて楽しんできた変化で…その芯はやっぱりメアリなんだ。より自分らしく綺麗になったって思うから…」 虎のしっぽが優しく揺れる。 「無理しなくて大丈夫だぞ?俺が横に居たら楽しめないなら気にせず言ってくれ。俺達、幼なじ…」 「哎ーー!馬鹿馬鹿馬鹿!!コハク馬鹿ネ!どーしてそんな時に幼なじみってゆーカ!?」 メアリの言葉に目を丸くする…今日最も驚いたまん丸の目。しかし直ぐに困惑の表情に変わった。何故ならメアリは泣き出してしまったからだ。 「コハクが!困た時助けてくれタ!悲しい時慰めてくれタ!寂しい時横に居てくれタ!メアリの『欲しい』をいつもくれタ!!好きって言てくれタ。そんな事されて…こんなに優しくされて…好きにならないなんて無理ネ!!気づくヨ!馬鹿ー!」 わーん!ついに大泣きしだしたメアリ。真っ青になりながら慌てるコハク。オドオドしつつ真っ赤な泣き顔が人に見えぬようメアリを抱きしめた。 「メアリ、沢山沢山好きヨ!でも、どーしていいか分からないヨ!どう伝えたらこの気持ち伝わるカ?考える程ちゃんと喋れないネ…何も感じれなくなるヨ…幼なじみなんて言わないデ…メアリは」 目を開くと大きな肉まん…え?キョトンとするメアリ。コハクはメアリの頭をポンポンと撫でた。 「いっぱい泣いたら腹減るだろ?嘉嘉の街を勉強して、作ってみたんだ!…本当は船で2人で食べるつもりだったんだけど…お、俺さこんな事しか出来ないけど…国の味に近いかな?食べてみてくれよ」 なんでこのタイミング?ムスッとしつつ一口…さっきと違い味がよく分かる。嘉嘉のそれとは少し違うが、懐かしい国の料理に少し心が和んだ。ほい!次はこれ!と先程のスイーツをコハクはメアリの口に運んだ。 「…甘くて…美味しいネ…」 ムスッと怒ったままだがモグモグと食べる。それを幸せそうに見つめるコハク。つられて微笑むメアリ。さあ、まだデートは始まったばかり、本番はこれから。 「ごめん。それは俺から言いたいんだ。だから…」 店を出るメアリの背中にコハクは小さく呟いた。 ‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦ デートに出かけてください。このアンサーを出す際、行き先を指定する事。(複数可)

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