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朔間椿の独白①
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俺の家庭は片親とかじゃなかったけど、特殊だった 俺が小学校の高学年に上がる頃には 広い家に俺ただ1人だけになっていた まず最初に父親が浮気をした 俺を産んで数年はまだ両親の仲は良好だったと思う 父親が浮気をしたあたりには両親の仲は冷めきっていた 浮気をした父親はしばらくすると家を出ていった 母親はそれを見て見ぬふり そして俺にこう言うんだ 「あんたがいればつなぎ止められると思ってたんだけど、ほんと役立たずね」 って 毎日毎日父親が出ていった時間と同じ時間に 俺の心も麻痺してたんだと思う いつしか何も感じなくなっていった そしてある日の夕方 俺が学校から帰ってくるといつもいるはずの母親の姿がなかった なんとなく、わかっていたんだと今なら思う その日の朝は、いつもよりもちょっと豪華な朝ごはんが出たし 母親も心做しか楽しそうだった だから、俺はきっと子供ながらに何かを感じていたんだと思う ただ、もしかしたら新しい出会いがあって 新しいお父さんができてまた幸せな家庭を築けるんじゃ無いかと期待していた 期待していたからこそ、裏切られたと言う絶望感が凄かったのかもしれない その日は夜が明けるまでリビングで母親の帰りを待った 帰ってこないことはわかっていたよ テーブルの上に 『お母さんはあんたのお母さんじゃなくなるからもう帰ってこない。お父さんももうあんたのお父さんじゃないから帰ってこない。あんたが成人するまではお金を振り込んでおくからそれで生活しなさい。私は一足先に幸せになるわね』 って書き置きがあったからね しかもご丁寧に漢字にフリガナまでふってさw 通帳と印鑑とカードも置いてあったね さすがに分かっていたけど理解が出来なかったんだ 待ち続けても帰ってこないことなんて、1時間で分かっていたけど それでも子供だった俺は、母親だけは帰ってくるって最後まで信じていたよ もちろん帰ってなんて来なかったけど それから俺の地獄が始まった 続く

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