「Happy white day!!!」(ケネディ)
秘密結社 路地裏珈琲
「Happy white day!!!」(ケネディ)
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来てしまった。ついに、きてしまった。
小生の部屋のポストに、なんとも愛くるしい箱が届いたのであります。バレンタインデーの当日、井上豆助、齢36歳、3年ぶり何度めかのチョコレートなるものを頂戴し、歓喜に打ち震え“おおう.......”の一声しか発せぬまま、その箱を手に床にうずくまった次第。
この大変にハイカラでメリケン風な模様が一面彩る様子から察するに、開けずとも贈り主の想像は容易くてございました。そう、ご近所のケネディ女史に違いない。彼女と言えば、これは決して下心故に申し上げている訳ではなく、事実であるのですが、所謂出るとこでて引っ込んでいるナイスバディで見目麗しく、これまた口をひらけばからりとした性格で愛嬌のある女性。男子諸君の憧れと言って間違いない、素敵なお嬢さんなのであります。聞くところによると、イトウ氏のポストには本人そっくりのチョコレートの塊が頭からぶち刺さっていたとのことで、どうやら彼女が今年他の男衆に贈ったチョコレートは、皆無。
勝ち申した。何に勝ったのかはよく分からねど、なんか勝ち申した!!
ああ、なぜこんな花子さんに身長の件でフられた小生のようなチンチクリンの小男に!?彼女のようなお嬢さんが!?小生の愛くるしさにあてられてしまった!?そうだ、このあいだ食堂で順番待ちしていたら後ろからトントンされた、あの時彼女に
「ワーオまめちゃんカワイイネー!マメシバ知ってるー?まめちゃん二文字一緒だけど親戚?」
って聞かれた。ものすごく適当に絡まれたと思って居たけれど、あれはもしやこの布石であったか...!?
いや、左様に甘くはなかろう、もしや見返り重視!?ええ、ええ、喜んで貢ごうではございませんか、お任せいただきたい、財布の用意はできている。小生金には不自由していない、なぜなら貢がせてくれる相手すら居らぬから。畜生め井上豆助、寂しい男。
いやまてまずは、心を込めたお手紙をしたためるところからであろう。物はものとして、感謝の気持ちこそ一番に返さねばならぬと存ずるぞ。
いやそれよりも更に大前提として、小生まだ、箱を開けてチョコを食しておらぬ事に気がついた。食おう。話はそれからだ、舞い上がりすぎて、先にうずくまって以降そのまま床に伏してひとりで悶々と自問自答を繰り返すばかり。
小生、今勇気をふりしぼり、星条旗の模様が麗しい箱を、開けたのであります。
ああ、そこには、ましゅまろやナッツ、ドライフルーツが所狭しとぎっしりチョコレートでコーティングされて詰まり詰まった、素敵なブロック状のナッティバー的な生チョコケーキ
......の上に力強く書かれた、“変”の一文字。
......変。
ああ、見えるぞ、脳内で、たくさんのケネディ女史が歌って踊って、てへっと舌を出している。
小生はしばらくそのまま、甘い甘い香りのそれを見つめ、こう決心したのでした。
「...とりあえず、お返しには辞書をつけよう」
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「まめちゃんせんぱい結局なに買うたったん」
「帝国ホテルのクッキーの詰め合わせと、広辞苑を贈った」
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