「お客さんからのチップ」(柚月)
秘密結社 路地裏珈琲
「お客さんからのチップ」(柚月)
- 39
- 7
- 0
「寝るって、そんな単純なこと……」
「効果あるの、って思うのでしょう? あるんですよ」
だからこんなカフェイン入ってるもの頼まない方がいい、と言って店員さんはオーダー票を勝手に書き換えて厨房に渡した。
「クラスメイトにからかわれたことなんて、きっと眠ったら忘れられますよ」
「……俺、結構根に持つタイプなんだけど」
まあまあそう言わずに、と早くも出来上がったココアと頼んでいないクッキーをトレイにのせて持ってきてくれた
。
「眠るのってすごいことなんですよ。寝てる間に怪我は修復されるし、記憶も整理される」
「まあ、それはわかってるけど……」
「つべこべ言わず、家へ帰ったらお風呂に入って、すぐに寝てください」
閉店間際に滑り込んできたことを怒っているのだろうか、店員さんの言葉はどこか素っ気ない態度にもみえる。……それは申し訳なかったけど。
「わかったよ、試してみるよ」
「いい子いい子、寝る子は育ちますから」
「……馬鹿にしてる?」
「いいえ、別に?」
すました表情の彼女からは、本意が読みとりづらい。からかわれているのか、それとも……いや、多分残業になったこと怒ってるだろこの人。もしかしたら俺よりこの人の方が根に持つタイプなんじゃないか……。
「ほら、わかったら早く帰った帰った」
……そうでもないか。店員さんの顔には純粋に夜出歩くことへの心配がうかがえた。
「ありがと、話聞いてくれて」
「どういたしまして」
チラリと伝票をみると、ちゃっかりクッキーの代金が記入されていた。奢りじゃなかったのかよあれ、やっぱり根に持ってるじゃねえか。お姉さんは素知らぬフリして、少しだけ笑った。
× × ×
「面白消しゴム(中華)」をもらいました。
ラーメンと小籠包とチャーハンの消しゴムが3つセットで包装されています。なんとなく貯め込んで結局使わない未来が見えたような気がしました……
コメント
まだコメントがありません