nana

黒のサイレン
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────── 黒い羽は螺旋に舞った 私が美しさを知ったのは きっとあの冬の日からなのだろう ───────── 靡く黒髪の下 白く覗いた横顔 そこにはスラリとした 背の高い女性が一人 水平の先を遠くに見つめ 静かに佇んでいた 生も死もなく 透明な輪郭の意思となり 群れから離れた 渡り鳥 そんな風に感じた ─────────── 日も落ちようとする狭間の時間 彼女はこちらに振り返りほんの一度だけ呟いた 凛とした歌声 そんな風に聞こえた ─────────────── 私はただ見守る事に身を委ねていた 彼女のただ一つの言葉も 抱き貫こうとする想いも 私にはとても理解し受け止められるものでは無いと そんな風に ────────── 彼方の闇に浮かび上がったひとつの船灯を 見送るように 零れる哀の旋律は ただ去りしものへと沈んで逝く ───────────── 台本 黒のサイレン yonaga 歌 the world of midnight Natsuさん 朗読 yonaga ───── ホメーロスはセイレーンのその後を語らないが、ヒュギーヌスによれば、セイレーンが歌を聞かせて生き残った人間が現れた時にはセイレーンは死ぬ運命となっていたため、海に身を投げて自殺した。死体は岩となり、岩礁の一部になったという。しかし声だけは死なず、現在でもある時期になるとセイレーンの歌声が聞こえ、船員がその声を聞いた船は沈没すると言われる ──Wikipediaより抜粋

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