「秘密結社 路地裏珈琲 会員No.9」
秘密結社 路地裏 珈琲
「秘密結社 路地裏珈琲 会員No.9」
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星干しさんのアンサー↓
https://nana-music.com/sounds/04eb0571
僕は、いつもどおり、全くブレる気配のない彼女のシルエットに、ちょっとだけ笑ってしまった。
スッと背筋を伸ばして、机に肘をつき、手を組んでいる彼女、星干しは、静かに順番が巡って来るのを待っていた。
初めて会った時から独特のマイペースな雰囲気で、僕に主導権を握らせない力強さがあって、時々僕の問いかけに持論を展開すれば、確固たる己の哲学をぶつけてきたし、それに妙な説得力があった。
そっと後ろから近寄ってポットを差し出したら、彼女はこちらも見ずにスッとカップを引っ込めてしまった。遅れて追ってきた、瑞々しい好奇心でいっぱいの瞳の中で、多分質問が渋滞している。
「......これからいくらでも、君がびっくりするような奇妙な世界を見せるつもりだよ。いつでも遊びにおいで」
「マスター。この世の不幸を全て敵とみなし、幸せを振りまく任務に臨むとして、私達は誰の物差しで幸不幸を選別するの」
「僕だ。そして、時には君でもある。これは慈善活動じゃない、僕が掲げた野望、エゴさ。そして、幸せの定義を知るにはまず、本当の幸せが何なのか......自ら味わって知る必要があるだろうね。そう、幸せになる覚悟が必要」
「なるほど、先は随分と長そうだ」
集められた10人の多様性の中で、彼女は何か、自分なりの新発見にたどり着いてくれるだろう。それがいつになるかは見当もつかないけれど、僕は、始めの一歩を踏み出そうとしている彼女の手を引いて、その時を待つ。
ちょっと間が空いて、不意打ちで返ってきた少女っぽい笑顔に、僕は少したじろいだ。
「マスター」
「はいはい」
「......お砂糖を2つたのむよ」
寄越されたカップになみなみと注いだ珈琲。
角砂糖が、その底へ真っ直ぐに沈んで行った。
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