
同田貫正国
ごめんなさい。 ごめんなさい、もしかしたらいるかもしれない、巴形薙刀。 私はどうしても、貴方の方へは行けない。 私一人は危な過ぎる。もしかしたら、この紙は罠かもしれないのだから。今、一番信用出来るのは、同田貫だけなのだから。 でも貴方の伝えてくれた言葉は、無駄にするつもりは無い。 ゆっくりと、本に手を伸ばす。 また、紙が落ちる。 『これを読むかもしれない主へ 触らぬ神に祟りなし、知らぬが仏、という言葉は、よく知っていると思う。 だから、自分の身を優先的に守れ。不安ならば逃げろ。 我等の身は複数あっても、主の身は一つしかない。大切にするといい』 ────分かった。 大切にするつもりだ。言われなくとも。 物音の正体は、悪霊かもしれない。 仲間かもしれない。 何も無く、単なる風が物を落としただけかもしれない。 シュレディンガーの猫、という言葉を聞いたことがある。 なら私は、この箱の中にある薙刀の猫を、死んだものとして考えよう。 彼はきっとそう望んだはずだ。いないものとして認識することを───。 ───私が生きて逃げることを望んだはずだ。そう思い込ませてもらう。 同田貫を待とう。 彼がいないと、逃げようにも逃げられない。 → https://nana-music.com/sounds/0448c7b5/
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