nana

同田貫正国
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「少しぐらい助けてくれたっていいじゃんか、この胸騒ぎを取るぐらいは……」 御手杵は、いつもと変わらない調子の少し気だるげな声で、こちらへと助けを求めているようだった。全速力ながらもある意味落ち着いた感じの声は、凄まじい矛盾と、おぞましさを私の中で生んでいた。 「…………ちっ」 同田貫は少し荒くなってきた呼吸と、聞こえなさそうなほど小さな舌打ちと共に、自身を一振り。消火器を破壊し、煙幕を作り上げる。 だが作り出した本人も承知しているように、御手杵はそれをものともしなかった。むしろ目の前に直角の壁があるかもしれないと言うのに、スピードを弱める気配を見せない。見えているのだ。彼は槍の中でも、偵察に長けていた。人工物から出来た煙幕など、大した抵抗にもなりはしなかった。 「…………ッ」 「なんとか言ってくれ……ッ」 御手杵の槍が私に迫る。 あまりにも勢いのある一突きは、私の手が反射的に私を守ろうとするのに十分過ぎたと言える。いや、これは言い訳なのかもしれない……そのせいで、日記は一冊を除いてダメになってしまった。勢いがあるが走りながらで狙いが甘かった。それを見抜けず、日記のほとんどは槍の餌食になった。 「…………ッ……!」 「…………あぁ?何処に行った…………助けてくれよ、なあ…………」 距離からして確実に肉薄されていた。 妨害はあまり良い結果を出さないが、奇跡的だった。丁字路に消火器を置いておいたのは、政府に是非とも感謝したいところである。進んだ先の部屋に逃げ込めたうえ、御手杵は別の道を通っていった。 今の彼らに対話は通用しない、それどころか射程距離なら確実に殺される。特に私は。 足音が遠くなり、一息つけるようになるまで、かなり時間がかかったように思う。 『あいつはもうダメだ』 『たすからない?』 『少しまえにのみこまれたらしい なおせない おかしくなったまま』 無言が続く。私は文字でも、声でも、返事が出来なかった。 → https://nana-music.com/sounds/0448c746/

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