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同田貫正国
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「いきますよ」 「……ッ」 今剣は一気に突進し、距離を詰める。短刀の欠点である射程の短さを補う動きだ。だが同田貫も負けてはいない。その防御の速度は、今剣の一撃を上回っている。 攻撃を弾かれ、一瞬の怯んだ隙を同田貫は見逃さなかった。今剣の足首を掴み思い切り片手で投げ飛ばす。 「がぁッ、ぐっ」 「近寄ってみろ!今度は、その腕を切り落とす」 後ろからでも、彼の殺気は感じ取ることが出来た。触れるもの全てを傷つける、ビリビリとした明確な戦意が、彼の周りに充満している。 「……ちかよるのは」 「あァ……?」 「ちかよるのは、ぼくじゃない。あなただ」 ───足元が歪む。 空間が、空気が、急に歪み始める。 まるで本丸が生きているように、廊下がゴムのように伸び縮みする。柱は脈動し、障子の紙は破れる。目眩がする。吐き気も。 「なに、これ……」 「……ああ全くそういうことかよ。最初っから四面楚歌だったってわけか」 「─────とどめです」 眩さに目を少しの間閉じて、その間に聞こえたのは、今剣が、今剣の中のものが、静かに勝利を口にした言葉だった。 目を開ける。 周りを見回す。 「…………ッ…………グ……」 同田貫の体は、貫かれてはいない。 だが確かに、彼の足元には、おびただしい量の血が溜まっている。 「もう、やすみなさい。どうたぬき」 「………………」 同田貫は、膝から崩れ落ちた。人の死の瞬間と、同じように。 今剣は、それを静かに眺めた後、こちらを向く。赤く輝いている。 ああ、今度こそ。 今度こそ、殺されてしまう。 私は、結局元には戻せなかった。 「……さあ、いきましょう。あるじさま」 そう語りかけてくる声は、次の一声を放つ前に遮られた。 「…………え……?」 「…………勝手に、殺すなよ」 「そん、な……あなた、たしかに───」 「───死んだだろ、ってか?俺達が死ぬ時には……あんな倒れ方、しねーじゃねえか」 同田貫の本体の刃は、今剣の身体を完全に貫いていた。同田貫は腹をやられている。今剣は、背から腹にかけて、一撃を喰らわされた。 一瞬の報復劇だった。 → https://nana-music.com/sounds/0448c637/

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