
同田貫正国 Nomal End2
あれから暫くの間、本丸は暗くなった。 短刀達の多くは涙を流し、三条の面々はなんの反応も示さないように見えて、動揺が少しだけ見えた。岩融のみが、普段と変わらないようにも見えた。 今剣は、あの事件で折れてしまった。 何振りかは同田貫を責めた。 どうして殺したのか、折ったのか、と。 違う。同田貫が悪いのではない。私だ。私が殺すなと伝えていれば、結果は違っていたはずだ。 私が責任を負わなければならないのに、同田貫が責められている。複雑な気持ちを持っているところに、岩融が現れた。 「少し良いだろうか」 「……どうしたの」 「何、少し茶でも飲まんかと思ってな」 言われるがまま、縁側で二人きり。 正直、かなり気まずい。岩融からすれば、私は友であり家族である者を殺した者である。岩融から来た言葉は、予想を大きく裏切ってくれたが。 「感謝しなければな」 「……え?」 「今剣のことだ」 感謝など、今の私が受け取っていいものでは無い。 「私は、感謝されることなんてしてない。同田貫が責められることが多いけど、私が責任を取るべきなの、本当は」 「そういう話をしておるのではないのだ。俺も今剣の異常には気づいていた。だが何もしてやれなかった」 「…………」 「苦しみを受けてなお、隠し続けていたのだ。問うたこともある。だが奴から返ってくるのは、問題は無いという言葉のみでな」 今剣について、岩融から色々と話を聞いた。一人で苦しんでいたのを、黙って見ていることしか出来なかったこと。笑顔を浮かべてはいたが、恐怖が底にあったこと。普段は一人で眠っているのに、ある日から同じ布団で眠るようになったこと、など。 「俺が出来たのは、あいつから少しの間不安を遠ざけてやることだけだ。解決にはならん。それを……主と、同田貫がケリをつけてくれた。尻拭いをさせたようで、申し訳ない」 「いや……良いの。そんな言葉を貰うとは思わなかった。私も……」 「……謝ろうとは思うなよ。少しばかり、怒りもあった」 彼の言葉は、それで終わった。茶を飲んで、お辞儀と共に別れて、それきり。 下手をすれば殺されていたかもしれない。岩融には、当然私達への怒りがあった。何故殺したのか、と、そう問いたかったに違いない。 「もしもし、私です、████の審神者です」 「ええ。異常の件はもう其方にもお伝えされているかと思います」 「その事について、少し提案が……いえ、要求したいことがあるのですが」 私が出来ることは、今私に出来るのは、このぐらいしかない。 「今剣の葬儀をしたいのです。私一人で。ええ、形骸化してるのは分かっておりますが……方法など、教えて頂けませんでしょうか」 どうか、この本丸で育ってきた今剣に、安らぎが訪れますように。 *Nomal End2 * continued? → https://nana-music.com/sounds/040bbbe4/
