
山姥切国広 True End
───待って。 そう口にした言葉は、届かない。 呆気なく宙に消えた声に振り向きもせず、山姥切は刀を抜いて離れの戸を開ける。 垣間見えたそこには、三人の誰か。 ───待って!! 無情にも、戸が閉められる。 その向こうから、直ぐ様鋼のぶつかり合う音が聞こえた。 だが、いくら山姥切と言えど相手は三人。 ただで済むはずがない。 駄目だ。 駄目だ、駄目だ……! 彼が折れてしまう、それだけは絶対に……! 考えろ、考えるんだ。 私にはそれしかできないのだから。 考えて……! 『───やろうと思えば空間を』 はっとした。 そうだ、これだ。 これが、彼を助ける唯一の。 私は霊力を最大まで高めて辺りを探った。 探せ、探せ。 私だって腐っても審神者、あのかみさまたちの主だったのだ。 ───できないなんてことないっ……! 一縷の、望みの糸を引いた。 途端、なにかが砕ける音がした。 私は急いで離れの戸を開け放つと、勢いよく外へ出る。 外では、刀を持った誰かと傷だらけの山姥切が呆然と空を見上げていた。 私もつられて空を見ると、そこでは空が散っていた。 桜の花弁のように、きらきらと、ひらひらと。 空のはなびらが散った。 暗雲の立ち込める空が、少しずつ光に飲まれる。 そして、私の意識は遠くなる。 「───主!!」 気付いた山姥切が私へ手を伸ばした。 けれど、私はもうその手を掴めない。 これでいい、これが正しい歴史だ。 「山姥切───、」 ───お前の主でよかった。 さようなら、私の大切な刀たち。 * True End * Thank you for playing! → https://nana-music.com/sounds/04476b1b/
