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山姥切国広
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途端ぶわっと沸き上がったのは、きっと怒り。 私は山姥切の肩を思い切り殴った。 当然彼にはほとんど堪えていないようだったが、構わずもう一度殴る。 ───ふざけるなっ……! 血を吐くような思いだった。 自分の代わりに彼が、私の初期刀である山姥切が消えるなど、あってはならない。 私ひとりのためにこのかみさまを消してはならない。 優しいから、だからお前には生きていてほしい。 頼むから、お前も、他のみんなも。 ───私を忘れて、生きることを選んで……。 どうか、どうかわかって……。 そう言って、すがった。 「主……。」 僅かに揺れた山姥切の声が聞こえる。 私はそんな彼を睨み付け、もう一言なにか言ってやろうと口を開いた。 ───バキンッ!! その瞬間、私の声を掻き消すような歪な音が響く。 はっとして二人で目をやれば、離れの戸が無惨にも破壊されていた。 そしてその破壊された穴からは、赤い目の刀剣がぞろりと三人。 思わずひっと声が漏れた。 「くそっ……!」 山姥切は直ぐ様切り結ぶ。 だが、相手は三人。 それも私を庇いながら戦っているのだ。 「ぐっ……!」 その体に、傷ができていく。 ───……やめて。 溢れた声は、どこにも届かない。 やめて、やめて。 彼は私の初期刀で、私の大事な、本丸の主戦力で、近侍、隊長を、私、 ───私の……! 瞬間、空が散った。 桜の花弁のように、きらきらと、ひらひらと。 空のはなびらが散った。 「ここまでだ。」 それは、誰へ言ったのだろうか。 山姥切は静かに刀を降ろすと、私を振り向いて笑った。 「主───、」 ───あんたの刀でよかった。 → https://nana-music.com/sounds/0442ed24/

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