
山姥切国広
だめだ。 まだ誰か追いかけてきているかもしれない。 石切丸に、赤い目の誰かに見付かればどうなるか……。 恐怖から尚冷静さを欠いていた私は、逃げなくてはと無理矢理足を動かす。 けれど、ずっと走り続けて疲れはてた体は、思う通りに動いてくれなかった。 足が縺れ、その場でガクッと崩れ落ち……。 「───主っ!」 その身を誰かに支えられた。 間近に聞こえた声に驚き慌てて顔を上げると、そこには険しい顔をした山姥切がいた。 咄嗟にその腕を振り払いそうになったが、彼は私の肩を掴むとまっすぐに私を見て言った。 「落ち着いてくれ、主。」 その目が、よく見知った翡翠の瞳であるとわかり、私はようやく落ち着いた。 彼は、私の山姥切国広だ。 山姥切にここがなんなのかと問えば、考えた末に「わからない」と返された。 「だが、とにかくここに長居するのが得策ではないことは確かだ。早く出口を探すぞ。」 言って私の手を引き立たせると、山姥切は一度ぐるりと辺りに目を配る。 その目が戦場でのそれであることを見て取るに、周囲の偵察をしてくれたのだろう。 頼もしい限りだ。 お陰でようやく頭が働き出し、私は山姥切へ「転送ゲートを探そう」と提案した。 本丸からの出口となれば、転送ゲートしかないだろう。 私の言葉に山姥切も頷き、私たちはともに本丸の探索を始めた。 → https://nana-music.com/sounds/0442ec44/
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