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明石国行
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「ッ!!」 刹那、凄まじいスピードで明石に肉薄した今剣が 明石の頬に一筋の赤い線を作った。 「さがりや!!!」 「きゃっ!!」 突然首根っこをつかまれ、部屋の奥へと投げられる。その瞬間に今剣も地面へ着地し、もう一度明石へ刀を振り下ろしていた。 ──強い。この本丸で初鍛刀だった彼は、今や他の短刀達とは一線を画していた。 「おーこわ、ほんま元気やなあ。あんさんも……外の奴らも。」 「外?」 ちらりと外を見てみると、待機していた蛍丸と愛染の前に大勢の刀が集まってきていた。 「あ、明石!!蛍丸達が…!!」 「心配すんなって主さん!俺達でなんとか時間稼ぐから!」 「そうそう、だから」 「早く蹴りつけろよ国行!!!」 その言葉を皮切りに二人が刀達の群れに飛び込んで行く。 圧倒的な数の差に不安を覚えるも、今はこちらだと前を見る。 「明石!早く抜刀を!」 「……。」 「明石…?」 攻撃を繰り返す今剣と、それを避け続けるだけの明石。しかも刀を抜いてさえいない。 仲間相手に抜刀することを戸惑っているようには見えない。だというのに、抜刀する気配を微塵も感じさせないのだ。 「ぬかないんじゃなくて、ぬけないんです。ねえ、あかし?」 「……バレとったんかいな」 「えっ…?」 目の前の会話に思わず呆けた声が出る。 どういうことかと二人を交互に見つめると、今剣が攻撃の手を休めてわらった。 「じんじょうじゃないほどのちのにおいがしますよ、あかし。」 「血の、匂い…?」 「あるじさまがかわいそうではありませんか。いいかげんそのれいりょくのまくをけしたらどうです?」 「……まあ、ここまできたらしゃーないわな。」 言うやいなや、パリン…と薄い硝子が砕け散るような音と共に鼻を刺すような錆びた匂いが充満した。 みれば、先程までなんともなかった身体が深紅に染まる。 まさに満身創痍といった怪我の明石がいた。 「そんな……だ、だって、さっきまでなんとも……!どうして……!!」 「……最初、蛍と国俊が襲われかけて庇ったんすわ。その時にぐっさぐっさと。あー、怒ったんやったらあとでいくらでも謝りますんで。」 「ちがう……ちがうの…!どうして言ってくれなかったの!?そんなに酷い怪我してたのに!!」 情けない、気づいてあげられなかった自分も 今こうやってそれをぶつけている自分も。 でも、仕方がないじゃないか。自分よりも酷い怪我をした人間にずっとずっと頼っていたのだから。 仕方が、ないじゃないか。 「すまん主はん。せやけど、どないしても心配かけたくなかったんや。」 「言ってくれなかった分、今めちゃめちゃ心配してる…!」 「すまんて。」 困った顔で笑う明石に、全部の感情を持っていかれた。こんなにも頼ってしまって、ここまで足を引っ張ってしまって、ごめん。ありがとう。 そういうごちゃごちゃした気持ちを汲み取ってくれたのだろう。困り顔からいつものやる気のないしたり顔へと切り替わった。 「全部まとめて、あとできっちりやるんで。」 「おはなしはすみましたか?」 もう一度今剣が攻撃を仕掛ける。 ガキン! 今度は火花と、刃がぶつかり合う音を響かせて → https://nana-music.com/sounds/0442dc64/

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