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明石国行
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足元にとんできた小さな刀は、黒いモヤがまとわりついていて、見ているだけでも気分が悪くなってしまう。 「アウトなぐらい穢れが溜まっとる。あんま触らん方がええで。」 …けれど、どうしてだろう。この刀がとても悲しいと泣いているような気がして、そっとそれを手に持った。 途端、ビクリと明石の下に寝転がっている今剣が震えだす。 「や、やだ、あるじさま、おらないで、おらないで!!!」 「今剣……?」 「すて、ないで…!すてないで…!!おねがい……やだ……あるじさま……!!」 ぽろぽろと泣き出す今剣。 それをみた瞬間、頭の中で先程の今剣の言葉が脳裏を過ぎり、カチリと全てのピースが繋がった。 「……今剣。」 「あ……あ……っ!?」 怯えた瞳でこちらをみる今剣を、穢れてしまった刀ごと強く抱きしめる。 この小さな身体で、どれほどの苦しみを飲み込んできたのだろう。 いつ捨てられるともわからない日々に怯えて、自分の替えがいると思い込んで。 「ばか、だなあ…ほんとばかだよ、今剣…!!私が、貴方を捨てるはずないじゃない…っ!!」 「ぅっ……あるじ、さま……!!」 「こんな、っ、頼りない審神者だけど…ぐすっ、貴方の主のままで、いいかなぁ…っ!」 「ぅっ…あるじさま……ぼく…………ッあああああああああ!!!」 優しく、そんな嫌な思いなんて忘れられるように 子供をあやすような手つきでぽんぽん、と背を叩けば、たくさんの涙と共に小さな体からどぷりと瘴気が抜け出てきた。 「これは……!?」 「やっとか…。愛染!蛍!ゲートまで走るで!」 「はーい!」 次から次へと溢れ出す瘴気を不安げに見つめていると、明石が外の二振りへと声をかけた。 「今剣の中から親玉の瘴気が抜け出したんで、外にいるやつらの中におる瘴気が暴走しとるんですわ。逃げるならいまやで…っと。」 ひとまずゲートまで走る、と明石が左肩に今剣、もう片方に私を担いで……私?! 「ちょ!おろして!!おろして明石!!」 「アホか!何言うてんねん!いっちゃん足遅いやつが偉そうに駄々こねんなや!」 「は!?ちゃ、ちゃんと走れるし!!」 「嘘つけ!」 ぎゃいぎゃいのと暴れる私を無理やり明石が押さえつける。 しかしすぐに重大なことに気がついて、私は顔を青ざめさせた。 「あ、明石…!ゲート、瘴気で動かないよ…!」 → https://nana-music.com/sounds/0442db18/

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