
三日月宗近
窮地
「行こう、待っててもどうしようもない。」 三日月にそう伝えれば、彼は小さく頷き、音も無く襖を開いた。 「……誰も、居らんな。…!」 足音が聞こえていたのに人影が見えないらしく、怪訝そうに部屋の外を伺っていた三日月が息を呑む。何事かと視線の先を伺えば、そこには何かが落ちていて。よく見れば、それは、 「こんのすけ!」 傷だらけのボロボロになった管狐に駆け寄ろうとした私の手を、三日月が掴む。次の瞬間、トッ、と軽い音がして、其方を見れば踏み止まった足の先ギリギリの位置の床に、一本の短刀が突き刺さっていた。 「っ…!」 「ざーんねん、はずしちゃいました。」 高く軽い声。小柄な体格、細い銀の髪、いつも見ていた筈なのに、今はとてもおぞましく見える赤い瞳で、今剣はじっとこちらを見ていた。その後ろには大勢の刀が、皆同じ様に真っ赤な瞳を此方に向けていた。指示を待つように立っている刀達の様子から、恐らく親玉が今剣なのだろう。 どうして、だとかを考えている余裕は無い。この場を切り抜ける為に、私は三日月の手を強く握り、口を開いた。 「お願い、戦って」 → https://nana-music.com/sounds/043fbe85/ 「お願い、逃げて」 → https://nana-music.com/sounds/043fbebc/
0コメント
ロード中
