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三日月宗近
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三日月のその言葉が聞こえた次の瞬間、私の体は浮いていた。三日月が私を抱えたのだ。驚く暇も無いままに、彼は壁沿いを縫うように走り出す。 「驚かせてすまんな。追われている故、これが一番と思ったのだ。」 「追われてる……!?」 追われている、という言葉に再びこの場所は危険なのだと思い知る。早駆けする鼓動をぐっと抑え込んで耳をすませば、確かに三日月以外の足音が聞こえてくる。三日月は私を抱えている事なんてまるで何でもない様な速度で走っているが、両手が塞がっている分明らかに分が悪い。 「! 三日月、あれ!」 突如、ずっと続いていた白い壁に変化が訪れる。人ひとりを何とか通せるだろう木の扉が、行先に見えたのだ。恐らく裏口として扱われているのだろう。例えこの扉の向こうが果てない森だったとしても、この現状は打破出来るかもしれない。 「ぐっ…!」 そんな淡い希望を打ち砕いたのは、三日月の小さな呻き声だった。上体が大きく傾き、私を投げ出す様にして地面に倒れる。何が起こったのか、と慌てて身体を起こし振り向けば、そこには小狐丸が立っていた。 「やっと捕まえましたよ、ぬしさま、宗近さま。この小狐をおいて、何処に行こうと言うのです?」 にこやかな笑顔でこちらを見る小狐丸の右手には確りと刀が握られており、その刃は赤く濡れていた。 「ある、じ…にげ、ろ…!」 地面に伏す三日月の背中には大きな一文字の傷が出来ており、彼は痛みに顔を歪めながらもすぐ側に迫った扉を指差して私を逃がさんとしていた。 「私は……」 扉から逃げる → https://nana-music.com/sounds/043d7fa1/ 最後まで三日月と共に居る → https://nana-music.com/sounds/043d80a4/

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