
明石国行
とりあえずこの部屋にとどまり続けているのも危険なので、周りに人がいないことを確認して廊下に出た。 どんよりとした空気と、それに呼び寄せられたかのように空を覆う雨雲、生気を失い地面に伏している庭の植物達…。 ああ、この庭を一生懸命手入れしていた彼の文系名刀がみてしまえば、彼はしばらく寝込んでしまいそうだ。 「おーおー。やっぱ外の方が薄気味悪ぅしてあかんわ。」 「うん…。こうも瘴気が強いと、元の場所はどれぐらいなんだろって心配になっちゃうよね…。」 「せやなぁ〜…ところで主はん、今の本丸の状態について分かるとこだけでも教えてもろうてええやろか?」 「あ、あっ!うん!」 珍しく真面目な顔で彼がたずねてくるものだから、「やっぱおかしくなってたの?」と聞けば「あほか」とどつかれた。 私の分かっているところだけ説明をするといっても、私もそこまで把握できているわけではないので、今現在目で見て分かることしか伝えられない。 「なるほどなぁ…。この瘴気にやられて、みぃんな仲良く頭ぶっとんどる状態っちゅーわけか…。」 「そんなとこだと思う…。でもまだ、解決策がわかってなくて…。」 そう、悔しいことにわたしは彼らを救う手立てをなにもしらないのだ。 自分が情けなくて仕方がない。 何も出来ない自分への怒りが、ぐらぐらと心の底で煮えたぎっているのがわかる。 仲間である彼らを救えなくてなにが主か。 目の前の視界がぼやけて、目の奥から熱い何かがこみ上げてきた時だった。 「ほんなら探せばええんやろ。主はんが悪いわけやない。悪いんはこの事件の元凶や。」 無意識に真っ白になるまで握りしめていた拳に、明石の綺麗な手が上からそっと重ねられて、絡まった糸を解くようにほぐしてくれた。 「否が応でもどうせすぐ別の刀剣とはあうんやろうし…。その時に確かめればええ…な?」 なるべく優しく、刺激しないようにという彼なりの気遣いが含まれていた声音でそう慰められる。 別の意味で泣きたくなるような微笑みを浮かべる彼に、ああ、そういえば来派の保護者だったもんなあなどと場違いな感想を思い浮かべてしまう。 「うん…ありがとう明石。ぐだぐた悩んでてもはじまらないよね…!先に進もう!!」 真っ直ぐ進む → https://nana-music.com/sounds/043caf64/ 曲がり角を曲がる → https://nana-music.com/sounds/043cb986/
