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明石国行
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「ずーっとまっていましたよ、あるじさま」 襖を開けてすぐ、部屋の奥の暗闇から声がかかった。 普段通りの、まるで今から遊ぶのだと言わんばかりに明るい声。しかしながら、今この状況においてそれはただの不気味さしか感じられない。 「いまの……つるぎ……?」 襖を開けたところから溢れる光が私達に見せたのは、この本丸で初期刀の次に来てくれた小さな刀だった。 愉しげに歪んだその瞳、爛々と輝く深紅の色。 まるで血を浴びてぬらぬらと光る刃のよう。 「でも……どうして……?」 「間違い……きっと、間違い…よね?」 そうでしょ?と懇願する気持ちで問いかけるも、今剣はニコニコと笑うだけだ。 「だって……そんなのって……!」 「あるじさまがいけないんです」 「え…わ、たし…?」 頭をガツンと殴られたような感覚。 目の前がグラグラする。今、なんて。 「あるじさまがいけないんですよ。ぼくがいるのに、たくさんのかたなをふやして。ぼくとあそんでくれなくなるかもしれないっておもって…。あたらしいかたなにばかりかまうから……ぼくも、みんなも、いっぱいいっぱいふあんになっていたんです。」 すらすらと並べられていく言葉に思わず耳を塞ぎたくなった。そんなことない、ちゃんと平等に私はみんなを愛している。でもどうしよう、怖くて口が開けない、どうしよう、どうしよう。 「呑まれたらあかんで主はん」 ふわりと鼻の奥が優しい匂いでいっぱいになった。 頭ごとぎゅっと抱きしめられる。 「あか、し……」 「ちっと瘴気に当たったんやな。……大丈夫、主はんはいつでも平等に面倒みてはりますよ。厳しい戦いが増えてきたから、新しい戦力が必要だったんも分かっとるはずやろ?」 「大丈夫、主はんはなあんも悪くない。自分からみたら過労死するんやないかってレベルで頑張ってはる。」 ぽん、ぽんと一定のリズムで背中を叩かれて 思わず涙腺が緩みそうになる。 ああ、そうだ。皆のこと、平等にちゃんと大好きだ。伝えなきゃ、わかってもらわなきゃ。 ───助けなきゃ。 「そうだね…!ごめん、明石…!」 「ほら、泣いとる暇ないで。正気に戻ったんならシャキッとしてもらわな困りますわ。」 「うん!今剣を……みんなを助けないと!」 キッと前方の今剣を睨みつける。 今剣は、先程までの笑みを消して ただ無表情で明石のことを見つめていた。 「やはり、じゃまですね。あかしくにゆき。」 → https://nana-music.com/sounds/043cb047/

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