nana

明石国行
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「さて……疲れたやろ。あとは自分がやっとくんで、パイセンはどーぞお休みください」 主が走っていったことを確認して、もう一度標的を見る。 練度が高かったことや、わりとこの本丸で古参だったこともあるのだろう。狂気の中で、彼の理性が暴れ回っていたことに気がついた。 主を傷つけたくない、しかしもう限界が近い。 だからせめて、と彼は自分に彼女を逃がすよう合図を出したのだ。 出した瞬間に、狂気の渦に呑まれてしまったのだけど。 「い…つもだ…!いつもいつモいつも!!!!貴様がぬしさまの横にッ!!!」 ああ、平生の彼らしからぬ、いわば獣のようなその表情の中には、既に彼の理性は見当たらなかった。 ならばもう、手加減はいらない。 「おーおーそんな顔も出来るんやなあ、知らんかったわあ。まさに化け狐。」 「黙れぇええええええッッ!!!!!」 わざと相手を挑発するような発言をすれば、本能のままに動くだけの獣が瞬く間に肉薄してきた。 寸前でひらりと躱すも、刀を持ち替え後ろ手に振り下ろしてくる。それをまたすれすれで躱し、くるりと体を捻りながら後ろへ跳ぶ。 「ちょこまかと……!!!」 「おっかないわぁ…自分これでも怪我しとるんで優しくしてもらえます?」 「ッ貴様がいるせいで!!!」 「あかん、話通じんわっなっ!」 怒りに任せた太刀筋はなによりも読みやすく、避けるのだってどうということもない。 しかし攻撃出来るかと言われると容易には頷けない。相手が得物を振り回すのに対して、こちらは素手だ。 チャンスは一度きり。目を凝らして奴の隙を見極めろ。 「なあ、ひとつ聞きたいんやけ、どっ!」 寸前で交わしながらそう問いかける、十分にあちらの意識を引いてこれていたようで、ギラギラと光る双眸がこちらに焦点を合わせた。 「なんやえらい怯えてはるようにみえますけど、何がそんなに怖いんどすか?」 「ッッ!!!!!?」 ピタリ。一瞬だけ彼の動きが止まった。 そしてそれを見逃すほど自分は優しくはない。 ゆえに 「おわりやな」 素早く自分の刀を引き抜いて彼に振り下ろす。 刹那、彼の瞳が恐怖で固まったように見えた。 → https://nana-music.com/sounds/0432b13c/

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