nana

明石国行
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「…!」 目の前を歩いていた明石が急に立ち止まって私を背に庇う。 「そこにおるんは誰や?」 そういって前方を睨みつける明石を見て漸く敵がすぐそこにいることを知る。 慌てて私も目の前を警戒すれば、暗がりの中から小さな影が飛び出してきた。 白い髪、大きな瞳いっぱいに涙を浮かべて、本体の切っ先をこちらに向ける彼の名は 「ご、五虎退………!?」 「……。」 様子がおかしい。やはり彼もおかしくなってしまっているのだろう。普段の優しげな瞳には、絶望の色がありありと浮かんでいた。 「あれ…五虎退、目の色が…!!」 彼の瞳は彼が本来持つ透き通った淡黄のような色でなく、おどろおどろしいほど真っ赤な色をしていた。 「ほぉー…敵は真っ赤な目のやつってことやろか…わかりやすくてええな。」 明石が挑発するように笑いかけると、五虎退は凄まじいスピードで明石の前へと刃を持ってきた。 「明石ッ!!!」 しまった、単純な機動力でいえば五虎退の方に分がある。このままでは…!! 「おっと…!!」 明石は最小限の動きで飛び込んできた五虎退の横へ体をずらし、攻撃をかわした。 だが五虎退は、攻撃をかわされたとわかるやいなやすぐさままた間合いをつめてくる。 …まずい。 機動が勝っていることもそうだが、本体の刀を取り出している五虎退に対し、明石は素手だ。 練度は明石の方が上であるため、まともに戦えばそこまで苦戦はしいられないはず…だがしかし、自分の刀派の二人が仲良くしている刀に対して攻撃などできないのか、全く本体に触れようともしない。 そうこう考えている間にも戦況はますます悪くなる。 「ほんまにしつこいなァ!!!」 「……。」 泣きそうな顔でけれどもたらす一撃一撃は容赦なく、明石をじわじわ追い詰めていく。 「き………う…。」 「は…?」 「嫌われちゃうーーーーーッ!!!!!」 今まで沈黙していた五虎退が急に泣き出し、明石に先ほどよりも大振りな一撃を入れようとする。 「嫌う…?誰に…?」 「うわぁ〜〜〜〜〜〜ん!!!嫌わないでください〜〜〜〜〜〜!!!!!」 これはひょっとしてもしなくても…私に向けて言っているのだろうか…? 「き、嫌わないよ!!!五虎退のこと大好きだもん!!」 「うわあああああん !!!!!」 心外だとばかりに叫ぶも、今の五虎退は聞く耳を持たない。 「だぁーーーーっ!!!絶対ちくんなやぁッ!!」 「…ッ!!?」 泣き叫ぶ五虎退にそろそろ良心がやられてきたのか、彼らしからぬ叫び声をあげると同時に何度も何度も突進してくる五虎退の背後に回り込む。五虎退もかわすだけだった明石が急に攻撃してくるとは思わなかったのか、一瞬動きが止まった。そして明石はその一瞬を見逃さずにとすっと手刀を食らわせ、五虎退の意識を失わせる。 パタリと倒れた五虎退をみながら、真っ青な顔で「これ、バレたら殺されるやろか。」とたずねてこられたので「ですな…。」とだけかえしておいた。 → https://nana-music.com/sounds/0432b01f/

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