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§夢幻ノ箱庭§ 第一話~赤ノ都市~
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§夢幻ノ箱庭§ 第一話~赤ノ都市~ 火山の恩恵により工業の発展したその土地では、24時間休むことなく工場のラインが動いている。 重低音が幾重にも重なり響くその工業地帯の隣には、様々な品物で溢れ返る街が広がっていた。 そこはかつて赤ノ国と呼ばれていた土地である。 国が統一され、与えられた名は第五都市・鳳凰街。 通称<赤ノ都市>と呼ばれた。 七ノ国へと統一された後、 五つの国はそれぞれ<五つの都市>へと変わり、 国の最高権限者である五名の神官の元、 それぞれの都市ごとに、統括されるものが決まっていた。 その中でも赤ノ都市は、【生産及び輸出入】の統括を任されていた。 様々な品物が所狭しと並べられる商店街はもはや赤ノ都市の名所である。 様々な色の市民が混ざりつつあるその都市では、今日も何かが起きる。 ~~~ 「ジェイドさーん!」 魔導騎士の正装を身に纏った林檎と暁月が険しい顔をして辺りを見渡している一人の男性魔導騎士へと駆け寄って行く 。 「…彼らは見つかりましたか?」 「うーん…それが…」 暁月が片手に握りしめた縄を引き寄せると、その先には頭部に大きなコブを作った人物が一人、縛り上げられ完全にの びていた。 「複数犯による強盗でリーダー各一名はやっかいな魔法持ちだってのは解ったのですが、この人が急に襲ってくるもん だから正当防衛で殴ったら加減し損ねたみたいで…」 「暁月ちゃんが笑顔で思いっきり殴ったのを私見ましたー」 「ちょっ、林檎ちゃん!?」 林檎が手を上げながら暁月を売る。 ジェイドはため息をひとつつきながら、頭をガシガシと掻く。 「…結月は?」 「えっと、バラバラに逃げた奴らの内の一人を追いかけていきました。」 「…単独行動は控えろとアレ程言っ…」 小言が口をついて出かけたその時、 前方の裏路地の奥から衝撃音が鳴り響き土煙が噴き出した。 街を歩く人々から悲鳴が出る。 ジェイド達は音のした方へと走って行くと、煙の中から咳き込みながら出てくる人影があった。 「ケホッ…ケホッ…」 「…ていなん様?」 ジェイドが声をかけると咳き込む人物はジェイド達の方へとズカズカ歩み寄ってくる。 その後ろからは強盗犯を追いかけていたはずの結月も現れた。 「ちょっとジェイド。ここら辺の外壁老朽化が凄いんじゃない?ちょっと小突いただけで崩れたよ?」 そう言いながら手に持っていた何かを軽々放り投げる。 投げられたそれは、物…ではなく、先ほど林檎達が取り逃がした強盗犯の1人だった。 完全に気を失っている。 「ていなん様…いい加減力の調節を覚えてください…。」 「だって結月ちゃんに刃物なんか向けてたんだもんコイツ。 この街の女の子は全員僕の可愛い子猫ちゃんだよ? それに手をだしたコイツが悪い。」 「ていなん様の猫になった覚えはありません。」 結月がキッパリとツッコミを入れる。 「も~結月ちゃんはつれないな~」 「というかていなん様…」 ジェイドが思い出したように口をはさむ。 「今…勉学の時間では…?」 ていなんの身体がピタリと止まる。 「…あ~…うん。終わった終わった。」 「………。」 魔導騎士達の視線がていなんへと注がれる。 ていなんは冷や汗をひとつ流すと、後ずさり …を、しようとした。 [ ガシッ ] 突然ていなんの背後に女性が一人現れ、首襟を掴みあげた。 「ていなん様…?見つけましたよ?」 「ヒッ…や、山乃ちゃ…」 「さあ私室へ戻りましょうね。神官になる為にはまだまだ覚えて頂くことが沢山ありますから。」 山乃は笑顔を顔に貼り付けたまま淡々と言葉を発する。 「やだやだ!毎日毎日頭がパンクしちゃうよ! 僕は可愛い女の子と楽しい時間を過ごしたいんだ!! 国情視察…!そう、国情視察も大事な仕事…」 「国情視察は魔導騎士であるジェイドさん達に任せましょう。 貴方はその報告を現神官であるお父様と一緒に聞けばいい。 それに私は貴女のお父様が依頼主です。 生徒に媚び売るのが仕事ではありません。 私の仕事は貴女を立派な神官候補にすることです。」 説明口調で淡々と告げる。 「うーん…あのていなん様に物怖じしない…さすが。」 ギャーギャーとわめくていなんを軽々といなし連行していく。 ジェイドはていなんを庇う事無く笑顔で見送った。 「さて、僕達は残りの強盗犯を捕まえましょう。」 「あ、あの…それが…」 結月がバツの悪そうにジェイドへと声をかける。 「どうしました?」 「それが…多分逃げた方向からして別の都市へと逃走した可能性が…」 「………。」 ジェイドはやっかいな事になったと言わんばかりに空を仰ぐ。 「林檎と暁月はその2人を連行しておいて下さい。 結月は外壁の被害状況の確認と通行人の安全確保、その後黄ノ都市の業者へ修繕を依頼してください。 僕は各都市へ強盗犯脱走の連絡を入れに行きます。」 「「「はい。」」」 強盗犯は残り4人。 …第二話へ続く。

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