nana

【声劇】サルヴァ・メ【台本】
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「ねぇ、ちょっといいかな?」 彼女はどこにだっているような なんの変哲もない女の子だった 目立つわけでもない 地味ってわけでもない 親しい友人が二人いて クラスの8割とうまくやっていて ほんの少しだけ、気が強かった 「もしわたしが死ぬとしたら」 「え?」 「どこかで、どうしてかなぁ? わからないけれど もし、死んでしまうとしたら」 彼女とは一度だけ二人きりで 日曜のゲームセンターに行ったことがあった 「死ぬ直前に“たすけて”って言われて でも、助けられなくて。後で ああ、あの時、死んでしまっていたんだなぁって思うのと “また今度ね”って笑顔で言われて わたしが死んだ後も アイツはきっとどこかで元気にやってるんだろうなって思っているのと──」 三日に一度、日付が変わる頃 メッセージのやりとりをする 「──どっちがいい?」 たぶん 僕と彼女の関わりは それだけだった どこにだっているような なんの変哲もない、ただの友だち 「死ぬことは決まっていて もう動かすことはできないの だって人の死を止める能力があるなら ちょっとくらい急な話だとしても ヘルプ・ミーを教えてもらえた方が うれしいでしょ?」 この時、僕はなんと答えたんだったか 記憶にモヤがかかって 思い出せない ただ、この日の放課後 僕と彼女は手を繋いで帰った 駅前で手を振り僕らは別れた 「じゃあ、また明日」 音の鳴る踏切の向こうで 彼女が大きく張り上げた声が 今も耳にこびりついて離れない それ以来、僕は彼女の姿を見ていない 夜逃げだとか 隣町を年上の男と歩いているのを見ただとか 果ては卑猥なビデオにチラリと写っていただとか いろいろな噂が立っては消えていくけれど きっと、それはどれもこれも的外れで きっと、彼女は きっと、もう どこにも居ないんだろう、と そう 思えた 解釈、アドリブ、アレンジはすべてご自由に #掛け合い でも #一人声劇 でも #朗読 でも #声劇 #台本 #拍手報告コメ不要

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