§幻想舞踏会§ 最終話~新たな国の誕生~
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§幻想舞踏会§ 最終話~新たな国の誕生~
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最終話~新たな国の誕生~
大陸の巨山消失と五つの国の加護が現れたというニュースは大陸全土へと瞬く間に広がった。
古の文献は消し去られていたが、島にいた隊士達が見つけ出した真実を元に、各国は加護を王へと宿そうとした。
しかし、最後に加護をその身に宿した悪ノ王から継承されていない為か、
加護がそれぞれの王へと宿ることは無かった。
唯一、加護をその身に宿した光姫は加護は七色ノ宝石に従っている事を説明。
大陸に降り立った五つの拠点島をそのまま新たな加護の宿る聖域とした。
それぞれの拠点島へ他国の隊士が行き来することも可能になっていた。
そのまま放置する訳にもいかない為、光姫主導の元、国毎に加護を守護・管理する神官を選出することとなった。
それまでは各国の隊士が代理を務める事となり、隊士達は互いの拠点島を行き来しながらも国の決定を待つ事とした。
~~~
「姫様、こっちです!」
レイン、まりー、みーに半ば強引に引っ張られているのは連日公務で大忙しの光姫だった。
何も事情を話されてないまま3人に連れてこられたのは、青ノ拠点島だ。
「ちょ、ちょっと?!」
理解が追いつかないまま青ノ拠点島に入ると、既に集まっている隊士達の視線が集まる。
全員の口角が怪しく上がっていた。
「ひめちゃま、ここでちょっと待っててもらえますか?」
レインが促すと、先ほどまで団らんとしていた隊士達が次々とどこかへ去って行く。
「あら…まだ納品が少し残っていたみたいね?少しお店に戻らなきゃ。」
「そろそろ予約していたゲームが届く時間だー。」
「あ、カフェで残り作業するからちょっともどろーっと。」
「私魔法クラブに帰らなきゃ!」
「さて…と、用事を思い出したから一旦でかけねば…」
「レポート!まだだった!急いで終わらせなきゃ!」
口々に用事を思い出したと説明口調でいなくなっていく。
あっと言う間に光姫は1人、拠点島に取り残された。
「………?
一体なんなの?
新手の嫌がらせ…?」
困惑したままレインに言われたままその場で待つ。
「光姫様。」
名を呼ばれ振り返ると、そこには両手を後ろに隠したボブが立っていた。
「お身体の具合は如何ですか?」
「あら、ごきげんよう。
具合は普通に生活する分には問題ありませんよ。」
光姫の呪いは加護の力によって相殺された。
連日の公務で十分な自己干渉術による休息がとれていないにしても、ほとんど元に戻っていた。
「そうですか、それは良かった。」
心地よい風が2人の間に流れる。
「…えっと、私呼び出されてここに来たのですが、ボブさんが呼んだのですか?」
「…はい。俺との約束、覚えてくださってますか?
少しお話をしたいことがあります。」
ボブの声に、迷いの色は一切無かった。
約束という言葉を聞いた光姫は目を見開くと、嬉しそうに微笑む。
(叶わない約束…なんて思ってたのに…。)
「約束、そうね…そうでしたね。
まさか約束を果たせるとは思いませんでした…
お話ですか?何でしょう?」
「はい、ですがその前に手土産を用意しろとの事でしたのでw
こちらです。お受け取りください。」
後ろでに隠していた手を前に持ってくる。
ボブの手には鮮やかな色の青薔薇がまだ蕾の状態で花束にされていた。
「薔薇…!?
え、赤じゃなく…???
…あの話は冗談のつもりで…え…
というか、蕾…?」
2人は広場で冗談半分に交わした話があった。
――…まったく貴方は本当に天然タラシね!
色んな女性に花を渡して…
花言葉わかってやってるの!?
――…花ならいくらでも作れますので
(花言葉って何だ…?)
――…なら青い薔薇がほしいわ。
――…青い薔薇はありませんが、
赤い薔薇なら。
どれくらいが良いですか?
――…じゃあ、101本。
――…了解です。
――…いやいや!!
そこは本数が気になって調べる所でしょ!
――…そう言われると意地でも調べたくないですねw
――…この子、おばかちゃんね…。
(※死ぬ気で広場を遡りました。4万程。)
薔薇の優雅な香りが広がる。
(この子、本数の意味調べたのかしら…)
光沢ある白いラッピングがされ、水色のリボンで束ねられた花束をそっと受け取る。
「…あの時お話していた薔薇です。
初めは赤い薔薇を用意していたのですが、光姫様には青い薔薇の方が似合うかと思いまして。
冗談半分とはいえ、仰っていたとおり101本用意しました。
少し時間かかってしまって申し訳ございません。」
「…綺麗。
私、青い薔薇大好きなんです。
ありがとうボブさん…」
(なるほど、私の冗談をそのまま鵜呑みにしてくれたのね。
つまり本数も何も関係ないか…)
それでも、薔薇の花束をもらえたことは嬉しい。
光姫の顔から自然と笑みがこぼれていく。
ボブは、喜んでる様子に安堵しながら言葉を続ける。
「それから、ミヅキヒメ様から光姫様へ伝言を預かっています。
光姫様が魔石を破壊したことで、魂が解放され、最愛の人のところまで行ける、
ありがとうと仰ってました。
光姫様は俺たちだけでなく、囚われていた魂もお救いになったんです。」
「そうですか…
それは…良かった…。
初代様も救われてたんですね。
初代様からお礼を言われるなんて、なんて光栄なんでしょう!」
花束を抱きながら目を輝かせる。
自分の先祖と築いた何百年という時を超えた関係に心を躍らせた。
「そして、俺がミヅキヒメ様と約束したことがあるんです。
…いえ、たとえ約束していなくともするつもりでした。
光姫様、俺の話を聞いて頂けますか?」
「…何ですか?」
ボブの口調に緊張が見え隠れする。
「まずお礼を言わせてください。
俺を、皆様を、この世界を救っていただき、本当にありがとうございました。
感謝してもしきれません。」
「お礼を言われる事ではありません…
私はあくまで、私の為に動いたのだから。
むしろ私が皆へお礼を言わなければいけないほどですw
こちらこそ、ありがとう。」
「光姫様は…本当に長い間おひとりで頑張ってこられました。
冠名の下に自身の気持ちを隠して…ずっと。
満月姫としてのお役目、本当にお疲れ様でした。」
深々と頭を下げる。
光姫は目の奥が熱くなる感覚を誤魔化すように、空を仰ぐ。
「それは…
終わった事です…
労いなんて要りません。
光姫としてお母様に恥じぬよう生きただけ…
そして、もう何も隠す必要が無いから…とても清々しい気分です。」
もう誰にも隠し事なんてせずに済む。
それは光姫にとって大きな事だった。
「光姫…その冠名で隠す必要ももうなくなりました。
俺に、貴女様の真の名前をお聞かせ願えませんか?」
「………。真名……?」
母より頂いた名前を思い出そうとすると、その記憶だけ断片的にノイズが走る様に何も聞こえない。
(……あぁ、そうだった…)
「ごめんなさい。
教えられません。
私はあの時の隷属魔法で真名も代償としてしまった…
だから思い出せないの…。
お母様からも口伝でしか聞いてないから…
何も残ってないのです。
私は名を失くしてしまったわ。
でも大丈夫、私は『光姫』だから。」
寂しそうに薔薇の蕾を撫でながら言葉を紡ぐ。
ボブはその様子に胸が締め付けられた。
(何の犠牲も無く終われた訳じゃなかった…。
この戦いで、姫様だけが大切なものを失ってしまったのか…。)
「真名を…失くして…そうですか…
…厚かましいお願いかも知れませんが、
俺と姫様との間での呼称が欲しいです。
『光姫』という名ではなく、貴女の名前を呼びたい…だめですか?」
突然の提案に顔を上げる。
その目が冗談では無いものだと理解すると、光姫は小さく笑う。
「……。
なら、貴方が決めてください。
私に、名をくださる?」
「お、俺がですか?
……少し時間をください。」
風の音だけが耳元を心地よく流れていく。
どの位たったであろうか、ボブがゆっくりと口を開いた。
「…では、【未久】はどうでしょう。
姫様に頂いたこの世界の平和な『未来』が、『久遠に』続くよう、願いを込めて。」
「ミク…?」
その響きに胸の奥に説明のできない懐かしさがこみ上げる。
温かい母の温もりが蘇る気がした。
「ミク…未久ね…。
何だかとても懐かしくも素敵な響きです…
ええ、そう呼んでください。」
「ありがとうございます、未久様。」
「ふふっ
誰かに光姫以外の名で呼ばれるだなんて思いませんでした。
これで話はおしまいですか?
私は、この薔薇を早く部屋に飾りたい。
この蕾が咲くのはいつ頃かしら…
あぁ、未来を待つって素敵ですね、ボブさん!」
未来へ思いを馳せる事がこんなにも眩いものだと言わんばかりに、花束を抱きながら喜ぶその姿は、
無邪気な少女のようでもあり
純真な大人のようでもあった。
ボブはそんな光姫の元へと歩み寄る。
「最後に…
すみません、ひとつ隠していたことがあります。
実は俺、調べたんです。
青い薔薇の花言葉も、薔薇の本数の意味も。
…調べた上で、用意致しました。
『不可能』だと思われた運命に立ち向かおうとひとりで頑張り続け、
『神』から授かった加護を見つけ出し、
ついに運命を変える『奇跡』を起こし、
『夢を叶えた』未久様に、この本数で受け取って頂きたかった。
なので、自分で大切に育てて来たんです。」
ボブが薔薇へ手をかざし、魔力を込める。
すると、1本の薔薇が開花するのを皮切りに次々と蕾が満開になっていった。
「…薔薇が……!
え………
そ、う…なの……???
意味を知ってて…
それじゃあ………え…?」
2人の視線がぶつかり合う。
「はい。未久さん…
いままでも、これからも、いつまでも
これ以上ない程、
貴女を愛しています。 」
「………!」
光姫の目が潤んでいく。
彼の言葉が、姿が、風のように身体を巡り、心へ溶けていく。
(あぁ……私が………
私がずっと欲しかった言葉は……
……これだったのね………。)
透明な滴が頬をつたい、青薔薇の花弁へと落ちた。
「………
……はい
わ…たしも………
…私も、貴方を愛しています。
ボブさん…」
その笑顔は、紛れもない本物だった。
「…ほ、本当ですか!
やった…!!!」
上擦った声をあげると、ボブは光姫を抱き上げて喜びのままに抱き締める。
「ちょっ
ちょっと?!?!
ぼ、ボブさん!?
突然何をするんですか!!!」
突然持ち上げられた事で動揺を隠せない。
しかしその声に怒気は一切無かった。
「…はっ!すいません、つい………」
「まったく、も…う………」
ふと気が付くと、2人の顔が至近距離となっていた。
言葉も無く見つめ合う。
そのまま、どちらからという事も無く、
互いの存在を確かめるように、
そこにある愛を示すように、
静かにキスを交わした。
「はぁ~…
心臓がバクバクしてます…
顔が熱い…」
光姫をゆっくりと降ろすと、赤い顔を隠すようにうつむく。
「わ…私だって…!!
い、いきなり過ぎます…!」
薔薇の花束に顔をうずめながら光姫も火照った顔を隠す。
そんな気まずい沈黙を破ったのはボブの照れ隠しのぼやきだった。
「…ただ、未久さんのファーストキスでないことが唯一残念ですかね。」
(………え?)
「ちょっとまって、何のことですか???」
ボブの発言が理解できないとばかりに声を上げる。
「…?
いえ、この間白ノ拠点の前でそうまと…」
モヤモヤするあの時の光景を思い出す。
「あなた…
見てたの…???
ボブさん、貴方誤解してますよ。
私そうまさんには頬にキスされただけですよ???」
光姫は首を傾げながら、サラっと言う。
ボブがその言葉を理解するには、時間を要した。
「…は、え?
頬に………?」
その意味を理解すると、ボブの顔はさらに真っ赤になっていく。
「はぁあああああ!?!?
アイツ!!!やりやがったな!!!!!
何意味深に言ってくれてんだアホが!!!!!」
ボブの怒号が響き渡る。
一方、大学で理事長である父親といたそうまはくしゃみをひとつしていた。
~~~
「速報!速報!!
【ボブ氏、姫様と結ばれた直後にキス!!】」
夜蝶の声が突然聞こえだす。
ボブが声のする方へ勢い任せに振り向くと、写真と共に号外用紙をばらまいている。
紙に添えられているのは、紛れもないキスシーンだった。
「…は?」
「んな!?」
夜蝶の号令を皮切りに茂みから、次々と人影が飛び出してくる。
「おいおいおいおい!?
なあにやってくれてんだこの野郎!!」
「ぐはっ!!!ちょ、ちょっと待ってください!!」
ていなんがボブへとニヤニヤしながら腹部へ拳を鋭く入れる。
ジェイドもそれに続いて現れる。
「いやあ…まさかそこまでするなんてな~…
なあボブ君?大人になったねぇ??
やっと伝えたのかよ。遅かったな。」
「はっ!偉そうに言いやがって…
遅くとも伝えたんだ、いいじゃねえか!!」
ハンペンも泣き顔でボブの元へと駆け寄る。
「先輩いいいいい!!!!!
あの超絶天然植物研究馬鹿な先輩が告白して、しかも…
おめでとうございます!!!」
「お前さらっと悪口言ったな!?!?」
茂みに隠れていたであろう隊士達が次々と押し寄せる。
「ひめさまああああああ!!!!」
「ま、まりーさん!?これはどういうこと!?!?」
まりーに続いてみー、レイン、夢羽、レイカも現れる。
「ひめしゃまああおめでとうございますー!
パーティーの支度しなくちゃ!!」
「おめでとうひめしゃま!!!」
「みっ、光姫様ぁ…お幸せになってくださいね…グスッ」
「ふふふ、姫様、おめでとう。」
光姫の顔がみるみる赤くなっていく。
「あああ、あ、あなた達…
まさかずっと覗いて…!?!?」
「そうですよ???」
「パーティーだ!
みんな、パーティーをするぞー!!!」
夜蝶の声に歓声があがり。
やれテーブルだ、やれ料理だと、勝手に会場が作られていく。
(ぼ、ボブさんはどこ…?)
花が崩れないようまりーへ花束を預けると、
突然のごった返しの中必死に先ほどまで一緒にいた人物を探す。
数メートル離れた先の人混みの中心に、探し求める姿があった。
(……!…いた!
…って、あんなに囲まれて…)
「ボブほんとうおめでとう!」
ていなんはボブの首に腕を回し体重を預け、
「もう、ボブさんやるぅ!」
みーはボブの頬をツンツンとつつく。
「ボブ!よくやったな!」
夜蝶も距離を詰めている。
「ふふ、ボブくん。
まだまだ無自覚なお子様だとおもってたけど…男を見せてくれたじゃない…。
なんだか見ていて私もドキドキしちゃったわ?」
レイカも片腕に寄り添う。
お祝いの楽しい光景のはずなのに、光姫はなぜか面白くない。
(…私って意外と…こっちに関してもワガママなのかもしれない…)
「……。」
人混みを避けながらボブの元へと近づくと、ボブの服の裾を小さく引っ張った。
「…ボブさんっ」
「…未久さん?」
「…ゎ、私と……いて…?
他の人と…近すぎ……
なんか…や、です………。」
顔を真っ赤にしながら、喧騒に掻き消えそうな声で訴えるその姿にボブも含む様々な隊士から笑みがこぼれる。
ボブは他の隊士を気にする様子もなく、光姫を抱き上げる。
「…未久さん、可愛いですね。
じゃあこれで行きましょう♪」
「なっ!?
そ、そうやって荷物のように持ち上げるのは…!!
………っ
…ふんっ」
「御心配なさらずとも、俺はずっと未久さんのそばにいますよ。」
顔を真っ赤にしてそっぽを向く光姫の頭を優しくなでる。
そんな様子を微笑ましく眺めるレイカの元へとふあのんが近づく。
「オーナー例の衣装が到着しました。」
「ああ、ありがとう。」
ふあのんの報告を聞いてレイカが2人へと声をかける。
「ボブくん、姫様。
良い所を邪魔してごめんなさい?
皆でお祝いするって聞いたから、急いでタキシードとドレスを仕立ててきたわ。
せっかくのお祝いなのだし、着替えてらっしゃい。姫様のドレス姿…見たいでしょう?」
「見たいです。」
即答だった。
「ボブくんも着飾った貴女を見たいそうよ?
せっかくだから、ほら、あっちでまりーさんが待ってるわ。」
降ろされた光姫の手を引く。
「え?え!?」
まりーが嬉しそうにドレスを持って待っていた。
「姫様、着付けお手伝いします♪」
「ん。」
ここで光姫の致命的な悪癖が再び顔を出す。
いつもの着替えの時と同様、全てを脱いで両手をひろげた。
「馬鹿ですか!!!!!
やめてください!!!!!」
「ちょちょちょちょ!?!?!?」
「なにやってるんですか!?!?」
偶然見ていたボブ、ていなん、夜蝶が悲鳴を上げる。
ジェイドは光姫を見て完全に固まっていた。
「見たら殺す(真顔)」
「…見たら死ぬ(真顔)」
レイカが溜息をもらす。
「あーもうまた………」
レイカが指を鳴らすと、男性陣全ての視界を闇で覆った。
まりーがわなわなと震える。
「ひ~め~さ~ま~?
もう姫様はボブのものなんですから、その場で脱ぐ癖、そろそろ直しましょう。
全く…!!!」
ブツブツと文句を言いながらも笑顔で着付けをしていく。
「暗い!!暗い!!(ゴン!!)暗い!!」
料理に夢中だったハンペンは突然暗くなった視界にパニックを起こしていた。
「レイカさん、素敵なドレスをありがとうございます!
領収書は光姫の名で切っておいてください。」
「ふふ、これはうちの大事な従業員や皇妃様のおられる国をすくってくれたお礼…
それから、個人的な貴女の友人として、お祝いの気持ちよ。
大事に着てくれさえすれば、見返りなんていらないわ。」
「レ、レイカさん…
…あんな事があったのに、友人と呼んでくださるの…?」
光姫がボロボロと泣き出してしまう。
「…まったく貴女と言う人は。」
ハンカチを取り出し、光姫の涙を拭う。
「絶対に言いたくなかったでしょうに…成り行きとはいえ無理矢理秘密を暴いて、貴女を苦しめてしまったのはわたしよ。
わたしの方こそ…友人と呼んで許されるのか…」
「もちろんです…これからもぜひ仲良くしてください!レイカさん…!」
「ほら、泣きやみなさい。せっかくの晴れ姿が台無しよ?」
ふあのんの用意した装身具を付けながら、他愛のない雑談に花を咲かせた。
「さて、着付け終わりましたよ。
レイカさんもう大丈夫です。」
まりーの合図でレイカの魔法が解かれる。
明るくなったボブの視界にうつったのは、
頭部のカチューシャから後ろへ繊細な刺繍が施されたヴェールが長髪と共に流れ、
透き通るような空色のアフタヌーンドレスが、女性らしいボディラインを美しく描いていた。
まりーが気を聞かせてボブから貰った青い薔薇を装飾に絡めて飾り付けている。
さながら、空色の薔薇姫だった。
「わぁ…綺麗…」
レインがうっとりと見つめる。
「姫様とっても綺麗です!」
遅れてやってきた拍斗も喜ぶ。
「…すごく似合ってます…綺麗です…
いつも聡明で気高くて強くて美しくて…そして優しくて…
光姫様にとてもお似合いです…」
夢羽は両手を祈るように組み、涙を流しながら見つめる。
ボブも例外なく惚けていた。
「未久さん……綺麗です…。
やはり、貴女には青い薔薇が似合っている。」
ボブの声に振り向くと、ボブ自身もタキシード姿に着替えていた。
深い濃藍のタキシードを着こなす様は、高身長により凛々しく栄えていた。
「…あ、ありがとう。
ボブさんも素敵ですよ…タキシード姿…」
光姫は何かを思い立つと、いつもの合図で夜蝶を呼び寄せる。
(…ボブさんの写真撮っといて。)
(了解しました。)
カメラを即座に用意する。
「よし!ボブ!姫様!並んで!!」
「は!?並ぶ!?」
「夜蝶さん!?」
ボブの元へ夜蝶が耳打ちする。
「姫様の写真…ほしくないの?」
「…了解した。」
「ほら姫様もっと寄って!!」
ニヤニヤしながらカメラを構える。
ボブに抱き寄せられた光姫も赤面しつつ肩を並べる。
「はい、チーズ!!」
カメラの軽快なシャッター音が響いた。
~~~
その後、国の境に位置していた巨山が無くなった事により、国境は曖昧化。
加護をきっかけに五つの国は、互いにもう一度手を取り合っていこうと王の間で話がまとまった。
五つの国は統一後、七色ノ宝石を象徴とすることで満場一致。
白ノ国、黒ノ国、赤ノ国、青ノ国、黄ノ国の計五国と、
初代混色ノ王と共に葬られた今は無き煉獄ノ世界、
そして加護を守り続けた無色ノ間、
それらと
全ての明かされた物語を忘れずに後世へと伝え続ける為、
七ノ国(nanaの国)と名付けられる事となった。
― TRUE END ―
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