§幻想舞踏会§ 第四十一話~スベテノハジマリ~
§幻想舞踏会§
§幻想舞踏会§ 第四十一話~スベテノハジマリ~
- 64
- 11
- 0
§幻想舞踏会§
第四十一話~スベテノハジマリ~
隊士達の脳内へと声が響き続ける。
その声に、誰もが黙って耳を傾けた。
~~~
『はるか昔、
五つの国の王は神の産物である魔法石を天より授かった。
王たちは魔法石を『加護』と呼称し、
それを悪用することなく、それぞれが国を営んでいた。
加護をその身に宿した王は平均の数十倍長寿だった。
時代の流れと文明の発展により、大陸のあらゆる所で戦争が起こり始めた。
それぞれが互いに加護を認め、尊重し合い、友好関係を築いていた大陸の中心に位置する五つの国は、
初代ミヅキヒメが主導の元に同盟を組み、国を統一させようとした。
互いへの信頼の証として、
神託により選ばれた赤子にすべての国の加護を授けた。
二十歳になったその時、
新しき巨国の王となるように。』
~~~
『加護は神の力。
ひとつでも一国程度ならば軽くなぶれる程の力だった。
その巨大な力が悪へと働かないように、
王子の導き手になるべく
魔法と王の資質の指導者として初代ミヅキヒメの娘を
礼儀作法の指導者として黒ノ国一規律を重んじる貴族の娘を
武力の指導者として赤ノ国一の騎士を
知恵の指導者として青ノ国一の智嚢と謳われた学者を
そして、各国の伝統や技術をつたえる指導者として黄ノ国一の職人が
世話役兼導き手として選ばれた。』
~~~
『王子はすくすくと成長し、
5人の従者から与えられた知識・技能を全て吸収して行った。
しかし唯一の誤算が生じる。
王子は初代ミヅキヒメへ恋をしてしまったのだ。
もちろん子孫繁栄の為に、王子には婚約者がいた。
それでもミヅキヒメへの焦がれる気持ちに王子は抗うことができなかった。
しかし初代ミヅキヒメは既に他界している夫が心にいつもおり、
そして加護を王子に与えたことにより寿命も普通の人と変わりなくなったミヅキヒメは、
元来病弱な体質も合わさり着実にその命は終わりへと向かっていた。
そして王子自身も、その恋が叶わない事を自覚していた。
その為、5人の導き手の目を盗み、禁忌の魔法だった自己干渉術がひとつを使い、
[ミヅキヒメへの欲]という感情、
つまり恋心を王子は切り捨てた。』
~~~
『しかし捨てられた恋心は、抑制心という枷がなくなると
[嫉妬]という負の感情の塊へとなった。
五つの国の様々な負の感情を吸収し、
一つの大きな魔力の原石にまで結晶化してしまった。
魔石は生みの親である王子へと憑りついた。
少しずつ少しずつ心と加護を蝕んでいき、
王子は二十歳の誕生日を目前に控えたある日
ついに悪に染まってしまったのだ。』
~~~
『5人の導き手が気付いた時には時すでに遅く、
王子の私利私欲による征服が始まった。
白ノ国の城にミヅキヒメへ加護を無理やり戻した上で幽閉し、
王子は白ノ国を拠点に次々と国を支配して行った。
それはさながら絶対強者による蹂躙だった。』
~~~
『そしてすべての国民を魔石ノ意志にて侵食しようとしたその時、
ミヅキヒメは自身の身体をそのまま昇華させ、王子と悪の感情から加護を切り離し、自身ごと魔石へと封印した。
自分自身の[命]と[身体]を代償にした、絶対隷属魔法だった。』
~~~
『魔石ノ意志による浸食が突然止まった事で
5人が白ノ国の城へと乗り込むと、そこには既にミヅキヒメと王子の姿は無く、
残されていたのは負の感情により穢れてしまった五つの加護と、
光姫の持っていた鏡の宝飾、
そして王子ごと封印された黒紫色の魔石だった。』
~~~
『加護の力無く魔石を消滅できるほどの力は無かった。
その為、浄化の空間である「煉獄」があると謳われていた
大陸の中央にある巨山の地下深くへと、5人は魔石を埋めた。
そして、全ての加護は王子と魔石によって穢れてしまっていた為、
5人は加護を浄化するべくあるシステムを作り出した。
いつか完全に浄化された加護によって魔石を破壊するために。
残された初代ミヅキヒメの[別世を映し出す]と謳われていた鏡を核とし、
異次元へと加護を転送させ、穢れが浄化されるまで加護を守護する管理者を作り出した。』
~~~
『それこそが、七色ノ宝石「造られた意志」だった。
黒の娘が転送術によって大陸から切り取った六つの土地を宝石に与え、
黄の職人が五つの島に浄化の為の神殿と管理室を建築し、
青の学者が七色ノ宝石へ自身が持つ限りの知識データを与え、水脈を利用した魔力循環システムを構築、
そしていつか来る神官がすごしやすいよう自然を生成した。
赤の国は万が一加護を奪われることの無いよう、加護の受託者として素質の無い者…
つまり別の国や悪ノ王が加護に近づくと防衛手段として攻撃魔法が発動するよう円形魔法陣を仕込んだ。
そして、5人は五つの加護をそれぞれの島で眠りにつかせた。』
~~~
『最後に、
初代の娘でもある二代目ミヅキヒメは七色ノ宝石が悪ノ王の二の舞とならないよう、
自身の身体の成長を代償に、隷属魔法を二つ発動した。
ひとつは、七色ノ魔石に決して感情…もとい「心」が生まれないようにする術。
もうひとつは、
初代光姫に匹敵するであろう人間が現れた時に、もとの世界へと戻り加護の完全浄化を開始し、
加護の力と共に封印された魔石を破壊する目的が達成されるその時まで、
他者の魔力を宝石自身のエネルギーとして転換そして稼働・破損した場合の状態回帰できるようにする魔力隷属だった。
そして干渉術の中でも隷属術に関する文献は、
その魔法が解かれることが無いよう全てを消し去った。』
~~~
『しかし初代光姫ほど魔力も無く、
また母であり師でもある初代ミヅキヒメから全ての伝授も終わらせていなかった二代目は、
隷属魔法を完璧に操る事が出来ず、二つの隷属魔法に対し二つの呪いを生んでしまった。
ひとつは、代々ミヅキヒメの冠名を継ぐ白ノ国の王族、
つまり女性がその後、世代が変わろうとも身体の成長が他の人に比べて未成熟になってしまうという呪い。
もうひとつは、光姫が三代目へと冠名と共に口伝にて隷属魔法を継承する時に発覚した。
隷属魔法を他者へと口外すると、呪いが発動し口外した者の命を蝕み始める呪いとなっていたのである。
同じ時代にミヅヒキメは2人存在できなくなった。
呪いの発動条件は[満月姫]と[隷属魔法の口伝]。
少しでも呪いを緩和させるべく、二代目はミヅキヒメ(満月姫)をミツヒメ(満月姫)とし、
さらに飾名であるミツヒメ(光姫)を重ねる事で発動条件に保険を掛けた。』
~~~
『その時代、加護を神同然に崇めて生きている五つの国の国民たちには到底公表できる内容ではない。
その為5人は七色ノ宝石とその加護の島を完全に隠匿した。
5人はその後、
その一生を終えるまで魔力を宝石に蓄え続けた。
そして最後の一人が静かに息を引き取ったと同時に、七色ノ魔石は自立稼働を開始。
別次元にて静かにその時を待っていたのである。
その別次元は【無色ノ間】の名付けられていた。』
~~~
『そして現代の姫が初代に匹敵すると判断した七色ノ宝石は、
次元から大陸へと現れ、システムに則り
神官を隊士と言い換え収集。
完全浄化の為の魔力の供給を開始した。
そして神官達の先程の魔力により、
今、全ての加護の浄化が完了した。』
~~~
『さあ現代の花嫁よ。
後は、そなたの役目だ。』
…つづく。
コメント
まだコメントがありません