§幻想舞踏会§ 第二十話~[魔石の意思]による蹂躙~
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§幻想舞踏会§ 第二十話~[魔石の意思]による蹂躙~
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第二十話~[魔石の意志]による蹂躙~
―…最悪のケースは…
<魔石に意志がある>ことです。
作られていようが
自然に生み出されていようが
意志があれば
<学習>し<応用>をするでしょう。
各隊士に分散し、経験を積んだ<意志>が
もし全て、自分自身への
<勉強>としての行動だったなら…
………本当に恐ろしいのは、
すべての隊士が無事解放された後。
<魔石の意志>が行動を起こす時です。
朱の声で全員が空を見上げると、そこには破壊したはずの煉獄の魔石がひとつ
大きく鼓動していた。
「破壊したはずの魔石が…復活している…。」
「いえ、違うわ…よく見て!」
魔石とはもう呼べる代物ではなかった。
塊に見えるソレは大きな石ではなく、沢山の粒子が一か所に集まっている。
それぞれの粒子が悍ましい光を放ち、躍動していた。
それらは全てが呼応するかのように一際大きな鼓動を刻むと、粒子の流れが不規則に動きだし、やがてひとつの造形を成した。
それは誰もが見たことのある形…いや誰しもが持つ形、<人型>となったのだ。
粒子は密度を上げていき、所々あった隙間が無くなって行く。
やがて、黒紫色の完全なる人型へと形成され、開かれた眼はどこまでも飲み込むような漆黒が広がっていた。
「あれが…[魔石の意志]だと言うの…?」
[魔石の意志]は動作を確認するかのように手を握りしめては開いてを繰り返す。
そしてその手をおもむろに伸ばし、偶然正面に位置していただけであろう、白の拠点島へと魔導砲を放った。
白ノ拠点の屋根が吹き飛び、室内が露わになる。
まるで、身体の動きを確認するかのようなその動作は、まさに[意志]を有していた。
次の動作を確認でもするかのように、[魔石の意志]が動こうとした時、
[魔石の意志]の前に、朱とていなんの姿があった。
「完全に駆動するまで…」
「のんびり待つわけねぇだろ!」
朱は[魔石の意志]へと雷を即座に落とし、
ていなんは双剣を生み出し、ブーメランのように投げ飛ばした。
しかし、雷はそのまま地に落ち、投げられた双剣は空を切り、そのままていなんの元へと戻る。
「な…!消えた?」
[魔石の意志]はその場から数メートル離れた位置にいた。
朱が目を見開く。
「あ、あれはかんきゃんの足運び…」
驚いて動きのとまる朱を[魔石の意志]が一瞥すると、自身の影から和傘を数本生み出し空中に何本も浮遊させる。
和傘は開いたままクルクルと回り、空中を散開すると傘の内から何本というトマホークがていなんの投げた双剣の如く、炎を纏って飛び出してきた。
「!?」
朱はとっさに避けたが、それらは広場にいる隊士達へと降りそそぐ。
突然の攻撃に、完全に避けきれた隊士は少なく、広場は混乱が広がった。
特に疲弊していた白光天照隊の隊士達は負傷が酷く、みーの回復が追いつかない程となっている。
「…黒蝶の魔法まで…。」
「爽くんと僕の魔法まで真似されてる。やっかいだね。」
朱の援護にと飛び出した黄隊の攻撃も次々と交わされていき、キャンからコピーされた体術で次々と隊士は叩き落されていく。
「弓式炎鳥術用意!」
ジェイドの掛け声と同時に、火の鳥が放たれる。
[魔石の意志]は先ほどとは打って変わって避けるそぶりを見せない。
しかし、火の鳥が[魔石の意志]へと届くことはなく、突然吹き出した水の渦へと飲み込まれていった。
そして、その渦潮は青から水色、そして黄土色へと変化し、赤炎鳳凰隊へと降りそそぐ。
「あー!泥水パクられてんじゃん!!」
さきが叫び声をあげる。
その声に[魔石の意志]は即座に反応し、さきの元へと雷を落とした。
…しかしさきの悲鳴が上がる事はなかった。
[煉獄の魔石]は隊士達の手数がピタリと止んだことに気づき周囲を見渡す。
先ほどまでいた隊士達が全員姿を消したのだった。
~~~
「助かったわそうまさん…。」
「いえ…。」
隊士を探すように動き回る[魔石の意志]を見下ろすように、レイカとそうまは浮いていた。
負傷した隊士達をかばいながらの戦闘は不可能。
そう判断したレイカとそうまがとった行動は、【隠密】だった。
そうまが島の上空に風魔法によるステルス性を持った浮遊空間を生成、
レイカの転送魔法により一人一人をその空間へと転送したのである。
他の隊士は昨夜の戦闘疲労に併せ、つい先ほどまでの蹂躙とも言える戦闘で満身創痍だった。
「…どうすれば…。」
ここが気づかれるのも時間の問題…
しかし現在攻撃できる隊士は全ての能力がコピーされてしまっている。
難しい顔で後ろの隊士を振り返る、レインのサポートの元、みーが少ない魔力で必死に回復を行っている。
みー自身もケガをしているのにも関わらず…。
「みーさん…、無理は禁物よ。」
「いいんです、私に出来るのはこれくらいです…!
回復は私と姫様しかできませんし…。
こんなとき姫様がいて下されば…」
みーが涙目になりながら、必死に答える。
「「「「…姫様?」」」」
隊長4人の声が揃う。
「そうだよ。いるじゃん切り札。」
「え、でもどこかで謹慎中じゃ…」
「レイカさんの転送術式で呼び出せない?」
「………できるわ。
以前姫様の燃えて破損したお召し物を修復したの。
同じ服を着ておられれば位置情報を特定できる…!」
そうと決まれば話が早い。
そう言わんばかりに、レイカは歌声で術式を展開させた。
「転送が完了するまで、よろしく皆さん。」
「「「了解」」」
そうまはボブ、朱は環、そしてていなんはジェイドを引き連れ飛び出す。
「相手が攻撃できないほどの手数で攻めれば、倒せなくとも時間はかせげる!」
「ボブ、普段ネタキャラなんだから今くらい頑張って。」
「誰のせいだ!誰の!」
「ぐるりん、武器(雪季)は持ってきた?」
「今回はやめといたよ~」
「ジェイド、あの野郎には負けるなよ。」
「ボブですね、かしこまりました。」
[魔石の意志]は、先程までとは表情の違う隊士達の攻撃に予測演算を繰り返していた。
< 演算結果 対象の意図 不明 >
< シカシ 予定 変更ナシ >
< 引キ続キ 現存隊士の蹂躙 続行 >
[魔石の意志]は、攻撃態勢に入った。
…続く。
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