§幻想舞踏会§ 第十八話~魔石の残滓・前編~
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§幻想舞踏会§ 第十八話~魔石の残滓・前編~
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第十八話~魔石の残滓・前編~
翌朝、青風八咫烏隊隊長のそうまにより、隊長権のひとつ『号令の権利』が行使され、それぞれの部隊の隊長が五隊長会合室へと集められた。
「あら、呼んだのはそうまさんだったの?てっきり白の姫様かと思ったわ。」
「確かに…そして姫様来るの遅いね?」
今や白光天照隊の隊士が襲われたのは周知の事実となっており、各隊長はそれに関連する内容での召集だと思っていたようだ。
先に集まった全員がいまだ来ない光姫を待つ中、そうまは暗い顔でひとりうつむいていた。
(もしや姫様は…。)
「…?そうまさんどうしたんですか?」
朱が心配そうに覗きこむ。
「あ、いや…別に…。」
そうまが必死にぎこちない笑顔を作りながら、返事をしたその時。
五つある椅子の内、誰も座っていない席が光り出した。
そこは普段光姫が座っている席だ。
4人はその白い光に目を細める。
『 …… …。
…あー…あー、テステス。
皆さんごきげんよう!聞こえますか~?』
光の中から聞き覚えのある声が響いた。
「…姫様かしら?」
レイカが訝しげに光へ問いかける。
『 おーレイカさん、そうです~!
他の隊長さんもお揃いですか?』
「いるよ。光姫はどうしたのさ、こんな設置式の伝達魔法なんて使って。
ここに来ないの?」
ていなんは頬杖をつきながら眠たげにあくびをした。
『いやー行きたいのは山々なんですけど、
今謹慎中?みたいな感じでして。
昨日違反行為したもんですからエヘヘ。』
「…は?」
『ちょっと青の島へ真夜中に訪問したんですん。
私の可愛い隊士への贈り物をお返しに行こうと思ってね。』
「それってつまり…」
『あーいやいや違うんです。<結果的>には違かったんですよ。』
光姫は淡々と昨日の状況を説明していく。
『件の隊士は煉獄の魔石と同じ魔力オーラを発してました。
胸元の鎖骨中央部にそのオーラが集中していたので、
昨晩はちょっとその部分を小突いたら魔石の気配が無くなりましたの。』
(……小突いた?)
そうまが昨日の出来事を振り返る。あの威力で小突かれたらたまったもんじゃない。
(…操られたのが僕じゃなくて良かった…。ボブは良く五体満足で生きてるな…。)
「率直に言うと、その操られていた隊士はさきちゃんだったんだ。
今朝目が覚めたら、自分の行為を断片的に覚えてたみたいで今落ち込んでるよ。
自室で待機するよう伝えてある。」
「ちょっとまって。魔石はもう破壊したでしょ?
まだ終わってないって事?」
ていなんが目を見開く。
レイカと朱も黙ったまま難しい顔になってしまった。
『………。
どうやら魔石に影響を受けた隊士が他にもいるみたいなんです。』
「どうしてそれを?」
『昨日謹慎として別次元に行く前に軽く島全体をスキャンしたら、
さきさんと同じ気配が他の島からもしましたので。』
光姫の一言に、全員の顔色が変わる。
「…姫様、私達はどうすればいいの?」
隊長の中で一番冷静に状況を判断しているレイカは、即座に思考を整える。
『…ここからは、私が予測する中で、
< こうでないといい >と思ってる内容なので、
片耳半分位に聞いていただければ有難いです…
この後、…――― 』
~~~
初めての事件から、3回目の夜。
夜でも淡く光を放つ拠点の島から広場へと出てくる人影があった。
熊のキグルミを着るその人物は、広場をまっすぐと進み、中央の噴水広場もそのまま通り過ぎる。
見えてきたのは、雷の轟く島へと続く橋の入り口だった。
橋の入り口では黄晶麒麟隊の朱が拠点島の方へと向きながら立ってる。
キグルミの頭部分のみ脱いだシャアは物質干渉魔法を発動、両手に備わっている爪を長く鋭利に変形させる。
そして未だ、背を向けたままの朱へと飛びかかって行った。
~~~
「…眠い。」
普段ならもう寝ている時間にも関わらず、ていなんは自身の拠点島への入り口となる橋のそばで、木に靠れかかていた。
「…いやもう本当眠い。」
何度目だろうか、同じ言葉を繰り返しながら眠い目をこする。
ふと目を開けるとさっきまであったはずの月明かりが所々丸い影によって地面に届いていない。
視線を上へと向けると、いくつもの黒い傘が浮いていた。
傘には黒いオーラによる細い糸のようなものが繋がっており、その糸はていなんがいる位置と橋を挟んで反対の方へと集まっている。
「…でてきなよ。」
ていなんは植林の奥に広がる闇へ向けて声をかける。
ゆっくりと現れたのは、傘をかしげながらこちらを見据える
黒闇夜叉隊の黒蝶だった。
「…わーお。美人な子猫ちゃんが、さらに美しく見える三条件がまさに揃ってるね!」
黒蝶は静かに片手を振り下ろすと、ていなんに向かって宙を舞う傘が切っ先を揃えて襲い掛かってきた。
~~~
シャアが中央の噴水を通り過ぎたあとに、その場に現れたのは黒闇夜叉隊のレイカだった。
(黒蝶の魔力を感じる…。)
静かに拠点島を出て行った黒蝶の後追っていたのだが、シャアが広場に現れたとこで身を隠した為見失ってしまっていた。
振り向きもせずにまっすぐと歩を進めるシャアの後ろ姿を見つめるレイカ。
「…どうやら、姫様の予想通りの事態になりそうね。
最悪の事態だけは避けたいわ…。」
腕を組み、静かに立つレイカがシャアを見つめているその背後には
高く飛び上がり、落下速度をそのままに足を振り下ろす人影が現れていた。
~~~
「まりちゃん!まだ安静にしてて!」
白の拠点島の入り口ではまりーをみーが必死に引っ張っていた。
「私はもう大丈夫。だから行かせて。
しーちゃんが黙って出て行ったし
姫様も昨日から戻らない…。
私がなんとかしなきゃ…」
「それでも危ないよ!」
「知ってるでしょう?
私達白ノ国は本来戦闘向きの魔法を持つ人間は少ない。
だからこそ私が…」
まりーが言葉を止めて、視線を広場の方へと向ける。
みーもまりーの様子に気が付き、同じ方向を恐る恐る見ると、
夜闇から赤い炎を纏った、1人の少年が現れた。
「…爽くん。どうしたのこんな夜に?」
まりーはみーを背に庇いながら話しかける。
赤炎鳳凰隊の爽はまりーの質問に答えず、炎で作られたトマホークを生み出す。
(この感じ…いつもの爽くんじゃない。)
まりーの額から一筋の冷や汗が流れた。
(……姫様…!)
…続く。
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