§幻想舞踏会§ 第十三話~第二回戦・黄橡の間~
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§幻想舞踏会§ 第十三話~第二回戦・黄橡の間~
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第十三話~第二回戦・黄橡の間~
※ファンタジー要素がかなり濃いめです。
苦手な方はスルーでお願い致します。
試合の中でも特に印象的だった試合又はシーンをストーリー調に編集しました。
黄橡の間・第五試合は
舞踏会にて踊り合った者同士が再び逢瀬を迎えていた。
黒闇夜叉隊のなるせと黄晶麒麟隊の朱は張り詰めた空気の中向かい合った。
なるせが自分を勇める様に話し出す。
「相手がどれだけ強いかは身をもってわかっています。
ですが、負けるために来たのではありません。」
―…春を待つ胸が苦しいのだ
開けた目に花は時雨
さよならが君といた対価だ
その罪が僕の罰だ
なるせの歌声は彼女の両手へと集中し、指の先から糸が長く意思を持つかのように動きながら伸びていった。
十本の糸の先には、鋭い針が姿を現し、
下、横、上、様々な方向から狙いを定めた。
朱は臆することなく前を見据える。
「隊士達に支えられている私は簡単には負けません。」
(心臓が口から飛び出しそうだ…)
―…好きとか嫌いとか欲しいとか
気持いいだけの台詞でしょう
ああ白黒付けるには相応しい
‥滅びの呪文だけれど‥
朱の歌声は破裂音とともに黄色い閃光を生み出し、両手両足にエネルギーを集中させた。
帯電している影響で朱の髪は広がり、麒麟のたてがみのようになる。
その後は、一言に「一瞬」だった。
朱が姿を消したと思うと、
なるせのすべての針が叩き折られたのである。
宝石が七色に光り、闘技場の上空に文字を映し出す。
最終試合
勝者、
黄晶麒麟隊 朱
~~~
雷の光る拠点島では、バレンタインによる雪季の暴走をキャンがいつものように止めていた。
「かんねぇー♡バレンタインチョコとして
全身にチョコを浴びた私を受け取って♡」
甘い香りをまき散らし、全身をチョコで茶色くした雪季がキャンへ飛びかかる。
それを片手で制し、あきれたように溜息をついた。
「いらん。」
「ひどい!食べ物(と私)を粗末にしないで!?」
「………。
食べてもいいけど、私は舐めるなんてことはせず中身(雪季)ごと噛み砕くけどいい?」
「それは痛いからやめて!優しく舐めて!!」
「私はチョコはバリボリ噛み砕いて食べる派なんだ…♪」
「真っ赤になる!茶色い私が真っ赤になる!!」
そんなやりとりをしてると、夜蝶がカメラ片手に島へ飛び込んできた。
「かんきゃん!広場来て!姫様が呼んでる!」
「白の国の…?わかったいくよ♪」
そういうと、キャンは雪季の首から下を地面に埋めて夜蝶と広場へ向かった。
~~~
キャンが呼ばれる数刻前、
広場では様々な隊士が集まり、雑談に花を咲かせていた。
レイカはクマの着ぐるみを着込んだシャアの毛皮を店に利用できないかと考察。
光姫へと打診していた。
「あの毛皮頂いてもよろしくて?」
「ああ、中身の人間だけ返してくださればかまいませんよ。」
「じゃあ次の日半裸になった彼女が広場に転がっているかも。」
「まってwなんで半裸ww」
そんな他愛のない(?)会話を広げている隣を、ボブが通りがかった。
「こんにちは、何やら盛り上がっておりますね。」
レイカが悪戯に答える。
「白の国は裸の国って話のところよ。」
そして彼はまたやらかした。
そばに光姫がいるにも関わらず…
「 みぃさんはそんなことないと思います。唯一まともな方ですから。」
その返答にピタリと会話が止まる。
最初に口を開いたのは、笑顔の張り付いた光姫だった。
「……ふぅん…
私の可愛い可愛い
レインさんも
夜さんも
しゃーさんも
まりーさんも
そして…私も
まともじゃないと…」
「え、いやそn」
「僕も混ざる!」
突然現れたていなんは、なぜかまりーを横抱きにしていた。
ここは物語上ややこしいので割愛。
まりーも会話を聞いていたようで、
「みーちゃんが唯一まとも...?
唯一....??
ゆいいつ??」
レインさんもボブへと駆け寄る。
「まともじゃないって酷いです!!」
「いえ違うんです!抜けてたというかあなたは隊を超えてグローバr…」
「あら、つまりみーさんとレインさん以外はまともじゃないのね。
私は裸の国と言っただけなのに墓穴を掘ったわね。」
「夜蝶さん。キャンさん呼んできて。」
「はいっ」
なんだなんだと集まる隊士達、
そして、光姫の周囲に光りだす光球と真っ青なボブ。
そして、周囲の女性の表情で、全員が察した。
(ボブドンマイ。)
こうしてキャンが呼び出されたのである。
軽く事情を聴いていたキャンもすでに戦闘モードへと移行済み。
「ちょっとボブさん…、あ、お久しぶりです(^ω^)
れいんちゃんをまともじゃないだなんて何事ですか(^ω^)にこにこ」
「あらあら…今回は私が直接手を下さなくても良いみたいですねぇ…」
光姫はにこやかにほほ笑む。
「まりーさん魔力制限解除です。
まともじゃないならば…ふふふ
私達がどれだけまともじゃないか見せてあげようではありませんか…
…魔法強化術式展開!」
光姫の言葉と同時にその場にいる隊士全てに強化術式が展開された。
(ボブを除く。)
その声と同時に、ボブが跳ねる様に逃走を図る。
「どこいくんですか!」
むくれたレインがボブをがっしりとつかんでいた。
「は、離してください!今はまずいんですって!!」
「やです!私の事忘れたんですか!?レインです!!」
「いやわかってますが今の状況を考えて!!空気読んで!!」
「いーやーでーすー!」
「あーもう!!」
そう言うと、ボブはレインを抱き上げ走り出す。
いや、走りだそうとして止まった。
動けないことに気が付いたのだ。
「あら。攻撃魔法はあまり得意ではないのだけれどさすが光姫様ね?わたしでもそれなりに操れそうだわ。
直接捕縛はしていないけれど……目を凝らしてみて。貴方の周りに糸が張り巡らされているのがわかるでしょう?
魔術で強化された鋭利な糸……きっと触れただけで瞬間よく斬れるわよ。攻撃を避けるかズタズタになるのか……貴方はどっちを選ぶのかしらね?」
レイカはボブの周囲に硬化された糸をピアノ線のように張り巡らせた。
ボブは背後の気配を察し、魔法で大量の分身を作り出す。
それと同時に、ていなん、ジェイド、爽が飛び出してきた。
「太陽の化身、烏よ。
我が意志、魂に集え。右翼は月のように黒く、左翼は太陽のように赤く燃える翼となりて、我が体を守らんとする…!!
鳳凰よ!仇なす者に裁きを加えん!!」
「全ての熱源よ集え。今宵我が織り成す集大成の儀。その身を持って褒美と知れ!
-炎熱の儀-最終形態-渦状大爆炎-」
「初めまして、ボブさん💦
ボブさんには僕自身は何の恨みもありませんが、光姫様もといていなん様のご命令という事で…覚悟して下さい」
炎の三連撃に分身がすべて灰燼となる。
しかし、ボブは無事だった。
レインの無意識の干渉術式により魔法強化でボブ自身が強化されていたためである。
(第十二話参照)
そしてその干渉術式の反応に気が付いたのは光姫だった。
「…まりーさん、攻撃術式。」
「はい。
…我が光よ、我の声を聞き、かの者を照らせ。光よ、我が敵に天からの鉄槌を。射貫け光!ボブという悪党を滅ぼし給え!!」
上空から光がボブへと降りそそぐ。
いくら強化されたボブといえど、この連続に魔力が枯渇寸前となる。
(逃げなきゃ…。)
土煙が立ち込め、視界不良となった広場をこそこそと動き出すボブの肩に、やさしく手が置かれた。
「みい〜つけた(^ω^)にたぁ
姫様とレイカさんの攻撃だけで終わると思うなよ。
れいんちゃんは返してもらうよ。」
―… 雷纏月墜蹴
雷と戦闘民族並みの怪力による踵落としは中央広場へ大きな亀裂を作り出した。
ボブは、威力を相殺する力もなく、青の拠点等へと飛んで行った。
キャンはレインを抱き留め、雷魔法を解除する。
「…やば。また地形破壊しちゃった…。」
七色の宝石が今回破壊された分の地形を修復するのには、今までで一番時間を要した。
また、そんな上空の騒動を知らぬ大陸の国民たちは、上空で繰り広げられている国を賭けた壮絶な戦いと勘違いし、
歓声が響き渡った。
~~~
青の拠点では真っ黒になったボブが拠点の前でのびていた。
お菓子をほうばりながらさきがボブに近寄る。
「またなんかしたの?」
「…一回だけ…失言をしたことは認めよう…。」
「バカだねー」
「オーバーキルにもほどがある…」
ボブは体力も魔力も枯渇し、もはや立つ気力も無かった。
「あ、そうだ。そうまにボブ探して来いって言われてハンペンがそっちに行ったはずなんだけど。
はんぺん来た?」
「ああ、ちょっと現れたと思ったら戦場と化した広場を察して逃げやがったよ。あとでシメる。」
「そっか。じゃあ聞いてないよね。
玲華、国に帰るってさ。なんでも論文で憧れの研究室からお呼ばれされたみたい。」
「なんだって!じゃあ新しい隊士が来るのか?」
「うん、さっきこっちの人間レポートも続けたいからって後任として玲華の後輩とは思えないくらい可愛い眠井くんが来たよ。
今から歓迎会するところ。ほらいくよ!」
「な…ちょ、ちょっと…俺今歩けな…」
さきはスタスタと室内へ入っていく。
そしてしばらくすると楽しい談笑が聞こえて来た。
ボブはその後、ハンペンが心配して様子を見に来るまで、外で放置された。
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