nana

【声劇台本】浮き世の狭間
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若いながらも売れっ子花魁と魅せられてしまった男の不器用な両片想い。もし、想いが通じあったらこの人達は添い遂げられるよう努力すると思います。 前半は初めて床入りした懐古、後半はもう馴染みになった現在のお話です。 花魁が男娼でもおかしくないように書いてあります。 ☆ざっくり花柳界説明 禿や新造(見習い期間)を経て水揚げ(初めての床入り)をします。最上級から花魁散茶格子と色々ランク分けされてますが、今回はわかりやすく大夫という名称を使ってます。人気具合は高級見世の上から4番目くらいの売れっ子のイメージです。男娼は少年から青年期の男で女装をして男の相手をしてます。 ・「〜なんし」→なさい。 ・「しゃれなんすな」→相手の言葉を流す言葉 ・間夫→春をひさぐ人達の本命相手 ・浮き世の柳→情事の「浮き世」と花柳界の「柳」 ♦︎大夫(たゆう/だゆう) 売られてきたのは10歳前後で修行を数年重ね、水揚げして間もない若手売れっ子。仕事熱心で金にならない男には見向きもしなかった。 ♠︎客 振袖新造(見習い)の頃の大夫に惚れて、それなりにモテるのに恋人も作らず博打もせずせっせとお金を貯めて会いに来た商家の次男坊。 -------------------------- ♦︎「あぁ、やっと動きんした」 ♠︎「……大夫が、あまりに美しくてな、石にされていた」 ♦︎「ふふ、わっちは妖(あやかし)では なさんす」 ♠︎そう笑った大夫の唇の紅が今でも鮮明に蘇る。 ♠︎あの時俺は、白い肌に浮かぶ赤に吸い寄せられ、口に含めば後戻りはできない毒に吸い付いた。 ♦︎「…甘いでござんしょう?」 ♠︎「よく、わからなかった、な」 ♦︎移り紅を見てなにかがぞくりと背を走れば、嗚呼、それはきっと予感だった。 ♦︎間夫(まぶ)など作らぬと心に決めたのに。 ♠︎「名は教えてくれないのか」 ♦︎「しゃれなんすな。まだ月が高い」 ♠︎「それもそうだ…」 ※ ♦︎触れる優しい指先と切なげに細める眼が心を揺らす。 ♦︎主に逢えぬと泣く日を指折り数え待つなぞ似合わぬ。 ♦︎わっちの中の恋心が泣く日が来るなんて思うたこともない。 ♦︎なのに、どうして。 ♠︎浮き世の柳だと知りながら、手を伸ばす。 ♠︎上等な布に手をかけて、暴きたいのは心の奥だ。 ♠︎隠しきれぬこの想いが報われなくても求めることはやめられない。 ♠︎泡沫(うたかた)と消えゆく夢を忘れられぬ愚かな男と笑えばいい。 -------------------------- 和風台本まとめ https://nana-music.com/playlists/2141579/ #声劇台本 #和風 #2人声劇

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