§幻想舞踏会§ 第十一話~青ノ国の新隊士~
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第十一話~青ノ国の新隊士~
「愛次くん元気かなぁ~」
「やっぱりアレじゃないか?玲華の実験の後遺症じゃないか?」
「失礼ね!あの程度どうってことないわよ!」
「はは…玲華の物差しは僕達と違うからなぁ~」
青の拠点島では、声の体調不良により、戦線離脱した愛次の話題で雑談がされていた。
天空告知板によると、青ノ国より新たに隊士が本日招かれるらしく
全員で新しい隊士を待っていた。
「でも先輩、新しい隊士って誰が来るんすかね?」
「うーん…多分同じ学内から父さんが見繕うんじゃないか?」
「そうまの父親だ、そうまに似てクセの強い人間を選別しないと良いが…。」
「私女の子がいいな~!お菓子パーティするの!」
「私は男がいいわね。手加減無しでできるから」
「玲華先輩…男に容赦なさすぎっす…。」
どのくらい話していただろうか、空に浮かぶ宝石が、七色の光を帯び始めると
5人の数メートル先に光を放ち始めた。
光はつむじ風のように一か所に集まると形を成していき、
『きゃあ!』
可愛らいしい悲鳴と共に、その光は霧散した。
光の中から現れた、そうま達と同じ制服を着た少女に、いち早く反応したの
ハンペンだった。
「あれ!?夢羽ちゃん?」
夢羽と呼ばれた少女はバランスを崩し尻餅をついていた。
『いたた…、あ、ハンペンくん!ひさしぶり!』
「なんだ、ハンペンお前の知り合いか?」
「はい!同級生なんですよ!」
「へえ、父さんもずいぶんまた可愛い子を選んだね~
あ、僕はそうま。理事長から聞いてると思うけどよろしくね。」
「はじめまして、玲華よ(チッ女子だとあの実験はできないわね…)」
「やったー!女の子~!私さき!よろしくね♪」
「ボブだ。まあ、そのなんだ、よろしく。」
『はい!精一杯頑張ります!宜しくお願いします!』
素早く立ち上がると、夢羽は勢いよく一礼した。
~~~
さきの用意したお菓子を食べつつ6人は作戦会議もかねて雑談していた。
「ところで…、夢羽ちゃんはよく隊士になってくれたね。何て理事長に勧誘されたの?」
『あ、いえ。私は自分で隊士を志願したんです。』
「そりゃまた珍しい…。どうしてだ?」
夢羽は頬を赤らめてモジモジとしたかと思うと、パっと顔を上げた。
『わ、私憧れの人がいて!でも国が違うしまだ学生の私には遠いお方で…、でもここなら少しでもお近づきになれるかなって…!』
キラキラとした目で語る彼女はまるで恋する乙女のようだった。
「それはまた珍しい志望動機ね。」
「人間観察目的のれーちゃんに言われたくないと思う(モグモグ)」
「僕、目的すらなく強制連行だったけど…。」
「ん?何か言ったかな?」
「イエ、ナンデモアリマセン」
「で、その憧れの人ってのは…」
『はい!クールなのですが華やかさもあり、人望もあり淑女の鑑のような方です!』
「…レイカさんか?」
「その他にこの島でそんな女性いると思うか、そうま。
ほぼドSか変態か動物だと思うぞ。」
「ボブ、それ広場で言ったらまた半殺しにされるからここだけにしておこうね。」
~~~
話がひと段落した一行のうち、ボブとそうまは夢羽に施設案内をする為中央広場に来ていた。
歩きながら次々と説明をしていく。
「ここは自由に使って良い中央広場って言うんだ。全部の隊の隊士が出入りしているよ。
ただし北エリアは立ち入り禁止になってるから気を付けてね。」
『はい』
「あっちの光ってる拠点が白の国、
夜のような綺麗な黒い拠点が黒の国、
松明のような火が見える拠点は赤の国、
雷が鳴っている拠点は黄の国、
それぞれの拠点島だから立ち入りは禁止されて…」
広場から見える島々を説明しているそうまは、夢羽が一番最初に説明した白く光る拠点島をうっとりと眺めている夢羽を見て、一種の予感が走った。
(…。いやまさかね…。女の子は光物が好きって聞くし…。)
「…あれ、そういえばボブは…。」
ボブがいつの間にかいない事に気づき、周囲を見渡すと
「ボ、ボブ…でいいんですか?」
「ええ、呼び捨てで構いません。」
なぜか白の国のまりーと桃色の雰囲気を周囲へ造り出していた。
「ボブ、なにいちゃついてるの?」
「なっ!そうま、違うぞ!これは仲良くなって敬称が煩わしくなったからでな…!」
必死に言い訳をしているボブの真横でシャッター音が鳴り響く。
その音に全員が視線を向けると、黄晶麒麟隊の夜蝶が絶え間なくカメラで撮影をしていた。
「姫様に報告だね!」
「なっ!ちょっと待て!そのデータをよこせ!!」
電気を足元に発生させ、素早く逃げ回る夜蝶に追いつけるはずもなく、ボブは振り回されていた。
「あ~…これは」
『そうま先輩どうしました?』
事の行く末を察したそうまは、夢羽の手を引く。
「もうちょっと離れておこうか。怪我しないように。」
『?…は、はい。』
しばらくすると、
白光天照隊隊長の光姫と
黒闇夜叉隊隊長のレイカが
歓談しながら歩いてきた。
夜蝶は一目散に二隊長の下へ駆け寄ると、メモと写真を数枚渡した。
そのメモに目を通す二人の表情が変わっていく。
「…今度は私のまりーさんに手を出したのボブさん…?」
「うちのふあのんの事、もてあそんだのかしら…?」
白と黒の負のオーラが周囲へと溢れ出る。
「誤解です!!!まりーさんに手はまだ出しておらず、ふあのんさんとは健全な(コラボの)お付き合いが…!」
「「問答無用です!」」
レイカはボブを黒の糸で縛り上げ、
光姫は頭上から光球を無慈悲に落とした。
「ギャアアアアアアア!!」
~~~
「あはは、いや~ボブは本当天然たらしだねぇ。」
笑いながら、ボブが潰されるのを見ていると、隣から夢羽の声が漏れ出ているのが聴こえた。
『す……素敵……!』
(ああやっぱりか。)
「本当に憧れてるんだねぇ。」
『はい!』
「お前たち…、少しは助けてくれても…。」
はいつくばりながらこちらへ寄ってくるボブへ薬草を渡す。
「ボブが天然イケメンたらし野郎だからいけないんだよ~。」
「なんだその不本意すぎる呼び名は…!」
「でも、ボブのおかげで夢羽ちゃんの憧れの人を近くで見る事ができたみたいだから今回はナイス働きだよ☆」
「…む、そうなのか?」
夢羽は目をキラキラさせて答える。
『はい!ありがとうございます!!』
そうまとボブは顔を見合わせる。
「本当に(レイカさんが)憧れなんだね。」
「まあ(レイカさんなら)確かにわかるな。」
『…(…はぁ、本当素敵。【光姫様】…)。』
この誤解が解けるのは、また別のお話。
~~~
こうして、物語は次の試合へと移り変わる。
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