§幻想舞踏会§ 第五話~黄ノ国の意思~
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§幻想舞踏会§ 第五話~黄ノ国の意思~
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第五話~黄ノ国の意思~
黄の国では、歌により発現する不思議な力である『魔法』の強さよりも、『鍛冶』が重要視される国であった。
鉱脈の豊かなその国は様々な種類の鉱石・宝石が採掘される資源国であり、必然的に鍛冶屋が多かった。
交流国である白・黒・赤・青の国とは上手く外交を行っていたが、そのあふれんばかりの資源を狙って他国が攻めてくることが過去にあった。
黄の国の民は自身らが打ち鍛えた武器をとり、戦い自国を守った背景もあったため、武器を作り上げる鍛冶屋がいまだに多く建ち並んでいる。
金槌が真っ赤に光り輝く鉄を打つ音が、昼夜問わず響く街並みを国で最も高い建造物である王宮から眺める一人の姿があった。
現国王である。
先日のお告げともいえる飛行物体からのメッセージに対して、他国が参戦するとの報告をうけた国王は、自国も参加するか悩んでいた。
(言の葉を音に乗せ…という文は『歌』…すなわち『魔法』で間違い無いだろう…
しかし我が国はなによりも鍛冶の腕が重要視される国…。
魔法に突出した者など…宰相くらいしか把握しておらん…。)
眉間にしわを寄せ悩む国王は、重く静かな溜息をひとつつくと、声をあげた。
「…宰相である、朱をここへ呼んで参れ。」
~~~
『お呼びですか、国王陛下。』
「うむ…、呼びたてたのはほかでもない、
先日の空に現れた宝石と島々からのお告げについてだ。」
『…まさか参戦するおつもりで?』
「文中にあった、麒麟の加護を受けし国とは、我が国の事であろう。
他のすべての国は参加するのだ、こちらも一手を打たねばん。」
朱は難しい顔をする。
『お言葉ですが、我が国は騎士は居れど他国のような魔導部隊はおりません。六名を選出するのにはいささか厳しいかと…
私もできることなら我が国の勝利を願いたいところですが…』
「…そうだ。」
王は腕を組み、宰相へと振り返る。
「朱、おぬしが隊長を勤め、隊士を国民より集めよ。」
『…へ?』
国王は名案とも言わんばかりに声を躍らせる。
「うん、そうだ、それがいい!お主はこの王宮で唯一魔法に長けている。
国をまわり、適正者を集めてまわるのだ!
その間の宰相としての職務は次席官にさせるとしよう。
引き継ぎを済ませ、直ぐにでも城下へ行くのだ!」
『えええ!?ちょっ…まって…』
「昔他国が我が領土を侵犯してきたときの英雄部隊から、
【黄晶麒麟隊】と名を授けよう。
黄玉(トパーズ)の如く希望に満ち溢れた先駆者が、
磨けば光る原石から選りすぐり、
鋼鉄のような硬き意思を持ち、
打ち鳴らす金槌のように力強く、
雷光のように速く
雷鳴のように響きわたる
そんな部隊を作り上げるのだ。
勿論黄玉の如き先駆者はお主だ、隊長。」
『こ、国王…それは無茶ぶr…』
使用人に腕を組まれ、宰相は退席させられた。
こうして、隊長の隊士探しは本人の意思を無視して始まったのである。
~~~
半ば投げ出されるように城から出てきた朱は、とぼとぼと城下への道を歩いていた。
『…まさかこんなことに…。
しかし戦いまで時間はない…、これで王の意向に沿えなければ…げ、減給…!?
頑張らなきゃ…』
元々部隊が編制されたら自分も志願しようとしていたのだ、今更なげく必要などない。
そう言い聞かせて、朱は思考を巡らせる。
(広大な国をやみくもに行くわけにはいかない、幸い私は唯一ともいえるが魔法に長けてる人物を一人知っている、そこから当たろう。)
朱が向かったのは、王族直轄の兵士の武器を仕入れている鍛冶屋へ向かった。
その鍛冶屋は国で一番と謳われる鍛冶屋であるにも関わらず、小ぢんまりとした店だった。
入口の暖簾をくぐり、朱は奥の人影に声をかける。
『環、頼みがあってきたんだけど今大丈夫?』
「ん?宰相殿じゃないですか、どうしました?」
環と呼ばれた店主は金槌を置き、手袋を外しながら歩み寄る。
朱の友人であり、知る中で唯一自身と同じく魔法を扱える相手だった。
『今は従者もいないし普通でいいよ。頼みがあってきたんだ。』
「なにかな?できることなら聞くよ。」
朱は国王からの命を伝える。
「…こんな一端の鍛冶屋でも良ければ、朱の頼みでもあるし付き合うよ!」
『ありがとう!』
環は快諾してくれた。
「で、残り4人は?」
『…そ、それが宛がなくて…。
知り合いに魔法に長けてる人いない?』
「………国を背負うのに幸先が不安すぎるな…。」
環は腕を腰に当て天井をあおぎつつ考える。
「魔法力も大事だけど、
王様はどんな部隊を御所望なの?」
『え…っと、たしか
鋼鉄のような硬き意思を持ち、
打ち鳴らす金槌のように力強く、
雷光のように速く
雷鳴のように響きわたる
そんな部隊を…って言ってたな。』
「ふむ…。力強い奴なら宛があるな…。
おーい、キャン!」
環は店の奥に向かって声を張ると、三つ編みで髪を結った従業員とおぼしき人物が顔をだした。
「およびで~?」
「うん、キャン、君も一緒に行こう。」
「ハイ?まあ店長の意向なら従いますよ。」
「うんうん!いい子だ!
朱、紹介するよ。うちの鍛冶弟子のキャン。
魔法もそこそこ使えて持て余してたから、うちで育ててる。」
『おお!よろしくキャン!』
「宰相様…?え、なんの話ですか?」
朱は、同様の内容をキャンにも説明した。
~~~
「ん、鋼鉄の意思?なら適任は知り合いにいますね!」
『本当!?ぜひ紹介してほしいな!』
「呼べば来ますよ、すぐ。」
そういうとキャンは、ポケットから電子端末を取り出しどこかへメールを打つ。
送信して5分と立たないうちに、こちらへと走って来る足音が聞こえてきたかと思うと、一人の人物が店に飛び込んできた。
「キャン!!」
「やあ、雪季。」
「ついに私の運営するクラブに入ってくれるの!?うれしい!
あなたの魔法を見てから早〇年△ヵ月と◇日!!
毎日毎日ずっと勧誘していたかいがあったわ~♪
今日こそこっちの世界に引きずりこん…じゃなった
招き入れてあげるわぁ!」
矢継ぎ早に嬉しそうに話す雪季と呼ばれた女性に対して、キャンはいたって冷静だった。
「や、あれ嘘。」
「うそぉ!?なんで!?私のことだましたの?」
「うん。」
がっくりと項垂れる雪季をよそにキャンが続ける。
「彼女が鋼鉄の意思にぴったりかと。
魔法による実験を主に活動しているマジッククラブの雪季です。」
『は、はじめまして…。』
「…?なに?なんの話?」
朱は説明をする。
「え、私が隊士に…?
しかも色んな魔法が見れるの…!?
ぜひぜひ!キャンもいるならなおさらよ!
それに私も隊士になりえる人材の宛てがあるわ、
なにせクラブの運営者よ?」
『本当ですか!?』
「もちろん!紹介するからついてきて!」
こうして、4人は彼女の運営するクラブの施設へと向かった。
~~~
「ついた、ここよ♪」
雪季に促されるまま建物に入ると、3人を待たせて一人別室へ入って行った。
しばらくすると、2人の女性を引き連れて戻ってきた。
「紹介するわ、こちらが珀斗、夜蝶よ。
こんかいの隊士にぴったりだと思うの。
夜蝶は、まだ新入りだけど伸びしろがあるの戦いの中でも成長すると思うわ。」
『珀斗さんはどのような方で?』
「もちろん珀斗も私が薦めるんだもの、実力は折り紙付きよ?
なによりピ〇チュウみたいだし☆」
『え?』
「ピカ〇ュウ」
「雪季…それは別のアニメの制作会社から訴えられるからやめなさい…。」
キャンがため息交じりに雪季の口をふさいだ。
「朱、良かったじゃない!これで6人揃ったよ!」
環は嬉しそうに朱の肩をたたく。
朱は反対に難しそうな顔をしていた。
『揃ったはいいけど、これからどうするんだろう…。
あの島へはどうやって行けば…。』
そう言いながら、6人は建物を出たとたん、
空から光が差し込み、全員を包みだした。
「キャー!!なにこれなにこれ!!♡」
「魔法オタクめ!」
キャンが雪季へのツッコミを忘れずに行いつつも驚いている。
「朱!もしかしてこれがその【招かれる】ってやつか!?」
『そ、そうかもしれないっ!』
阿鼻叫喚の声がクラブ前に響きながら、6人の姿は消えてなくなった。
その声だけを聞いていた、周辺の住民はそのクラブで何が起こっているのかと噂が次々に流れ、
6人が旅立った数日後には、不審者(変態)警戒網がしかれるほどにとなっていた。
~~~
こうして、五つの国の隊士は島へと招かれていった。
全ての隊士が揃った今。
天下統一を掛けて、戦いが始まる。
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【第一章】隊士の集結 完
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