
遠く遠く
槇原敬之
北の春【後編】~ノンフィクション~ 「東京なんて飛行機ですぐだから、月一で会いに行けるし」 女性の言葉には、遠距離でもやっていける、もうタケルの彼女として想像している、一抹の期待を抱き鼓舞する姿が見えた。 「でも、迷惑かな?東京だったらかわいい娘いっぱいいるし、出会いいっぱいあるよね」 「ラーメン屋だからね」 実際、ラーメン屋さんが彼女を作りにくい環境であるかどうかはわからないが、その男性としては諦めてほしくないというおもいから、出会いが少なそうなイメージを言ったのだろう。 「お客で来たひとに一目惚れして、連絡先交換したりとか」 一度考え出すと、彼女の妄想はどんどん負へと転がりだしていた。 「アイツ、今まで付き合ったの4人ぐらいでしょ。彼女できても男友達とかに言わないからあんまりわからないけど、恋愛体質じゃないし浮気とかはしないよね」 「ほんと、そういうとこかわいい!」 男性の必死のフォローは、タケルの実直さをものがたり、彼女にとってますます素敵な人物像を作り出していたように見えた。 「もう、時間ないよ」 焦らせる男性の言葉には、なんとかうまくいってほしいと、純に願う気持ちが伝わった。 「でも、スマホ使えないんでしょ?連絡できないし...」 「おれ、言っといてやるか?アイツに」 「うん」 「あっ、でもいつスマホ使えるようになるかわからないしな」 「じゃあだめじゃん」 「でもこのままでいいの?」 「よくないけど...」 実はもう、この車両に乗る前までは、このタケルの友達と会う前までは、女性はこの運命を受け入れ、半ば諦めかけていたことを語り始めた。 「いまからタケルの家行く?」 男性はそんな語りを聴きつつ、考えを巡らせていたのか不意に女性に問いかけた。 「えっ?今から?」 唐突な提案にそのあとの言葉がでない女性。 「俺送ってやるよ」 「で、でも、バイト終わりで汗かいてるし、こんな姿じゃ恥ずかしい」 会いたい気持ちと、恥ずかしい気持ちとの狭間で戸惑う女性は、その場でYESの返答はしなかった。 暫くして、最寄の駅で降りた二人。 タケルの話で盛り上がりながら、改札へと階段をかけ上がる二人の姿はすぐに見えなくなった。 -おわり- この後、この二人はどうなったのでしょうね!? オチのない長文で失礼致しました<(_ _*)>
