
FINAL DISTANCE
宇多田ヒカル
『守りたいものすべてへ』 (以下 追記 2016.5.8) "山下玲奈ちゃんへ 守りたいものすべてへ" 宇多田ヒカル 6.15.2001 今回の投稿曲、「FINAL DISTANCE」がシングルカットで発売された際、こう書かれたメッセージカードが同封されました。このメッセージカードのお話からさせていただきたいと思います。 2001年6月8日。大阪の教育大付属池田小学校という小学校で、凄惨な事件が起きました。出刃包丁を持った大人の男が校内に侵入し、次々と子供たちに襲いかかり、8人の幼い命を奪ったのです。当時を過ごした方なら、まだ記憶に新しい事件かも知れません。 その奪われた命の一つ。山下玲奈ちゃんという、当時8歳だった女の子がいました。彼女は、当時Jpopの中でもひときわ輝くスターだった宇多田ヒカルの大ファンだったといいます。新曲のレコーディング中にこの事実を知った宇多田は、大変なショックを受けました。「ほんとうに悔しくて悲しくて、なにか私に出来ないかっていろいろ考えた。」当時、彼女はこのように語っています。この時宇多田はまだ18歳。大スターとはいえ、まだハタチにも満たない彼女が、悲しく、大人でも目を背けてきたこの社会の闇に、誠実に向き合うことを決めたのでした。そして完成したのが、この「FINAL DISTANCE」という曲です。 「I wanna be with you now 二人でDistance 縮めて 今なら間に合うから We can start sooner やっぱり I wanna be with you…」 今回のテーマ、「いじめ」について考えた時、真っ先に浮かんだのがこの曲でした。なぜ人は人をいじめるのか。それは決して「強いから」でも、「横暴だから」でもありません。「孤独だから」です。 これほど、他人との距離感をはかるのが難しい時代が今まであったでしょうか。発展するインターネットは、人と人との真のコミュニケーションの機会を奪い、ことばはより空虚なものになってしまいまっています。多くの人が、他人との間に不安を抱えている。その結果、暴力、差別、虐待などという、簡単に自分の立場を形成できる手段を使ってしまう。 やっぱり、このままではいけない、と私は思っています。 「I wanna be with you」 私は、あなたの、そばにいたい。 純粋な愛です。恋人同士、友人同士、あるいは、家族の間の。私達は、この「孤独」「距離」、そしてその延長線上にある「いじめ」という問題について考える時、この「愛」がすべての答えになるのではないかと思います。 私もまた、彼女のように、この投稿を「守りたいものすべてへ」捧げます。
